↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/145

第64話、クラーケンが潜む海

 ◆



 宿を離れた私達『祝福の風』は、ギルドへ訪れて依頼掲示板の中から護衛任務をピックアップして見ていた。

 しかし思う。リーヴェは新しい弓を手に入れ、エルは順調に育ちつつある。そしてイリスとレイゼルが新たに加わった今、改めてダンジョンを探索して深部へ行ってみたい。


 商業国家連盟トウセイは東西に長く南に海が広がる国家だが、そんな領内にあるダンジョンは二つでここから東と西にそれぞれ一つずつある。そして更に東に行けば独裁国家であるが三つのダンジョンを保有する大国レイジン。西に行けば、エルフやドワーフ、そして獣人の国である亜人国家ハルシオンと、小さい地域ながらも自治権をしっかりと持つ竜王国ドルスタがあるわけで——

 レイジンは冒険者でも入国が厳しくて、ダンジョンも入場制限がされているらしい。

 代わってハルシオンとドルスタはダンジョンが一つずつしかないがオープンなためダンジョン探索がしやすい。またそこから更に北西に進めば、広大な土地を所有しダンジョンを五つも保有する帝国ディバイナーもある。


 というわけで西に行くとするか。つまりトウセイの西のダンジョン、天空まで聳える怪樹(ミステリアスツリー)が次の目的地と言う事だ。

 そして西に行く交通手段は十日間かけて険しい山脈を荷馬車に揺られて越えていくか、海路を三日間かけて船に揺られるかだが。


「みんな、これから西のダンジョン天空まで聳える怪樹を目指して移動しようと思っているのだが、陸路と海路、どちらの護衛任務が良いかな? 」


 するとエルが目を輝かせる。


「ボクは海です、海を見たことがないから海が良いです」


「リーヴェも海を見てみたいです」


 そしてレイゼルはすまし顔で口を開く。


「私はどちらでも、皆さんにお任せします」


「イリスは? 」


「そうですね、海釣りをしてみるのもいいかもです」


「そしたら決まりだな」


 そこで気がつく。西の海路の依頼は二種類出ているな。クラーケンが出没する海域を一ヶ月かけて現れるまで乗り続ける純粋な討伐依頼か、こちらもクラーケンが出没する海域を進むがもし万一に遭遇した時に対処する護衛依頼。まぁ、移動が目的だから討伐依頼は私達に関係ないか。


 そして出航日である二日後、帆船が停泊する港へ来ていた。そうして多くの冒険者達と一緒に私達は乗船すると、海鳥が鳴く中アトゥリの街を離れるのであった。

 晴れやかな空の下、海風が心地よい。そして甲板で、各自思い思いの時を過ごしていた。


「船って、凄い揺れるんです——うえぇ」


 エルは船酔いになっていた。そこで幻影思考の魔法をかける。


「どうだ? 」


 エルは青ざめていた顔が元に戻り、目をパチクリさせている。


「……凄い、気持ち悪いのが無くなりました」


「よかったな。……そうそう、一点を見つめる事なく会話をしていると、船酔いになりづらいと聞いた事があるよ」


「会話ですか。……そう言えばアルドさん、クラーケンと戦った事ってあるのですか? 」


「あぁ、前世でならあるよ」


「わー、その時の話、聞いてみたいです」


「リーヴェも聞いてみたいです」


 するとリーヴェに続き、イリスとレイゼルもこちらへ来て話に加わってきた。

 そうだな。もう隠し事はないからなんでも話せるのか。そうして私の昔話ならぬ前世話が開始される。


「あの日の天候は今日のような晴天ではなくて、横殴りの雨で大しけであった。クラーケンの討伐依頼を受けた勇者パーティーは、精霊魔法使いが索敵魔法で警戒する中、奴が潜む海域を進んでいく。そして精霊魔法使いの索敵魔法に奴が捕捉された。船上で警鐘が鳴り響く中、塔のような太い触手が一本、また一本と船を取り囲むように天へ向けてウネウネと伸びていく。そして触手が一斉に甲板へ向けて振り下ろされた。クラーケンは船に巻きつこうとしたのかもしれない。しかし今回ばかりは相手が悪かった。私の渾身のメイスの一振りで、剣聖の一太刀で、精霊魔法使いと解除魔法使いの風魔法で、次々と触手が切り離されていく。そしてあいつがいた、勇者である暗殺者が。闘気を炎に変換する事が出来るあいつの炎は、相手が死んだ後も燃やし続ける。あまりにも消えない事から、死んだ後も燃やし続けるものだから、火葬と呼ばれ皆から恐れられた。そしてクラーケンも例外なく、海の中に潜んでいたにも関わらず、勇者の火葬により焼かれた触手から燃え広がり、最終的には本体まで燃え尽きて絶命した」


「ひゃー、海の中で焼死ですか? 凄いですね」


「そうだな。私の前世の記憶では、暗殺者は勇者と呼ばれるだけあって別格の強さを持っていたな」


「そうなんですね、しかし面白かったなー」


「エル、これからそのクラーケンが出るかもしれない海域を進むのに、少し呑気すぎるのではないのか? 」


「ボクは祝福の風のにぎやか担当だから、これくらいで良いんですよ」


「そうか」


 そうして結局私達が乗る船はクラーケンに遭遇する事なく、順調に航海を続け予定通り出航から三日後にダンジョンが目と鼻の先にあるムルディの街に到着するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。