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脱走
皆が寝静まる深夜、私は荷物を持ち、病院を出た。誰にも気づかれぬよう、慎重に、ゆっくりと足音を消して、由香との待ち合わせ場所に向かった。
病院の敷地を出た時、後ろから気配がし、振り返った。
「どこに行くつもりだ?」
目の前には、この前私を見てくれた医師がいた。
「…」
「その荷物の感じは、ちょっとした散歩などではないだろう。本来なら止めないといけない。だが、俺は、お前を止めるつもりはない。お前も、何かしらの目的があるんだろ?」
「はい…」
「じゃあ、果たしてこい。そしたらまた診てやるよ。」
「はい。行ってきます。」
あの医師も分かっていたはずだ。ちょっと家出するなどとは比べ物にならないぐらい遠くに行こうとしてることに。
私は医師との会話を終え、病院を後にした。
「お待たせ、由香。」
「私も今来たところ。」
由香の格好は、だいぶラフなものだが、腰に銃をかけている。お父さんの肩身と言っていたやつだ。
「それじゃあ、行こうか。」
「張り切って行こう!」
千得の呼びかけに、元気に返す由香であった。
次回「寝場所」




