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あの花の丘で  作者: イチゴボール
8/16

晩餐

「あら、随分話し込んだのね。」

「つい、話したいことがたくさんあって。」

テヘっと笑って見せた。お母さんは、全くもう、と言わんばかりのため息を吐き、お母さんもまた、笑い返した。笑顔が絶えない。そんな幸せな家庭だった。「笑う門には福来る」などというが、福が来るとは限らない。天使か悪魔か。はたまた、鬼が出るか蛇が出るか。人生はそんな駆け引きの繰り返しである。

「あっ、そうそう、お母さん。満美が服ありがとうって言ってた。」

「そう、よかった。」

「とっても喜んでた。」

「フフ、私が良かったって言ったのは、あんたがしっかり渡してきたことに対して言ったの。」

「もう…お母さんったら。」

「そうだ、今日はお父さんが軍から食料を持って帰ってきてくれたから、今夜はご馳走よ。」

「ほんと!?今すぐ食べないと。」

私は今で言うリビングに走って行った。

「あの子ったら…。」


「ただいまー」

玄関から声が聞こえた。低い声、お父さんだ。

「おかえりー」

私はリビングに一直線に向かってきたお父さんに言った。

「あら、おかえり。」

「おう、ただいま。」

「ごめんお父さん。もう、少し食べちゃった。」

「ハハハ。気にしなくていいよ。」

お父さんは笑ってくれた。目は笑ってなかったけど。

「おっ。想像よりもうまそうだな。」

テーブルにはたくさんのご馳走が置いてあり、無意識のうちによだれを垂らしてしまうようないい匂いがした。

「さ!お父さんも食べよ!」

「はいはい。分かったよ…」

「…」

「お前どんだけ食うつもりだ?」

「うーん、いっぱい!」

はぁ、と言わんばかりのため息が二つ重なった。

「お母さんまで…」

私はこの日、このご馳走から漂っていた匂いを、一生忘れることはないだろう。

「では、改めまして!」

「「「いただきます!」」」

私たちはご馳走を頬張り込んだ。あり得ないぐらい豪華なご馳走だが、最後の晩餐になるくらいならもうちょっと豪華でもよかったかもしれない。


一口で

幸せ感じる

母の味


8月2日 完

次回とうとう事件の予兆が。

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