もしも私が男なら
「あ!いた!」
「?」
後ろから声が聞こえ、振り返った。振り返った先には、十歳前後程の白髪の少女が立っていた。
「何の様ですか?」
「!?」
兵士と口論していた姿は気性の荒そうな女性だったのに、いざ話すと、気品を感じる堂々とした女性というイメージが生まれた。
「あ、あのーこれ…」
「あ!」
由香は私に近づき、布を受け取った。
「ありがとう。これ、お母さんの形見なんだ。」
「そうだったんだ。良かったね。無くならなくて。」
「うん。」
その後2人で話をした。由香の父親は軍人で、母親は炭鉱を管理していたらしい。家には使用人を雇っており、4人暮らしだった。幸せな日々を送っていたある日、戦争から帰ってきた父親が事件を起こした。事件の内容は人には言いたくないらしい。そのため、私も追求はしなかった。少し気まずい空気が漂い始めたので、話題を変えることにした。
「あの兵士の人と何話してたの?」
「うーん…まぁ、千得なら話していいか。」
少し間を空けてから由香は話し始めた。
「私ね、どうしても復習したい人がいるんだ。」
「…」
「その人が今、軍部にいるから、私も軍人にならないと会えないんだ。だから私は、毎日軍人にならせてくれと頼み込んでる。」
由香の顔は明るかったが、眼は何処か遠くを見ていた。
「もし、私が男だったら、こんなに苦労もしなかっただろうけどな…いや、そもそも事件を止めれたかもしれないな…」
その後も由香としばらくの間話した。
次回「旅立ち」




