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あの花の丘で  作者: イチゴボール
14/22

もしも私が男なら

「あ!いた!」

「?」

後ろから声が聞こえ、振り返った。振り返った先には、十歳前後程の白髪の少女が立っていた。

「何の様ですか?」

「!?」

兵士と口論していた姿は気性の荒そうな女性だったのに、いざ話すと、気品を感じる堂々とした女性というイメージが生まれた。

「あ、あのーこれ…」

「あ!」

由香は私に近づき、布を受け取った。

「ありがとう。これ、お母さんの形見なんだ。」

「そうだったんだ。良かったね。無くならなくて。」

「うん。」

その後2人で話をした。由香の父親は軍人で、母親は炭鉱を管理していたらしい。家には使用人を雇っており、4人暮らしだった。幸せな日々を送っていたある日、戦争から帰ってきた父親が事件を起こした。事件の内容は人には言いたくないらしい。そのため、私も追求はしなかった。少し気まずい空気が漂い始めたので、話題を変えることにした。

「あの兵士の人と何話してたの?」

「うーん…まぁ、千得なら話していいか。」

少し間を空けてから由香は話し始めた。

「私ね、どうしても復習したい人がいるんだ。」

「…」

「その人が今、軍部にいるから、私も軍人にならないと会えないんだ。だから私は、毎日軍人にならせてくれと頼み込んでる。」

由香の顔は明るかったが、眼は何処か遠くを見ていた。

「もし、私が男だったら、こんなに苦労もしなかっただろうけどな…いや、そもそも事件を止めれたかもしれないな…」

その後も由香としばらくの間話した。

次回「旅立ち」

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