『琉の故郷と旅の支度と謎の宗教』 その4
墓参りで自らの過去を話した琉。そして新たな目的地“エリアα”にむけて準備を進める琉達であったが……!?
最後の米袋を船に運び込んだ時、船の物陰から何者かが飛び出て来た。そして、手に持ったナイフで斬りつけてきたのである。琉は身をかわしたが、ナイフは米袋を切り裂いた。
「誰だ!? 折角の米がパーになったじゃねぇか!!」
「昨日の借りを返しに来たぞ! 神の前で恥をかかせるとはな!!」
相手は昨日のフードを被った男だった。
「チッ、厄介な野郎だぜ。和雅、ロッサを連れて何処か行け! ついでに警察呼んで来い!!」
「馬鹿め。彩田琉之助、お前は“異端者”として登録された! まさか、自分から一人になるとはな!!」
「何!? しかもお前に名前を教えた覚えはないぞ!」
「とぼける気か? ラングアーマー装備を使える者はこの島には一人しかいない。そんなものを搭載した船を持つのも一人しかいない。それくらい調べればすぐに分かることだ! いでよ!!」
フードの男が合図をすると、周りからぞろぞろと同じようなフードを被った男が現れた。しかも、
「くっ、すまない……」
「琉、逃げて!」
何と和雅とロッサが捕まっている。
「警察は呼べんぞ? さぁ、大人しく武器を捨てろ!」
「くっ……!」
琉はパルトネールをその場に置いた。
「琉、琉ッ!!」
ロッサの悲痛の叫びが響く。
「斬りたきゃ斬れ。ただし、斬れたらの話だがな……」
琉は男に言い放った。
「負け惜しみか? 良いだろう、ひと思いに逝かせてやる!」
男はナイフを持って詰め寄った。が、その時だった。
「ロッサ! “指”を使えッ!」
「何? うわッ!」
男の持っていたナイフを、鞭のようなモノが叩き落とした。その隙に琉は男
に突進し、海に叩きこんだ。
「カズ、今のうちに警察呼んで来い! ロッサ、早くこっちへ!!」
船の階段を走るロッサ。それを追うフードの男達。一人の男が彼女の肩を掴みかけた、その時だった。
「ロッサ、“液化”するんだッ!」
「な、何だこれは!?」
ロッサの体が突如赤く染まる。たちまち彼女の体は赤いゲル状に変化し、男の手をすり抜けた。
「パルトパラライザー!」
琉はパルトネールをシューターに変え、掴もうとした男を撃った。ロッサはゲル状のまま飛び回り、階段を伝って船に乗った。
「ステア・クローズ!」
ロッサが乗るのを確認すると、琉は階段を片づけた。すると丁度良いタイミングで警察が到着し、哀れフードの男達は全員お縄となった。
~翌日~
「新しい情報だ。例のフードの連中、全員から薬物が検出されたらしいぜ」
「薬物だと? 全く、なんつう宗教だ……」
琉がそう言うと、ロッサは琉に聞いた。
「薬物?」
「それなしでは生きられなくする、恐ろしいモノさ」
和雅の説明は続く。
「聞いた話では、その薬を飲むと常人よりも強い力を発揮できるようになるらしいが、同時に強い依存性を持っているという。幸い命にかかわることはないらしいけど……。あいつらはそれを“神恵水”と呼んでるらしいな」
「つまり薬と思想両方に縛られるって訳か。厄介な奴が敵になったモンだぜ」
琉はコーヒー片手にそう言った。
「さて、と……。そろそろ出航だ。昨日はありがとうな!」
「あぁ、また何かあったら連絡してくれよ!」
琉は和雅を船から降ろすと、そのままハイドロ島を出航した。
「元気でな~!」
「さて、目指すはカルボ島! 気合い入れて行くぜ!」
「ねぇねぇ、琉」
ロッサは琉に聞いた。
「“悪魔”って何? “神”って何なの?」
「悪魔、及び神っていうのは……」
琉は言った。
「昔の人の勝手な都合で作られたモノだ。それで崇められるのが“神”で、いじめられるのが“悪魔”さ……」
「わたし、いじめられるの?」
「話、聞いていたのか……」
ロッサの顔には不安な表情が浮かんでいる。
「この本に、わたしは“悪魔”だって書いてあるから……」
「その本、読んだのか……。って、ちょっと待て!?」
琉はある事に気が付いた。
「ロッサ。君、ひょっとして今の文字が分かるのか!?」
~次回予告~
「だって、おいしかったんだもーん」
「良いか、こういう時はな……」
第三章完結にしてようやく出航しましたw
四話構成にも関わらずあまり“起承転結”が活かせてない気が……。