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いざ、迷宮探索

戦闘描写がありますが、見苦しいかと思います。


さて、ついにやって参りましたよ。

迷宮!

とは言っても扉の先はギルドの外だった。

外とはいってもグラウンドほどの大きさの広場が周囲を全て高さ3メートルほどの高い壁に囲まれている場所だ。

入口はギルドから入るしかなく、それ以外からの侵入は不可能ではないだろうか。

そして視線を壁から広場の中央にあるコンビニほどの大きさの社のような建物に移す。

おそらくあの建物の中に迷宮の本当の入口があるのだろう。

社に向かって歩いていく。

俺の前には数人の探索者達がいる。

彼らのあとに続いて社の中に入った。


社の中はなんとも不思議な空気が流れていた。

その空気に若干のまれていると、社の中央に先程の探索者達が集まっているのが見えた。

何をするのかと見つめていると、淡い残光を残して探索者達が消えてしまった。


「へっ……!?」


しばし呆然としてから、彼らの立っていた場所に行って調べるが特に何か仕掛けがあるようには見えない。


「おいおい、どうやって迷宮に入ればいいんだよ……」


今のが迷宮の入り方だとしたらどうすればいいのかなんてわからない。

受付に戻って聞こうか、別の探索者が来るのを待とうかと頭を悩ませていると何かの看板が目に入る。

そこには


〔迷宮 一階層入口→〕


と書いてある。

自分のとんだ勘違いに苦笑いしながら看板の指し示す方向に向かう。

そこには下へと続く階段があった。

その階段を下りていくとついに迷宮に出た。

それにしてももう少しおっかない感じかと思った。

具体的には迷宮での死者の霊がうじゃうじゃいるのを予想していたのだが、ギルドの扉を開けてから彼等の姿を全くもって見ることはない。

街中の方では数人見たんだけどなー……

予想以上に死亡率が低いのかな?



迷宮内は思った以上に明るかった。

地下にあるのだから暗いだろうと勝手に思っていたのだが、そんなことは払拭された。

魔法とかが関係しているのか迷宮内の壁自体がところどころ発光しているのだ。

迷宮の通路は幅四メートル弱、高さ三メートル程とかなり広い印象を受ける。

しかし、気をつけないといけないのは、もう迷宮内にいるのだからいつモンスターが出るのかわからないのだ。

これがゲームであるのなら布の服を装備していようとガンガン進むという暴挙も許されるのだが、あいにくと俺にとっては現実だ。

ジャージ装備で進むことに今さらながら恐怖が沸き上がってくる。

ゲームと違い死んだからといってリセットは出来ない。

また神様が出てくるなんてことはまずないだろう。

慎重過ぎるに越したことはない。

前方に見えた曲がり角に出来るだけ足音を消して近づき、そーっと顔を出して曲がった先を確認する。

すると十メートルほど先に短い角の生えた兎のようなものがいる。

しかし大きさは柴犬くらいはある。


「あれがモンスターか……」


俺にとって初めての戦闘だ。

逃げるという選択肢がないこともないが、今逃げようとも迷宮に挑むなら、いつかは戦う時がくる。

その時にやろうとも結局同じことだ。

幸い今いるのは1匹だけ、つまり最初の相手としてはうってつけだ。

俺は姿を隠したまま目を閉じて深呼吸を一回して自らの精神を落ち着ける。


「よし」


覚悟が決まり、剣を鞘から抜く。

何の変哲もないただのロングソード。

はっきり言ってうちにあった包丁の方がよく切れそうだ。

ちなみに俺はゲームではボス戦まで特技を使うなで進める男だ。

故に加速も今は使用しない。

つーかあれは体に不可がかかる。

いきなり使うのもどうかと思う。

ヤバくなったもしくは相手が予想外に強かったら逃げるために使おう。

曲がり角から飛び出してモンスターに向かって走る。


あと三メートルというところでモンスターが俺に気づき、視線を向ける。

だが、もう遅い。

俺は走った勢いそのままにモンスターを蹴りつける。

剣なんて使ったことないからつい足が出てしまった。

勢いのついた俺の攻撃にモンスターは少し吹っ飛ぶがすぐに体制を立て直そうとしている。


「はあっ!」


モンスターが体制を立て直す前に手に持つ剣で斬りつける。

力任せの攻撃ではあったが、手に肉を切った感触がする。

しかしモンスターはそれに大した反応を見せず、強靭そうな後ろ脚に力を入れている。

危ない。

神様に与えられたがシックスセンスが危険を知らせる。

俺が横に跳んだのとモンスターが俺に向かって跳び上がったのはほぼ同時だった。


「はぁっ、はぁっ……」


息が上がる。

すぐに起き上がって構える。

モンスターも体制を整え、こちらを向いている。

そしてさっきと同じように体当たりをしてくる。

まったく同じ動作だったため、今度は多少の余裕を持ってかわせた。


「あああああっ!」


そして体制の崩れているモンスターに好機とばかりに渾身の力をもって斬りかかる。

俺は剣術など習ったことはない。

ただ片手で振った剣よりも両手で振った剣の方が威力が高いことはわかる。

両手で斬りつけた攻撃は思いのほか効いたらしくモンスターは唸り声をあげながら淡い光を残して消えていった。


「や、やったのか?」


周りを見回してモンスターが消えたことを改めて確認すると大きく息を吐いた。

ぶわっと堰をきったように汗が吹き出す。

初めての戦闘は思った以上に精神にきていたようだ。

また、俺の胸にはモンスターとはいえ動物を殺したという罪悪感がのぼってくる。

幽霊を無理矢理成仏させておいてなんだが、正直気分が悪い。

でもすぐにそれを振り払う。

選択肢が少なかったとはいえ、迷宮に行くと決めたのは俺自身で、迷宮内に入ったのも俺の意思。

ならばこれから進んでいくのならこの気持ちを飲み込み、慣れていくしかない。

戦闘が終わり、決意を新たにした。


と、そこで地面に石ころのような宝石のような白い石が転がっていた。


「こんなのあったか?」


持ってみるとゴルフボールほどの大きさのくせにそれなりの重量がある。

これが最初からここに落ちていたのか、それともモンスターを倒した後に出てきたいわゆるドロップアイテムのようなものなのかわからないが、とりあえずマダムからもらった袋にその石を入れてみた。

