表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの花の丘で  作者: イチゴボール
10/22

花火

「おはよう!今日は早いのね。」

「何となく目が覚めちゃってね、」

お母さんの問いに答える私。朝の何気ない会話。小鳥の囁きが聞こえる平和な空間が広がっていた。

「おや?今日は早いね。」

「あっ、お父さん。」

「おはよう。」

「朝ごはん、できてるよ。」

早いといっても、もう8時過ぎだ。シェルターに入っていた影響で時間感覚がずれていた。

私はテーブルに向かおうとした。その時、

「ん?」

(外が騒がしい…何だろう。)

私たち家族三人は外に出た。

「あ、中野さん」

お母さんは満美のお母さんを見つけて話しかけた。

「満美ちゃんはどうしてます?」

「あぁ、まだ寝ていますよ。」

「今回の襲撃が長かったから、疲れちゃったのかしら。」

「明日には治ってますよ。」

「何かあったんですか?」

「いえ、何か外が騒がしかったもので…」

お母さん同士の会話に私は割って入った。

「ねえ、あれって何?」

私は空を指差した。

「どれのことかな?」

私とお母さん二人とお父さんの四人は空を見上げた。

「あれは?」

遠目だが、しっかりと見えた。何か黒く大きい物体が空から落ちてきている。

「あれ、お母さん?何で外にいるの?」

中野家から満美が顔を出した。

「!!」

空中でその黒い物体は破裂した。

破裂と同時に炎が全方向に広がって行く。その光景は幻想的で、まるで花火の様だった。

「満美!来たらダメ!!」

満美のお母さんは満美を家に戻そうと、家に向かった。

「千得」

「千得」

お母さんとお父さんの声が聞こえる。

私を庇う様にお父さんとお母さんが抱きついてきた。

「?」

ほとんど前が見えなかったが、目の前の黒い物体がものすごいスピードで広がって行くのが分かった。

「熱…」

ただ、熱いと言う感覚のみを残し私の意識は途絶えた。

八月六日。午前8時14分 広島県、原爆投下

次回「呪い」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