第60話、鋭い痛み
レイゼルは私の事を考えたらゾクゾクすると言っていたが、普段生活する中でもゾクゾクしないのかを確認しておかないといけない。と言う事で、まずは朝食を食べに行くとするか。
「リーヴェ、なにか食べたいものはあるか? 」
「リーヴェは温かいものが食べたいです」
「温かいものか。レイはなにかあるか? 」
「私は綺麗なお水を頂ければ、どこのお店でも構いません」
「綺麗なお水? レイはなんだかストイックだな。そしたら街を見て歩いて、気になるお店があったら入ってみようか」
と言う事で街中を歩いているのだが、アトゥリのお店の多くは朝一なるものをやっているため朝から人通りが多い。そのため大通りを歩いていると肩と肩がぶつかりそうになる事が多く、レイゼルも何度か当たりそうになっているのだが——その全てを紙一重で躱していっている。と言うか残像みたいのを残して躱していっているため、ぱっと見当たったように見えている。
「そうそう、レイはゾクゾクするような事があれば、その都度教えてくれても良いかな」
「わかりました」
そしてリーヴェはと言うと——
「ありがとうです」
何度も本当に当たりそうになるため、その都度引き寄せて当たらないようにしている。
うーむ、しかしレイゼル、肩が触れたぐらいで侵食を出してしまわないか知りたかったが、逆に言えば肩がぶつかる事がないためそこは心配しなくて良いと言う事か。
そこで行列が出来ている食べ物屋さんを見つける。看板に書かれた文字を読んでみると、ハンバーガー屋と書かれていた。後はなになに、いま帝国ディバイナーで流行っているハンバーガーがついにこの街へ、か。
購入した者達が手にしているのを見るに、スライスされたパンの間に平べったい肉とレタスが挟み込まれた軽食のようだ。
「二人とも、少し並ぶみたいだけどあのハンバーガーって奴を食べてみないか? 」
「「わかりました」」
そして行列に並んでいると、横着をかまして先頭のほうへ横入りする者がいるのが見えた。普段なら嫌な気分になるが、今回に限って言えばレイゼルを試すまたとないチャンス到来である。しかしレイゼルは、魔力回路の乱れを一切見せなかった。
「あの、アルド様」
「どうした? 」
「いえ、先程から私を観察する視線を感じるのですが」
「あぁ、すまない。ちょっと露骨すぎたかな」
「いえ、まだお会いしてから二日目ですし構いませんけど、幼い頃から訓練で様々な事をされてきましたので、痛みはもちろん精神的に責められても魔力回路の乱れは起きないと思われます」
「……そうなんだな」
幼い頃から、か。
前世の暗殺勇者も同じ事を言っていたな。そしてあいつも禍々しい闘気、火葬を手にするに至っていた。どうしたらそんな力が手に入るのか、想像するだけで悲しくなる。
とにかくだ、試すのはレイゼルには悪いが、仲間のためにもこれは必要な事なんだ。了承してもらおう。
そしてチーム祝福の風の嫌われ役は、全部私なのだ。
とそこで、俯いたレイゼルが片手を額に当てた状態で動きを止める。
「レイ、どうかしたか? 」
「いえ、初めてこんな、鋭い痛みが——」
「痛み? 頭部にヒールをかけようか? 」
「……いえ、……もう、…………大丈夫、です」
「そうか、それなら良いが、私に遠慮はいらないからな」
そこで額から手を動かしたレイゼルが、私の方へチラリと視線を向ける。
「わかりました」
一瞬レイゼルの魔力回路が乱れたが、今は普通に戻っているため本当に大丈夫だろう。
おっと、私達の順番が来たな。
「お姉さん、そのハンバーガーと言う奴を三つ下さい」
「はい、お代は銀貨一枚と青銅貨八枚になります」
「あっ、すみません、あとお水も人数分下さい」
「はい、でしたら銀貨二枚と青銅貨一枚になります」
そうして私達は片手にハンバーガー、空いた手に水の入った木製のコップを持つスタイルとなる。
さてと、食べてみるか。
……熱々の肉がジューシーなのは想像出来たが、ここまでとは。一齧りしたら柔らかな肉から肉汁が溢れ出し、その肉汁がパンに染み込んでパンも柔らかくジューシーに。
「アルドくん、美味しいですね」
「あぁ、ハンバーガー、美味しいな」
あと軽食だけあって歩きながら食べれるのも、ポイントの一つかな。
「レイはどうだった? 」
「工夫しだいでここまで美味しくなるのですね。……今度、同じ物を作ってみましょうか? 」
「それは嬉しいな、機会があったらお願いしようかな」
「わかりました」
そうしてハンバーガーを食べながら歩いていると、道端で人だかりが出来ているのを見つける。あとなんだか、騒がしいな。




