決着
続編。そして最終回です!
楽しんで頂けると幸いです。
辺りを見回すと、拘束された、黒ずくめの男達がいた。そして、俺は肩の瓦礫を歯を食いしばって引き抜いた。瞬く間に移動し、その男達へ向けてナイフを振り下ろす。
そう、俺の頼みは、大量の魔物の場所にいた、黒ずくめの集団を連れてきて欲しい……だ。
そうして、連れてこられた5人は……予想通り邪神の力を持っていた。
「これで、対等だな」そう言うと、
ヤツは「それで対等?何を言ってるんだ?俺はお前より能力を使いこなせる。その時点で……負けている」そう言った。
……余程、慢心しているようだ。たが、そんなのどうだっていい。
「それでも、この状況になった時点で、俺の勝ちだ」……別に慢心はしていない。ただ、事実を述べているだけだ。
「はっ!笑わせるな!」そう言ったヤツに、言ってやる、「邪神の力ってのは、何も護れないが、何でも奪えるんだよ」
そして次の瞬間、俺は、その能力を発動する。
ヤツ……ではなく、アインに向けて……
"強奪"
邪神の能力というのは
『能力が許す限りの事象を引き起こすことができる』
そんなものだ、もちろん限度も発動条件もある。
限度は距離、発動条件はそれを必ず破壊に繋げないといけないことだ。
だが、この力は太陽神の物……何かを傷付けるのに使いたくない。
アインの力はだいたい、本体の2、30%程度
だが、やはりアテネは"コッチ"を強化したらい。
……使い方は、分かる。なぜなら、太陽神の記憶が俺にはあるからだ。
手の中に淡く彩やかな光を集める。
……こんなもんか。
コレが、アイツの愛剣……『天日剣・太陽』
俺は、天日剣・太陽に邪神の力を込める。
こんなことしても、アイツなら許してくれるだろう。そして、ゆっくりと一太刀……
すると、辺りは地平線が見える程の更地と化した。ヤツは、ギリギリのところでそれを避けた。「遅いんじゃないか?」ヤツの背後からそう問いを投げる。ヤツは焦りながら反応する。
だが、遅すぎる……右腕を切り落とす。
「あぁぁぁぁ!!!!!」叫び声が反響する。
「そろそろ、終わりにしよう」そう言って、
ナイフに持ち替える。ヤツが1mm足りとも動く前に、俺は背後に回っていた。………勝った
「ゴホッ……!」俺は口の中から大量の血を吐き出す。……!?な、何が起きて!?
気付けば俺の腹部にナイフが刺さっていた。
……ヤツに目をやる。ヤツは力なく瓦礫に寄り掛かっていた。俺は、振らつく脚で精一杯
立つ。そんな中、ヤツが口を開いた。
「クソガキが……忌々しい力で」
「お前が勝手に嫌っているだけだろう?」
淡々と告げる。
「そんなものは知らん」ヤツは言う。
俺はそんなヤツに問う。
「お前をこの世界に落とした太陽神は?」
この問の意味は単純で太陽神が邪神の力を奪い、世界に落とすために自分も落ちる必要があるからだ。
ヤツは徐に指を指し「あそこのの石像だよ」
そう言い放った。
やはり、アレは本当のアテネじゃ無かったみたいだな。俺はヤツに向き直り
「最期に言い残すことは、あるか?」その問いをぶつける。だがヤツは「……」ゆっくりと首を横に振った。そして、その瞬間、"ゴトッ"とヤツの首が落ちる音がした。その音と共に俺は……意識を失った。
目を覚ますと、そこにはアインの姿があった。
……力が戻ってる。俺は、ベッドから起き上がり、寝ている、アインの隣に座る。
寝息を立てるアインに「ありがとな、本当に」
……そんな言葉を投げ掛ける。
俺は微笑み立ち上がる。しばし、外を眺めた。
あの街じゃない、別の場所。そんなことを考えていると、「イーヴル君?起きたの?」
アインは、安心し切った顔で尋ねてくる。
「あぁ、お陰さまでな」そう笑うと。
「よかった」……本当に心の底から嬉しそうな顔でそう言った。
「まさか……本当の邪神だったとは」そんな言葉を発するアインに、「平和を好む邪神だかな」そう一言返した。アインは笑みを浮かべ俺も口角が緩む。
「一先ず、知り合いを当たろう」その提案に
アインは「怪我は!?って言っても……聞かないか」と苦笑しながら頷き同行してくれた。
「セシア」俺はその名を呼んだ。
彼女はとても驚いた後、嬉しそうに笑った。
他愛もない会話をして、もう一人の知人を当たる。