袋は石を入れたにも関わらず重さに変化がない。

ちなみにマダムからもらった分厚い本もこの袋に入れてみたら入った。

だというのに袋はちょっと膨らんでいるくらいだ。


「そういえばこれ魔法かかってるんだもんな……」


魔法の凄さを実感する。

いや、まあ神様からもらった能力とかももちろん凄いんだけどね。

それにしてもこのジャージ、神様から改造されてたけど本当に大丈夫なのだろうか。


「あれ? よく考えたら袋から道具を取り出す時はどうすんだろ」


そう思い、とりあえず袋を逆さにしてみるが、中からはなにも出てこない。

恐る恐る袋に手を入れてみると目の前にRPGとかでよく見るアイテム欄みたいなのがが現れる。

記載されているのは白の魔石(小)という文字だ。


「白の魔石(小)か……」


と呟いたとき手になにか固い感触がしたので袋から出してみると手に先程入れた白い石が握られていた。


「なるほど、こうやって取り出すんだな」


目の前に現れたアイテム欄から取り出したいアイテムの名前を言うと取り出せる仕組みらしい。

それにしても白の魔石(小)か……結局これなんなんだろ。

できればでいいからアイテムの説明もあればよかったのにな。

取り出した白の魔石(小)を袋にまた入れて先を目指す。

いくらかも進まないうちに少し広めの空間に出た。

その先には今歩いてきた道のほかに二つほどの道が続いている。


「う〜ん……こっち」


勘で左側の道を進んでいく。

すると前方に先程と同じモンスターが見えた。

また、モンスターも俺の姿を見つけたらしくこちらに向かってくる。

その様子を見ながら剣を構える。

モンスターは先程の個体と同じように体当たりを仕掛けてきた。

俺はそれをなんとかかわして狙いを外して俺のいる位置から一メートルほど後ろにいるモンスターに斬りかかる。

背後から不意打ちしたということが効いたのか、一撃でモンスターは背をのけ反らせる。

今度はモンスターに剣を突き立てた。

するとモンスターはうめき声をあげながら光となって消える。

すると、その光となって消えた後に先程と同じような白い石が残る。


「おっ、やっぱりこれモンスターを倒した時のドロップアイテムなんだ」


なんか思った以上にゲームじみてるな。

なんて考えながら魔石を拾い、袋に入れる。

この行為自体とは別に悪いことではない。とゆーか普通のことだ。しかしモンスターを倒したことで油断したのは悪いことだったと言えるだろう。

強い衝撃を受けて俺は顔から地面に突っ込む。


「ぐわっ」


痛みに顔をしかめる。

完全に不意をつかれたからなのかかなり痛む。

それを堪えながら上半身を起こして、顔を背後に向ける。

襲撃者は先程まで戦っていたのと同じ兎型のモンスターだ。

モンスターはさらなる追撃の構えを見せている。


「やばいっ!」


慌てて起き上がろうとするが、間に合わない。


【加速しろっ!】


とっさに加速の能力を発動させる。

体当たりのために跳び上がったモンスターの動きがスローモーションになる。

俺は起き上がると剣を両手で持ち、高く掲げて振り下ろした。

今までの攻撃と違い、俺の攻撃はモンスターを易々と切り裂いた。

それもそうだ。

俺の一撃はモンスターにとっては超高速の斬撃なのだから。

加速を解くと反動で身体負担が腕に返ってくる。モンスターはそのまま光になって消えた。

それを見ながら周りを見回し、もうモンスターがいないことを確認する。

同じようなことはできればもう二度と起こさないようにしよう。

と反省しながら頭上を見る。



HP 15/20

MP 13/20



一定の時間が経ったら探索者ランクとレベルは消えてしまった。

それよりも思ったほどHPは減っていない。

まあ、四分の一もなくなったわけだが、まだ探索は続けることが出来るだろう。

多分ジャージが神様によって改造されていたおかげだろうな。

じゃなかったらもっとやばかったに違いない。

とりあえず落ちている魔石を回収した。


その後数時間も迷宮を歩き回ったが、兎型のモンスター以外は出てこなかった。

それを刈っていく。

数匹目で白の魔石の他に毛皮が残ったので袋に入れて確認してみるとアイテム欄には動物の毛皮として表示された。

その後白の魔石(小)が袋の上限に達しそれ以上入らなくなった所で迷宮から出るために元来た道を引き返した。

とは言っても帰りがけにも何匹もの兎型のモンスターに出会って倒したので白の魔石がドロップされた。

これらは袋には入らないがもったいないので俺のジャージのポケットに入れていった。

どうやら兎型のモンスターは倒すと必ず白の魔石を落とし、二割くらいの確率で動物の毛皮がドロップアイテムとして落とされるらしい。

今回の迷宮探索の戦利品は

白の魔石(小)17個

動物の毛皮3つ

だった。

こうして俺の初迷宮探索は終わった。



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