第十八話-運命
少し短いですが、ぜひお読みください。
七大技王トーナメント編がスタートするための前置きみたいな回ですが、
二人の意思が詰まっています。
食物戦争から一ヶ月。
二人の怪我も、ほぼ完治していた。
涼しい秋が里を包み、紅葉と日光が静かに入り混じっていた。
里の外れにある見張り台で、忍者とバナナ達がにわかに騒がしい。
この時間は、伝令の忍が出入り口から戻ってくる頃だ。
やがて、林を裂くように一人の忍が駆け込んできた。
肩で息をし、膝に手をつく。
「――七大技王トーナメントが開催される!」
その言葉が落ちた瞬間、空気が凍った。
誰かの手から槍が滑り落ちる。
喉を鳴らす音だけがやけに大きく響いた。
若い者の中には、意味も分からぬまま顔を見合わせる者もいる。
だが、年長の忍達の顔色は明らかに変わっていた。
老忍が、静かに言う。
「……大勢の者が死ぬな」
その声には、過去を知る者の重みがあった。
「七大技王を見た者が、もう殆ど残っていないのだろう」
誰かが呟く。
それは恐怖というより、遠い災厄を語るような響きだった。
テンディーは拳を握り締める。
「だからこそだ。若人が、死場所を求めるかのように集まる」
場の喧騒が次第に遠のく。
視線が、ひとりのバナナへと向いていく。
「名を得るか、消えるか。それだけの場だ」
テンディーはそう言い、わずかに俯いた。
老人が代わりに口を開く。
「あの戦の中を生き残り、剣聖の名を背負う子がいる。その実力を見抜く力を持つ者も隣にいる」
一拍置き、低く続けた。
「……まだ、終わらせぬということだろう」
「でも、まだ若いのでは……」
若い忍が思わず口を開く。
だが、テンディーが遮った。
「それを決めるのは、俺たちじゃない」
顔を上げる。
「あの二人だ」
誰も二人の名前を出さなかった。
誰も二人を目で探さなかった。
だが、誰もが二人を意識していた。
里の中心にある大きな焚き火の前。
杉本はただ一人、炎を見つめて座っていた。
その背後から、藤山が歩み寄る。
何も言わず、隣にあぐらをかいて座った。
炎だけが、二人の間で揺れていた。
藤山が口を開く。
「噂は聞いたか」
杉本は炎を見つめたまま答える。
「聞こえてくんよ。七大技王トーナメントだろ」
(耳がいいんだな。やはり忍者の家系だからか。
いや、そんなのは今どうでもいい。)
藤山が問いかける。
「出場するか?」
杉本は少し間を置いた。
「厳しいだろうな、相当」
その理由は、俺にはわかっていた。
藤山が静かに言う。
「俺たちは、七大技王の凄さを知っている」
杉本は目を落とす。
「……ああ」
藤山は前に落ちている薪を拾う。
「最終的な判断は、任せる」
そう言うと、薪を火の中へ放り込む。
パチパチとした音だけが場を占める。
火の揺れが弱まった時、杉本はふっと顔を上げた。
杉本がゆっくりと口を開く。
「俺は、出たい」
藤山が視線を向ける。
「理由は…」
杉本が続ける。
「お前の方がよくわかってると思うけど、バナナ達、あの後すげえ頑張ってる。リハビリも、訓練も」
藤山の脳裏に、この里でのバナナ達の様子が浮かび上がる。
杉本は空を見上げる。
満点の青空から、明るい日差しが降り注ぐ。
その光が宿るように、杉本の目も透き通るように輝いた。
藤山の方に目線を戻し、口を開く。
「俺も、ポーラーと同じ場所に立ってみたい」
杉本が続ける。
「立って、バナナ達があそこまで頑張り続ける理由を知りたい」
杉本の瞳は忍者とは思えないくらい裏表の区別がなく、黄金に照り輝いていた。
藤山は微笑し、焚き火に目を戻す。
藤山が「そうか」と小さく返事をした。
焚き火からパチリと音が漏れる。
藤山はゆっくりと立ち上がる。
「決まりだ」
杉本に不敵に笑いかけた。
「まずは死なない。そのために強くなろう」
杉本も立ち上がる。
「……上等だ」
二人は拳をぶつけ合った。
次の話くらいには出発するかな?




