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あの花の丘で  作者: イチゴボール
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ストーリー;中野満美(家族)

お姉ちゃんの体は大部分が鮮血染まっていた。私の鼻が少しずつ赤くなる。視界がゆがみ出し、目から涙がこぼれ落ちる。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!…」

私は声の限り叫んだ。だが、お姉ちゃんから返事は来ない。

(いやだ!こんなの、認めない!)

私は叫び続けた。体温が少しずつ下がってゆく体を揺さぶりながら。

(もう一度、もう一度だけ、声が聞きたい。)

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!…」

叫び続けたが声は届かなかった。お姉ちゃんに夢中になり、周りが見えていなかった。周りには騒ぎを聞き、大勢の町民がいた。

「!!…これは…」

言葉を発したのは町長だった。

「美重さん…。」

「美重ちゃん…」

「美重…。」

集まった町民が各々口にする。私はどれくらいかはわからないが、疲れて眠るまで泣き叫んだと言われている。何せもう、10年以上前の話だから、詳しくは覚えていない。衝撃が大きかったのもあるのだろう。そこから私は、しばらく町長の家に居候させてもらった。2ヶ月ぐらい経ち、やっと気持ちの整理ができてきた。そんな時、町長から言われた。

「広島に私の親戚がいる。彼らが君を引き取ってくれるそうだ。来週、出発するから、準備しておいてね。」

「はい!分かりました。」

私は準備をする為に部屋に戻ろうとした。町長の家には空き部屋があり、そこを使わせてもらっている。ふと、空を見上げた。空には二羽のスズメ。オスとメスだろうか。仲良さそうに飛んでいる。

「ん?」

片方の鳥をよく見ると、何やら青い花びらがついている。

「青い花…?」

聞いたことがない。そんな花あるのだろうか。いや、まさかね。すると、たまたま風になって、青い花びらが飛んできた。

「向こうからかな。」

私はそれが飛んできた方に向かった。しばらく走っていると、小さな丘が見えてきた。丘に向かって走っていると、ふと、いい匂いがした。花の香りだ。私は丘の上に上がり辺りを見渡す。そこには、一面に広がる青い花畑が広がっていた。

「キレイ…」

私は時間を忘れてその花畑に浸っていた。私はふと思った。

(町長さん達に摘んで帰ろうかな。)

私は花を摘もうと丘を降りようとした時、

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッ!!!

「空襲警報!?」

私は急いできた道を戻る。町長の家にはシェルターがあり、警報が鳴るたびにそこに身を潜める。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

何とか間に合った。

「満美!早く!」

町長はシェルターに行かずに待っていてくれたようだ。二人はシェルターに向かって走る。私が今在住している福岡県は、どうやら武器の製造場があるらしく、空襲に遭いやすい。私と町長はシェルターに籠った。その日は曇り空で、空襲を受けることはなかった。シェルターに隠れている間、私は拾った青い花びらを離すことはなかった。


 花の丘

 風に揺られ

 散ってゆく

             つづく

町長に預かってもらっていた満美。とうとう、広島に向かい、千得と出会う。次回も楽しみに!

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