「リン」今思えば、名前を呼んだのは初めてかもしれない。彼女は俺を見た途端、相変わらず元気に話をしてくれた。
3人で他愛もない会話をしていると
「イーヴル様!」「イーヴル様だ!」そう言われている。「さっすが、ヒーローじゃん!」アインが言う。軽く笑った後、3人に
「ありがとう!本当に!」そう伝えるのだった。
……力が戻ったため、帰れるようになった。
長期休み……どれくらいなのかは知らないが、
もう、2週間ほどいるため、帰ることにした。
……3人の見送りが暖かい。
最初に来た平原で能力を使う。
辺り……いや、世界が黒く染まった。
俺は3人に大きく手を振り、「また、会おう!」
そう叫んだ。
……目が覚める。そこには、俺のことを心配そうに見つめる太陽神がいた。
「ごめんなさい!」大きく頭を下げる。
「ま、ままままさか、あんなことになると思わなくて……本当にごめんなさい!」めっちゃ謝ってる。……それでも、記憶を共有する判断ができたのは、すごいと思うんだが……
俺はそんな太陽神の頭を撫で、言う。
「じゃあ、次は、一緒に休みを取ろうな」
「………………え?」太陽神は赤面した。
俺も恥ずかし過ぎて、すぐ後ろを振り返り、
手の甲で手を振って、帰ってしまった。
一数年後一
「じゃ、じゃあ……行きますか……?」
何故か太陽神は緊張しているようだ。
……まぁ、いい。結局、後で楽しんで貰えれば……
『せーの!』
見覚えのある平原が広がる。そこから前のように山を越え、街に着いた。
「あっ、これ美味しいです!」ニコニコでアイスを食べる太陽神……見惚れてしまう。
そんな事をしている間に、
「……イーヴル君!?」そんな声が聞こえた。
俺と太陽神は微笑み、そちらを見やる。
「久しぶりだな アイン」
「久しぶりですね アイン様」
〜エピローグ〜
俺たちは夕焼けに照らされ、歩いていた。
アイン達の世界を歩いていた。
「貴方は、何故イーヴルなんですか?」と太陽神が突然問う。
それに俺は「ある、世界の『英語』……?かなんかで、意味が『邪悪』だったからだな」と答える。
太陽神は「あー」と納得したような声を上げる。
「いや、貴方……イーヴルくんはじゃあくとかけ離れてますよね?」太陽神はそんな言葉を言ってくる。
……まぁ、少し嬉しい。
太陽神は急に俺の前に立ち、言ってくる。
「じゃあ、私の名前も考えてください!」
「え……?」……ムズすぎるだろ、それは
「自分で考えてくれよ」そう言うと、
「嫌です!お願いしますよー」……はぁ。
心の中でため息をつき、一応、考えてみる。
しばし無言が続く、
『……イリア・セイント』ボソッと小さく呟く。
「いいですね!それ!」……聞こえてたのか。
「どういう意味なんです?」彼女は興味津々だ。
「……イリアには……あまり意味は無いな。
セイントは俺と同じように英語で『聖女』って意味だったからだ」そう言うと、
「じゃあ、お揃いですね」嬉しそうに恥ずかしそうに言った。……俺も照れくさい…
しばし、無言が続き、イリアが口を開いた。
「イーヴルくんは、なんでわざわざ、世界を救う時、毎回のように私に協力させるんですか?」
その問いに、体が熱くなる。
「ま、まぁ、その方が効率的というかなんというか……」よく分からない、嘘をつく。
……実際なら俺一人でも簡単に出来る。だが……
イリアは首を傾げている。…俺は目を合わせ、
「……お前に、会いたかったからだよ」
そう言った。……体が熱い、恥ずかしい。
「……!?っそ、そうだったんですか」
彼女もまた、赤面していた。
また、無言になり、イリアの方を見る。
……綺麗だ。俺のイリアへの気持ちに、本気でキレている奴もいた……そりゃあそうなのだろうが。
……もう、邪魔するものは、何もない……心の底の心配も。だから、だから、その言葉を紡ぐ。
「イリア……俺は、お前のことが……!」
その夕焼けに照らされ咲く彼女の
笑顔は何よりも美しく、眩しかった。
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平和を好む邪神のバカンス ~完~
ここまでご視聴頂きありがとうございました!
別の作品も投稿したいと思っているのでよろしくお願いします。