第68話、湖でまったり?
ダンジョン天空まで聳える怪樹から帰還した私達は、ギルドでトレントからドロップした魔石を換金したのち酒場へと訪れて晩飯を頂いていた。
「アルドさん、二日目はダンジョンの何処にいくのですか? 」
因みにエルは、冷たいミルクを飲んでいる。
「気になるか? 」
「気になります」
「そうだな、実は第六フロアに大きな湖があるらしいのだが、そこに主がいるらしいのだ」
「主ですか」
「あぁ、因みにその主は皆からこう呼ばれている。ドラゴンツリーと」
「うわっ、ドラゴンですか!? 」
「あぁ、ドラゴンだ」
「滅茶苦茶気になりますね」
「そうだろう。と言う事で、二日目はそのドラゴンツリーに会いに行こうと思っている」
「やったー」
そこでレイゼルが話に加わってくる。
「そのドラゴンツリー、第六フロアに行けば簡単に会えるのですか? 」
「いいや、普段は湖底に身を潜めているらしくて、訪れただけでは中々会えないそうだ」
そこで先程から興味津々と言った感じで聞いていたリーヴェも、疑問を投げかけてくる。
「アルドくん、どうするのですか? 」
「それはだな——」
そうしてダンジョン探索二日目、途中第四フロアのお花畑で小休憩をしたのち第六フロアへと訪れた私達は、思い思いの場所で釣り針にミミズを付けて湖に釣り糸を垂らしている。
「幻想的な風景で、綺麗ですね」
隣で竿を握っているリーヴェが、ニッコリ笑顔で呟いた。
「あぁ、来たかいがあるな」
眼前に広がる風景は、所々斜めに差した夕陽に照らされている。
因みに苔が生えているため緑色に埋め尽くされた地面と天井には、小さな名も知らない綺麗な花が点々と咲いている。またこのエリアの大部分を占める湖は透き通るような水質だが、陽が当たらない影になっている所が深淵のように真っ暗闇で何も見えない。
「しかしアルドさん、本当にこんなんでドラゴンに会えるのですか? 」
リーヴェの隣にいるエルが、疑問を投げかけてきた。
「あぁ、情報ではこの方法が一番堅実らしい」
因みにミミズで魚を釣り、今度はその魚を釣り針に付けてからドラゴンツリーを誘い出すと言う、二段階の手順を踏まないといけないらしい。またここに来てからずっと全方位回復を展開しているのだが、どうやら私の全方位回復では湖の中は索敵出来ないようで反応を全く感じない。
「まぁ、会えればラッキーだと思って、今日は気長に待とう」
「ふぁーい」
「ふふふっ、アルル。私が一番みたいですね」
少し離れた位置で釣りをしていたイリスが、竿を思いっきり引く。すると釣り糸の先、釣り針に一匹の魚が。
イリス、海上でも海魚を釣り上げていたし、釣りの腕前は私達の中で一番あるのかもしれない。そして餌をミミズから魚に変えたイリスが、得意げな顔で釣りのポイントを水深がありそうな場所へと変えた。
そこで先程からあーでも無いこうでも無いと、竿を動かし回っているエルが話しかけてくる。
「アルドさん、ドラゴンツリーは討伐しないのですよね? 」
「あぁ、討伐依頼が出ていないし、襲われる事もないらしいからな」
まぁ、一応襲われたらいけないので、今日もみんなには祝福を施しているが。
それに第五フロアで怪鳥の群れを討伐しても良いが、昨日はみんな頑張って大量の魔石をドロップしている。だからたまにはこんな日があってもいいと思う。
「ドラゴンツリー、やっぱりトレントの変異種なんですかね? 」
「恐らくな」
「どんな姿をしているのか楽しみですね」
「あぁ、胸躍るな」
それから二時間が経過していた。
釣り、難しいな。一向に釣れる気配がしない。
因みに私以外の女性陣は、餌がミミズから魚にランクアップしていた。
そして更に二時間が経過。
途中釣った魚で昼食にするため、火を起こし串刺しにした魚を炙り食したりもした。言うまでもなく私が食べた魚は、自分で釣った魚ではなくレイゼルからの頂き物である。
そしてやはり私だけが釣れない。頑なに場所を変えないのが良くないのか? それともしきりに湖を覗き込んでいるのが良くないのか? わからない——とその時。
なにかが動いたような気がした。そこで湖の中を注視していると——
大きな陰が見える。続いて波打つ水面。イリスの釣竿が、これでもかといったぐらいにしなっている。そしてあまりの引きに竿を持っていかれるイリス。
そこで現れた。ドラゴンのような大きな顎を持つ頭部が、水面から飛び出してきた。続いて胴体部分が見えてきたのだが——長い。グネグネと上下に動き水面から見え隠れしている。
ドラゴンツリー、頭部はドラゴンなのだが胴体は蛇のように長い根っこであり、その根っこ部分は見ようによっては肋骨のように見えなくもない。
そして一時姿を水面から見せていたドラゴンツリーは、暫くすると湖底へと戻って行くのであった。
「アッ、アルドさん、凄い気持ち悪かったですね! 」
「あぁ、確かに気持ち悪かったな」
「もうこの湖には近づきたくないです」
「あぁ、同感だな」
「でも思い出になったと言うか、来て良かったです」
興奮気味にそう言うエルは、とても楽しそうである。
そうしてダンジョン探索二日目、みんな怪我もなく無事にムルディの街へ帰還するのであった。




