第42話、護衛任務
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翌日の朝、私たちは大規模なキャラバンの護衛任務についていた。そして現在街道を移動中のため、荷馬車の中で揺られている。
また私たちの他にも依頼を受注した冒険者たちが十名程度いて、各荷馬車に分散する形で搭乗している。
視線を仲間に向けてみる。のほほんとしたリーヴェを他所に、エルは緊張した面持ちで視線を落としていた。
「お腹でも痛いのか? 」
そこで視線を上げたエルが、小声で返してくる。
「山賊が出てきたらどうしようかと——」
「山賊なんてそうそう出るものじゃないよ」
会話で若干リラックスしたのか、そこでエルは頬っぺたを膨らませる。
「それより今のお腹の件、どう考えてもデリカシーが無さすぎです! 」
「そうか? 」
「はい、そこがアルドさんの悪いところです! 」
「そうか、すまない」
素直に謝ったのだが、エルはなぜか逡巡する。
「……いや、まさか? 」
「どうかしたか? 」
「その、わざと緊張がほぐれるように——そんな事はないですよね? 」
「あぁ、なんのことだかわからないな」
「アルドさん、今のは嘘が下手すぎです」
「そうか? 」
「はい、かなりぎこちなかったです」
「そうか」
そこから私たちは、何時間も何事もなく揺られる。そうして辺りは夕暮れ時を迎えていた。
また旅は順調に進んでいるようで、現在中継地点に予定されていると言う山間の僻地に到着していた。
因みにこのキャラバン隊、商業国家連盟トウセイでも有数な財閥、カタスベル財閥に所属する商人達の家族で構成されており、目的地である魔導国家マジェスタ領のアムンディ以外の街には立ち寄らない最短ルートを突き進んでいる。
商業国家連盟トウセイとは、西の祖国レコ王国と東の魔導国家マジェスタ王国の南に位置する連合国だ。また海や河川に面している国という事もあり、港町が点在する活気ある国らしい。
そこでキャラバン隊を指揮する隊長の指示の下、商人達が手際よく火を起こし食事の用意を始める。そして私たち冒険者達の食事も用意されているようで、パンとスープが振る舞われていく。
因みに今晩の私たちは他の冒険者たちと一緒になって、前半と後半に分かれて交代で警備を担当する事になっている。
そうして私たち三人が担当する後半の時間になったのだが、野生の動物が近寄ってくる事があるくらいで無事に終わるのであった。
次の日の早朝から、目的地へ向け走り出すキャラバン隊。そうして同日の夕暮れ時に、無事アムンディの街へ到着する。
西に傾いた陽に染まる街並みは影を伸ばし、大きな噴水の水面はキラキラと橙色に輝いている。
この街、魔導国家領だけあって、魔具を取り扱うお店が他国に比べて多いそうだ。
アムンディのギルドを訪れ報奨金を受け取った私たちは、その足で宿屋を訪れ受けつけを行なう。
「何事もなくて良かったですね」
カウンターで必要事項の記入をしていると、エルが隣から顔を覗かせてくる。
「そうだな、まぁあれだけの警備があるキャラバン隊に喧嘩を売るのは、ここらでは聞かないからな」
「しかしこれでお金が貰えるだなんて、冒険者って良い仕事ですよね」
そしてレコ王国から初めて国外に出た事もあり、二人はどこか浮かれているように見えなくもない。
「今日は遅いから、観光は明日だな」
「リーヴェは魔具屋さんに興味があるのです! 」
「魔具屋さん、ボクも興味があります! 」
……ん、まてよ、これは失敗したのか?
まだ街でお使いのような依頼なら、気が抜けていたとしても死ぬ事はない。しかし護衛任務は時として、危険が付き纏う仕事。
余計な力が入らないよう、移動中とかに冗談を言ったりしたのだが間違いだったか。変な先入観が定着しないよう無理にでも一度、危険を感じさせる護衛任務と言うのをこなした方が良いかもしれないな。




