夢を追う者
「現状、不可能ではありません」
先生は「また歩けるか」と言う俺の質問に、明確な答えを示してくれた。そして先生は続けた。
「ですが、完璧に元通りは難しいでしょう。あなたはもう、左半身がほぼ麻痺状態だから。」
「?」
「気づいていない様ですね。あなたの手を看護師に持つようあらかじめお願いしていたんです。そしたら読み通り。左半身が麻痺していました。」
言われて初めて隣の女性に気づいた。
「ただ、麻痺といっても、このくらいの麻痺なら体を動かし続けることでいつか慣れるでしょう。」
「分かりました。」
千得の父は、家族に会いたい気持ちを力に変え、毎日のトレーニングを開始する。
「待ってろよ!千得!母さん!」
ふと気がついた。由香が銃を携えていることに。
「ねぇ、由香。なんで銃を持ってるの?」
「何故かと言われると難しいが、これ、お父さんの肩身なんだ。だから、肌身離さず持っておくことにしてる。」
「そうだったんだ。」
「……」
「あっ…由香の話を聞いて思い出した。戦争でいないのが当たり前だから気づかなかった。」
「?、誰のこと?」
由香の質問を無視して話を進める。
「由香、この旅の目標が決まったよ。」
「おお。で、どこ行くの?」
「ひとますお父さんを探す。そうすればきっとヒントになりうるものが手に入ると思う。」
なんの根拠もないただの勘だ。でも今はこれくらいしか当てがない。私達は一旦病院に戻ることにした。
木材でできた小さな家に二人の男がいた。一人は横になっており、三十代くらいの男性だ。もう一人は若い青年の様な容姿だ。
「良、もうやめろ。その金は自分のために使え。」
「何言ってるの父さん。きっと助けるから。」
山口県の木々に囲まれた場所に暮らす親子の会話である。
次回「由香と千得」




