寝場所
2人は夜道を歩いていた。辺りは暗く、人通りもない。歩き出してから約3時間。歩き続けたが、町、村が全く見えてこない。そして気付いた。方角はおそらくあっている。合っているが、道を間違えたようだ。
「山…」
由香は言った。
「山だね…」
千得も言った。
深夜ということもあり、少しづつ睡魔に襲われる体を無理やり動かして歩いていたが、目の前の山、及び、斜面を見て、絶望した。本来であれば街などに立ち寄って泊めてもらうつもりだったが、今の感じだと野宿になりそうだ。
「野宿…」
千得は悟った。もう、ここら辺で寝ないと、睡魔に負けて路上で眠ってしまいそうだということに。
「野宿…」
由香は思った。このままいけば、どちらかが睡魔に負けて倒れると。ならば、まだ安全なところで休めるため、
「「野宿しよう。」」
2人の意見が噛み合った。
作業を続けること4、5分。簡易的な寝場所を完成させた。作りは、広めのシートを地面に敷き、その上に枕と毛布をかけて寝る簡単なものだ。由香は元々が金持ちなので、あまり野宿したことがない。が、寝場所に入った瞬間、固まったかのように目が開かなくなった。自然と出てくるあくびが、どれだけ眠かったかを現していた。
《翌日》
朝、千得は目を覚ますといつもと違う光景に驚いた。脳があまり動いておらず、現状の理解に戸惑ってしまった。
「あ、野宿したんだった。」
千得は背筋を伸ばし、手を高く上げた。
「ふぁ〜。」
微かに鳥の囀りが聞こえる。千得はたまには野宿もいいものだなと思った。一方で由香は…
由香はゆっくりと目を開いた。隣では千得が目覚めており、挨拶しようと体を起こそうとした。すると、体に電気が流れたかのような痛みに襲われ、シートの上に倒れ込んだ。
「…。」
バタンと音がしたので千得が振り返り、由香に気がついた。
「おはよう由香!」
「おはよう千得。」
「ねぇ、由香、今日はどうする?朝から進み続けて次の街まで行くか、近くの民家を探すか。」
「えーっと…」
考えながら起きあがろうとした由香に、またあの痛みに襲われた。
「痛っ、」
「…?」
千得は一瞬何が起こったか分からなかったが、すぐに何が起こったか分かった。
「もしかして由香って、ベットか何かで寝てる?」
「うん、そうだよ。」
由香を襲った痛みの正体は、由香が地面で寝ることに慣れていなかった為生まれたものだった。
「動けそう?」
「歩くぐらいなら何とか出来そう。」
「分かった。」
2人は街を目指さずに民家を探すことにした。
次回「2度目の悪夢」




