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神様が創りし地〜勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める!〜  作者: 立花 黒
嘆きの館

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第75話、悪魔の実験場

 ◆ ◆ ◆



 荒い呼吸の中、吐くようにして笑いが漏れ出てしまう。

 神はいない——


 ここは窓がない閉塞感漂う一室。そこで石造りの冷たく無機質な床が、薄っすらと浮かび上がるよう緑色に発光し出す。これは大きな魔法陣。跪き天を仰ぐように口を開けて荒々しく呼吸している私を、下から僅かに照らし出す。

 その直後、全身の筋肉や臓器から激痛のシグナルが脳へ届き出す。身体中から吹き出す汗、身体がバラバラになる感覚。そのため抱き締めるように腕を自身の体に巻き付け、激痛に耐えるため蹲るが——

 その後何度も魔法陣は発光して、私はその度に苦辛を味わっていく。

 人体とモンスターの融合。この実験はそう言う風に呼ばれている。そして私が融合されようとしているモンスターは、石化の能力を持つコカトリス。


 それからどれくらいの月日が流れただろうか? 看守達には隠しているが、私は確かに力を手にしていた。ただまだ一度も人に使用していないため、どのような効果があるのか分からないが。

 そしてその日も、あの魔法陣の部屋に連れて行かれるため独房の扉が開かれる。また二人の看守は、国の暗殺機関に所属していた私を警戒しているのだろう。上半身裸で長ズボン姿の私を、いつものように両腕を縄できつく縛っていた。

 

 くくくっ、この世に神など居ない。神がいない証拠にこの世には悪が蔓延(はびこ)っている。そしてなにより、私の人体実験が続けられている。神よ、裁いてみせよ。悪を、そしてこれから私が計画している事を阻止してみせよ。


 魔法陣がある部屋へ連れて行かれる途中の細い通路。そこで私は前を歩く看守達相手に、能力を発動させてみる。すると私を中心に半径二メートルの白く濁ったような球状の闘気が展開される。そして球状内の見つめていた二人の看守の膝から下が、一瞬で石化した。

 これは使えるな。

 自身を縛る縄も石化させたあと力任せに引き破壊すると、瞬時に看守の一人の頭を両腕で掴み捻って首をへし折る。そこでもう一人の看守に視線を移す。こいつはよく、私の背中を鞭で叩いてくれていたな。溜まっていた日頃の鬱憤も晴らさせて貰おう。

 看守の腰から奪い取った鞭を、その場から動けないでいるそいつに向かって何度も何度も振り下ろしていく。上がる悲鳴に、裂け飛び散る肉片。そこで邪魔になる看守の腕。そのため両腕を石化させたのち破壊し、無防備な顔や体に向けて鞭を振り下ろしていく。滅多打ちだ。


 そこで意識が覚醒する。

 またあの夢を見たか。

 ユラユラと揺れていたロッキングチェアから立ち上がると、石化した身なりの良い少女の一人に歩み寄る。この屋敷、元は貴族の別荘だったのだろう。私が奪ってやり、現在有効活用してやっているが。


 くくくっ、そして神はやはり居なかった。いるとすれば力を持つ私が神——いや、私が悪魔だ。

 誰でもいい、私を裁いてみせよ。

 私を裁く者が現れたならば、神を信じてやろうではないか。



 ◆ ◆ ◆



 リーヴェがエンチャント付きの矢を放つ。放たれた矢は屋敷周辺の見回りをしていた山賊風の男の足を、ブシュッと後方へ血肉を撒き散らして吹き飛ばした。片足を失った男は倒れ、そこへ駆け寄り幻影思考を発動。負傷した男は霧に飲み込まれるようにして消えていく。

 念のため案内させている男とは別の男を一人捕らえて尋問していた。結果この屋敷に少女達が連れて来られている事を確信したのだが——

 リーヴェ、笛猫と言う新たな猫の影響らしいのだが、悪人を裁くのに戸惑いが一切感じられなくなっている。先程から何人も部位破損させているのに、表情はケロリとしている。


 優しいリーヴェが、どこか遠くへ行ってしまった感覚。


 これは良いことなのか悪い事なのか、正直答えはわからない。しかし甘さが出てしまったがために、悪人を裁くのを躊躇してしまったために、私達が危険な目に合うよりは絶対に良いはず。

 賊達も捕まれば極刑が確実な事をしている。

 そうしてリーヴェにより、屋敷周辺の賊達は一掃されていった。


 あと全方位回復に反応があるのは、この霧に浮かぶ屋敷の中だけか。その数、十名。その内九名は一か所に固まっており、残り一名だけが少し離れた所にいるようだ。

 ……この十名がみんな被害者であったとしても、数が少なすぎる。もしかして既に、命を奪われているのでは。

 そんな嫌な予感がする中、当初の作戦通りに動く。その作戦とは私とレイゼルが屋敷の中に突入して、残りの三人で外へ逃げてきた賊を仕留めて貰うもの。


 そうして全方位回復を展開しながら私を先頭に、薄暗い屋敷の中へ侵入する。せめて九名のほうが被害者であってくれ。そんな願いと共に、反応があった部屋に刻一刻と近付き、突入する。


「なんだ、こいつら! 」


「外の奴らはどうした!? 」


 九名全てが外にいたような服装の男達であった。

 血が滾る中、私のメイスが、レイゼルのナイフが、男達を戦闘不能にしていく。そしてものの数秒で、この部屋で動く者は私達と男達の内の一人となった。この残った男からは、被害者の安否について聞かねばならない。そして吐いた情報は、女性達が石化されている事とガーランドと言う首謀者の名前と能力であった。


 被害者が石化しているだと。最悪な事態に、瞳の奥に炎が宿る。

 しかし呪文の詠唱無しで対象が石化するとは。解除魔法使いか、闘気で石化させているかのどちらかか?

 ……いや、私のように頭の中で呪文を構築させている可能性も。


「レイ、あと一人だけ反応が残っている。すぐに向かおう」


「……わかりました」


 残った反応、高確率でガーランドであろうが。

 通路を疾走し、最後の反応がある部屋へ突入する。すると賊達とは違い身なりの良い服装の男が、氷のような目でこちらを見据え佇んでいた。


「……お前達、国の機関の者か? それともただの冒険者か? 」


「冒険者だ、そう言うお前はガーランドだな」


「あぁ」


「攫った人達はどうした? 」


「後ろをよく見てみろ」


 突入した薄暗い部屋の後方を確認してみると、そこには多くの女性の石像が。もう助からない亡骸の山。

 手遅れだったか。

 自身の無力さに、希望がない状態に、気力を落としてしまう。

 ……いや、これ以上犠牲者を出さないためにも、この男をこのまま野放しにはしない。

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