第二十六話-一将功成って万骨枯る
2回戦、桐谷戦です。
どうぞ!
「それでは第八試合、杉山兄弟 対 桐谷宗次郎を始めます!両者前へ!」
会場からの熱気のこもった圧力に逆らうように、三人は同じ門から登場する。
桐谷宗次郎。
黒焦げた肌に人一倍長い体を持つ。しゃくれた顎を覆うように、荒れた髭が伸びていた。横顔から突き出た唇は、幾千の困難を乗り越えた証である事を印象付けている。ただ、それでいて、他者を見下すような瞳は、鼻につくものがある。はげ落ちかけている毛根がそれを際立たせていた。
大きな右手は既に剣を握っている。砂漠の国の伝統的な十字架型の長剣だ。剣身は細かく溝が彫られ、柄の部分も細部まで加工が施されている。
青に染まった長袖を着こなし、裾は芝の上で引きずられていた。
三人は横に並んで階段を登ると、兄弟が先回りして桐谷と向かい合った。
「両者、真剣勝負の内容を」
審判が言い捨てると、即座に桐谷が口を開く。
「ふん、貴様らの試合を見せてもらったが実力は相当だと分かった。私が勝てばその身を、一生私のために使え」
堂々とした鼻に響く声に、杉本は悠々たる様子を見せる。
「俺はあんたをそこまで評価していない。金だけよこしな」
「活きがいいな」
桐谷は肩幅よりも少し大きく股を開き、右足を半歩前に出して片手で剣を握る。相手との距離を測る為に、顔の前まで剣を持ってくる。
「勝利条件はそのままでよろしいのですね?」
審判が確認を取る。両方の顔を伺い、沈黙を確認するとマイクを顔に寄せた。
「それではよーい……」
沈黙が会場全体に広がる。
「始め!」
その言葉と共に、鐘の音が会場に響く。
杉本は鞘から刀を抜き、飛びかかる。上から振り下ろす攻撃を桐谷は簡単に防ぐと、間を開けずに杉本は連続して刀を振り付けた。
キーン、キーン、キーン。
金属がぶつかり合う音が会場に響き、観客は熱中してそれを見守る。
藤山は間合いを取りつつ、桐谷の型を分析していた。
星の防陣、頭の中でそれが浮かんだ。
守るべき方向は前、右、左、右後ろ、左後ろの五つしかないと唱え、相手の攻撃のベクトルをずらしてその隙をつく高度な流派だ。
杉本は素早い足捌きで桐谷の裏に回り込み、左後ろから刀を突くが、見透かされていたように剣身を広げて攻撃を弾いた。
杉本はすぐに後方に下がり体勢を整える。藤山も、すぐに杉本の側に走り寄った。
「何かわかったか?」
杉本が問うと、藤山は「ああ」と短く返した。
「あんた、なかなか凄い技を使うね。星の防陣は取得するのが難しいのに。なんせ、防御の型でも、ごく一部が知る究極の型と言われているからね。それが使えるなら、相当頭も切れる訳だ」
藤山は口元を斜めにして言い放つ。
「ほう、星の防陣は使用するものが少数で、あまり知られていないと思ったが…よく知ってるな」
桐谷は余裕に満ちた表情を見せる。
「お前の名前、桐谷って言ったっけ?あんたの出身ってその形を見るに、細道の隣の武田の武田砂漠だと思うんだけど違うか?」
藤山は桐谷に問いただす。
「如何にも」
桐谷は頷いた。
「でも、なんであんたの苗字は桐谷なんだ?」
「何をいう、武田砂漠の上には桐が生える武田岳が聳えているではないか」
桐谷は口を大きく広げ、軽く笑った。
「なんだ、俺はてっきり…」
藤山が睨みつける。
「桐棺を指してるのかと思ったよ」
その言葉を聞くなり、桐谷の明るく繕った表情が一変し、険しい表情を浮かべた。
藤山はその表情を見てニヤリと笑う。
「聞いたことがあるよ。殺した敵を棺桶に入れて、燃やしもせずに埋める異常者が西の砂漠にいるってね」
「だからなんだ、そんな事、今は関係あるんまい!」
桐谷はそう言って、剣を握り藤山に飛び込んでくる。
「残念だったな、あんたのその型には弱点がある」
藤山は高く飛び上がると、気を解放して刀に気を込めた。
「それは、上だ!」
桐谷は上に向かって防御を取るが、正確な型が決められていない頭上の攻撃は得意ではなく、気の籠った一振りに剣は弾かれ、すかさず振るった一振りで桐谷の右腕は剣と共に吹き飛んだ。
桐谷は腕を必死に圧迫し、止血をする。
「終わりだ」
藤山は冷たい声で言い放った。
「ま、待て…!ゆ、許してくれ!」
桐谷は咄嗟に命乞いをする。
「俺が場外に落ちれば、お前は勝利するんだ、なあ、殺さないでくれよ…」
桐谷は腕を圧迫しながら、藤山に懇願した。
「お前、第二試合、宇喜田のことどうした?殺したよな」
桐谷は体を一瞬ビクッとさせ、小刻みに震え出した。
「この世は弱肉強食だ。強くなって、名誉を得るためには足場が必要なんだよ。お前が、何人も人を殺してきたようにな。次はあんたの番、それだけさ」
藤山はそう言い捨てると、刀を振り下ろす。
桐谷の首が切断され、血が広がった。
審判がすぐに桐谷のところへ駆け寄る…
「勝者、杉山兄弟!」
会場から激しい歓声が渦巻いた。
杉本は、藤山の側による。
「お疲れさん」
杉本は藤山の背中を叩く。
藤山は、血で汚れた刀を拭き、鞘に収めた。
二人は歓声と拍手の中を、静かに通り抜ける。
「いつか俺たちの番が来るのかな」
通路の中で、藤山はそう呟いた。
「なんか言ったか?」
「なんでもない」
二人は二試合目を見事勝利で収めることができた。
だが、本当の戦いはここからである。
ここから、七大技王トーナメントがさらにヒートアップします。
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