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第3部 第6話

お兄ちゃんが片思いしていた人。

和歌さんの弟が片思いしていた人。

本城先生に裸を見られたことのある人。

陣痛来てるのに、東京駅に走ってきた人。

和歌さんに強引に立会い出産させた人。



物凄い先入観を持ちながら、私は西田穂波さんと会うことになった。

待ち合わせ場所は、新宿駅地下のとあるカフェ。


先についた私とヒナちゃんは、ジュースを飲みながら西田さんを待っていた。


「何、ニヤニヤしてるの?舞ちゃん」

「どんな人なのかなーと思って。面白い人?」

「面白いっていうか・・・すごい人、かな」

「すごい?」


ヒナちゃんが頷き、照れくさそうに言う。


「一途っていうか、気持ちが強いっていうか。私、ちょっと憧れてたんだ」

「へー」


これはまた、私の中の「西田穂波データ」に新たな項目を追加せねば、

と思っていたその時、ヒナちゃんがちょっと腰を浮かした。


「あ、来た」


私も立ち上がり、振り返る。


「西田さん!」

「あー!飯島さん!久しぶりー!」


明るい声でお店に入ってきた「西田穂波」さんは、

私の期待を裏切らない容姿をしていた。


柔らかそうな髪を肩の上でクルンと内巻きにしていて、

人懐っこい瞳は、大きくて少し茶色がかっている。

小柄で、子犬を思わせる可愛らしい感じの人だ。

だけど、何より期待を裏切らなかったのは・・・


「西田さん・・・もしかして、妊娠してる?」

「もしかしなくても、してるわよ。このお腹見たらわかるでしょ?」


と、ニコニコ笑いながら、出っ張ったお腹をポンッと勢い良く叩く。


確かに見ればわかるんだけど、ヒナちゃんが一応訊ねたのも頷ける。

西田さんの服装は、「いかにもマタニティ!」って感じのワンピとかではなく、

なんと黒っぽいスーツだったのだ。

でも、身体にちゃんとフィットしてるから、これも妊婦さん用のスーツなんだろう。



「ギリギリまで仕事しようと思ってるの。法廷で破水する勢いで行くわ」


西田さんが言うと、洒落にならない。


って、法廷??


「そうなんだ、おめでとう!でも、気をつけてね」

「うん、ありがと。えっと、」


西田さんが私の方を見る。

いや、見つめる。

大きな瞳が、いやにキラキラ光っている。


て、照れくさいぞ・・・


「この子が、三浦君の妹さん!?」

「うん、三浦舞ちゃんって言うの。舞ちゃん、この人が、西田穂波さん。

あ、今はもう『西田』じゃないんだっけ?」

「うん、でも『西田』でいいよ。うわー!!三浦君に妹さんがいたなんて!!

はじめまして!西田です!うわー、うわー!さすが三浦君の妹さん!美人だね!」

「は、はじめまして・・・三浦舞です・・・」

「よろしく!」


元気な人だな。


放っておいたら、興奮してピョンピョン跳ね出しそうなので、

私は慌てて椅子を勧めた。


西田さんは椅子に座ってからもまだ、私のことを満面の笑みで見つめてくる。


「三浦君の妹、かあ・・・あんなかっこいいお兄さんがいるなんて、羨ましいなあ・・・」


あれ、西田さん。お兄ちゃんのこと、振ったんじゃなかったんでしたっけ??


そう突っ込もうと思ったけど、西田さんは急に、はっ!と言う感じで、

メニュー表を広げた。


「まだ注文してなかった!何にしようかなー?あ、フレンチトーストだって、美味しそう!

でも、さっきお昼ご飯食べたとこだしなー。どう思う、飯島さん?」

「え?あ、うん。ここのフレンチトースト、美味しいよ」

「やっぱり!?この写真、凄く美味しそうだもんね!あ・・・でもちょっと甘い物控えないと、

一応妊婦だしなー。旦那に怒られる。仕方ない、キャラメルミルクって飲み物にしよっと」


それも凄く甘そうですけど。



・・・な、なんて言うか、オーラの強い人だ。

なんか目が離せなくなる。


私が唖然としてると、ヒナちゃんがクスクス笑いながら言った。


「ふふ、西田さんってこういう人なの」

「はあぁ」

「ちょっと、こーゆー人って何よ」


西田さんはちょっとムスッとしたけど、ウェイトレスが持ってきたキャラメルミルクなる物を一口飲むと、

「美味しい!」と言って、たちまち機嫌を直した。


「西田さん、忙しい上に身体が大変な時にごめんね」

「平気、平気!忙しいのはいつもだし、こんな身体も2回目になるとへっちゃらよ。

今日はこの後、どうするの?」


私は慌てて座り直した。


「今日はわざわざありがとうございます。あの、この後、先生と和歌さんのお祝いで、

一緒に選んでもらいたい物があるんです。和歌さんの好みが、私じゃわからなくて・・・」

「任せて。和歌のことなら、なーんでもわかるから!」


西田さんが自信たっぷりに頷く。

すると、ヒナちゃんが、おずおずと言い出した。


「あの・・・その前に、西田さんに聞きたいことがあるんだけど・・・」

「何?」

「うん・・・」


何故か私のことを気にするヒナちゃん。


「私、外で待ってようか?」

「あ、ううん。いいの・・・あのね」


ヒナちゃんは改めて、向かいに座っている西田さんに向き直る。


「西田さんは、どうして結婚したの?」






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