ストーリー;中野満美(白き蛇の男)
私は柳川家の次女として生まれた。私には三歳年上のお姉ちゃんがいる。とても優しく、いつも一緒に遊んでくれた。これは、私が五歳ぐらいのときのことである。
ガンガンッ
誰かが玄関を叩いている。
「誰だろう。」
お姉ちゃんは言う。両親は共に他界しており、家には私とお姉ちゃんの二人暮らしだ。
「私が出るよ!」
「いや、私が出る。夕飯の準備をしておいて。」
夕飯の準備といっても、五歳の私にはできることが限られている。基本、食器を出すぐらいだ。それでも、私は家族のためになっていることが嬉しかった。私は食器棚に向かった。
「はいはーい、今行きまーす。」
お姉ちゃんの声が聞こえる。誰だったんだろう。
ガラッ
玄関を開けた音が聞こえる。次に聞こえた音は、私に恐怖を覚えさせる。
バンッ!
激しい炸裂音。
「!!…じゅ、銃…?」
当時の銃は小型化されておらず両手で持つぐらいのサイズだ。
「!?」
私は何が起こったかわからなかった。
ズシズシ
こちらに向かってくる音がする。建ってからしばらく経った私の家は床が古くなっており、きしむ音がする。お姉ちゃん?いや、音からしてお姉ちゃんではない。
(じゃあ、誰?)
私はとっさに台所の下に隠れた。小さい体だからギリギリ入り込めた。なぜ隠れたのかはわからない。でも、隠れないといけないと思った。そして、床を鳴らしていた者の正体がわかる。
「!?」
そこには、銃を持った男がいた。ノースリブで、顔には、左目の付近に大きな火傷跡がある。そして、その男の持つ銃には、黒いボディに白で蛇の絵が描かれていた。私は叫びたい気持ちを抑え、その場を耐えた。
「チッ、誰もいねぇのかよ。殺し甲斐がねえな。」
そして男はお姉ちゃんがお金を貯めていた袋を見つけ、ポケットに入れてもときた道を戻って行った。
「ふぅ。」
私は身体中の力が抜けたかのように崩れ落ちた。
「たっ、助かった…」
「…!お姉ちゃん!」
お姉ちゃんはどうなった?無事だろうか。私は玄関に向かう。床は音を鳴らし玄関からは夏にしては涼しい風が入ってくる。私はもうわかっていたはずだ。お姉ちゃんがどうなっていたか…
「お姉ちゃん」
もうその声は
聞こえない
つづく
今回からは、満美と千得の出会いの物語。