第69話、出会ってしまった
ダンジョン天空まで聳える怪樹探索三日目——
前日と同じように第四フロアのお花畑で小休憩した私達は、第七フロアを目指して螺旋状の巨木を手足を使って登っていた。
今日は天使を探し出して討伐し、その足でダンジョン深部へとおもむき真実の呪文の手掛かりを探す日程である。
そうして第六フロアを過ぎた辺りまで登って行くと——
「アルドさん、なんか化け物が飛んできていますよ! 」
「あぁ」
全方位回復に敵の反応が、その数十二体。
そいつはギョロリとした目にクチバシが人の口のようになっている人間と鳥類を混ぜ合わせたような、人ほどの大きさがあるモンスター、怪鳥だ。螺旋に伸びる巨木の外周を、ギャァギャァ鳴きながら徐々に降下してきている。
転落の危険があるためあまり身動きが取れない中、襲われたら危ないな。そして一同に緊張が走る中、怪鳥の一匹が大きな顎を開けて先頭の私に急接近してきた。そこでメイスを怪鳥の鼻っ柱に向けて強振し、黒霧へと変える。すると私達に警戒し出した怪鳥達は、一定の距離を取って近付いてこようとしなくなった。そしたら——
「リーヴェ、イリス、攻撃を頼む」
「「了解です」」
巨木の幹に背中を預けたイリスが、落ちないよう私が腕を回しているリーヴェが、それぞれ攻撃をするたびに怪鳥の数が減っていく。そして怪鳥達は私達を襲うのを諦めたようで、元来た上空へと戻っていった。
そんな怪鳥達を見上げながらに、エルが呟くように言う。
「天使ってもしかして、怪鳥の変異種だったりするのかな? 」
「あぁ、その可能性が高いかもな」
そしてついに最上フロアである第七フロアへと辿り着いた。ここは他のフロアと違い天井がないため、夕焼け色に染まる雲の隙間から差す夕陽が直接当たり明るい。また所々高低差があるこのフロアには土がなく剥き出しの枝が入り組むようにして走っているため、気をつけないと足を踏み外してしまいそうだ。
そして見晴らしが良いため、遠目に何体か怪鳥がいるのが確認出来る。
「アルドさん、いよいよ天使との戦闘ですね」
相変わらずマイペースなエル。
「あぁ、十中八九偽物だろうが、奴がいるため頂上探索に不都合が生じているらしいからな。どちらにしても追い払うか討伐しないといけないだろう」
そこで後ろから付いて来ているリーヴェに視線を向ける。
「リーヴェ、天使は強力な遠距離攻撃をしてくるらしいから、遭遇したら真っ先にパラソル猫でみんなを守ってくれ」
「わかりました」
「イリスはどのタイミングで攻撃するのか、お任せします」
「わかったです」
そして最上フロアでの天使探しが始まる。情報ではダンジョンの深部、迷宮核がある部屋の扉はフロア中央付近の枝の中に埋没するようにしてあるらしい。だからまずはそこを探しながら進もうと思う。因みに天使と遭遇した時に怪鳥達に囲まれていたら大変そうなので、移動しながら近くにいる怪鳥は討伐していく。
とそこで、全方位回復に何度目かになる反応が。しかしこの方向は——
「上空に敵の反応だ、みんな警戒してくれ」
しかし夕陽が眩しくて目視出来ない。そこで地上に雨が降るようにして、こちらへ向けて金色の光の雨が降り注ぎ出す。
もしかして天使か!?
「リーヴェ! 」
「はいです! 」
私達に向かって降り注ぐ光の雨が、青白い半球状で半透明な薄い膜に阻まれると跳ね返るようにして地面へと落ちていく。とそこで——
「任せるのです」
皆が逆光に邪魔されて目視出来ないでいる中、ゴーグルをしたイリスが得意げに言った。
そうか、イリスは瞳をエンチャントしたら見え方が変わると言っていたから、この光でも大丈夫なのかもしれない。
そして大気を震わす轟音が鳴る。しかし全方位回復の反応は消えない。
「左肩を撃ち抜いたです。次は仕留めますよ」
とそこで陽が陰ったため、天使を目視出来るようになる。そしてその姿に神々しさはなかった。紫色の肌から左右二枚ずつ生えた金色の翼で羽ばたいているそいつは、顔面に張り付いた大きな瞳が一つあり、剥き出しの歯茎を見せるようにして怒りを表している。
そこで雲が途切れまた逆光に。しかし奴は急降下をして枝の上に舞い降りてきた。
もしかしたらイリスの攻撃を警戒して、より早く動ける地上へ避難してきたのかもしれないが——
リーヴェが弓を引き絞る。
そう、もう逆光でないため、リーヴェの強力なエンチャント攻撃が出来るのだ。あとは矢が放たれるまで、私達が足止めしていれば良い。
そうして私とレイゼルが囮になる中、リーヴェの矢が放たれて天使の胸元をドバッと吹き飛ばすのであった。
そしてそして、それから枝の中に埋没する木の扉を発見した私達祝福の風は、念のため周囲を警戒してくれると言うレイゼルを外へ残して迷宮核がある部屋へと訪れるのであった。
◆ ◆ ◆
アルド様の魔力回路から感じるに、嬉々としている事が伝わってきます。
ふふふっ、可愛らしい一面があるのですね。
しかし私に運命的な出会いがあるとは。アルド様に出会ったあの日から毎晩、私は夢を見るようになります。最初は意味がわからなかったです。今より背が低い私が、ターゲットを暗殺したり禍々しい化け物たちを仲間たちと狩る夢。そして一番の疑問点は侵食ではなく、炎の闘気を操っている事。
これは私?
困惑している最中、アルド様の告白がありました。そこであの夢が、私の前世の記憶であることが分かってきます。アルド様に質問をして確証も得ましたし、間違いありません。
そう、私の前世がアルド様の前世と同じパーティーにいた事。そして暗殺勇者が、私であった事が。
ただ断片的な夢のため全てを思い出せてはいませんが、今の私より勇者の私の方が暗殺の技術があるようです。そしてなにより近距離特化の攻撃、火葬が現時点では全く発動出来ていません。しかし夢を見るようになってからの私は、闘気の扱いが格段に上がってきています。侵食の広範囲攻撃も、今では自在に使い分けが出来る程に。この調子でいけば、火葬も扱える日が必ず来ます。
それと前世では女性である事を隠していましたが、パーティーでアルド様だけ最後まで騙されていた事実に少し悲しくもあります。
あぁぁ、いつ私の前世が勇者であった事を告白しましょうか?
……そうですね、信じて貰うためにも火葬が扱えるようになってからが良いかもしれませんね。
ふふふっ、アルド様の驚く顔が目に浮かびます。
とそこで風が吹きました。そして黒衣を着た一人の男が、音もなく枝の上に佇んでいました。
この私が気配を全く感じなかった?
それにあの金髪を逆立てた金壺眼の者は確か——
帝国ディバイナーの第十三部隊最凶の暗殺者、死神。
しかしなぜ、不吉の象徴とされる者がここに!?




