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神様が創りし地〜勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める!〜  作者: 立花 黒
魔法研究ときどきイチャイチャ

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第33話、待ちに待った深部探索①

 ◆



 影の悪魔(ドギーマン)が壁をすり抜け、突然襲ってくるかもしれない状況。そしてここから先は、まだ見ぬ未知の領域。


 四方を囲む壁は精緻な石造りで、青味を帯びた氷を連想させる通路。そのため仮に五感の内の視覚だけしか働いていなければ、全身の表皮から徐々に熱が奪われてしまう感覚に陥いっていただろう。

 そんな荷馬車が通れる程の広さの通路を少し直進しているだけなのに、進めば城の別空間に出たと錯覚させる程の変わりようで統一感が欠落した世界。そのため気をしっかり持たなければ脳が錯覚を起こし方向感覚すら狂ってしまいかねない。


 ククッ——


 そう、私は三日ぶりにだが、ダンジョン断崖絶壁の虚空城(ダグラパロス)の城エリアへ戻ってきていた。

 先日発生したダンジョン活性化騒動でたまたま居合わせた私たちは、その時の活躍が評価される。そしてギルド長の粋な計らいで、特別報酬として深部までのダンジョン探索メンバーに私だけ同行許可がおりたと言うわけだ。


 クックッ——


 そこで考え事をしていたため気付くのに少し遅れたが、常時展開している全方位(オール)回復(ヒール)索敵版の端の方に敵の反応が出ている。そして暫く進むとメインを走る通路の脇から、ガシャガシャと金属音を鳴らしながら私と同程度の身長のモンスター、彷徨う鎧(リビングメイル)が現れる。


 ——その数三体。


「五方の一角を司る自由を欲する知恵の獣よ、我に緑色の根源を! 初級風魔法(クゼア)! 」


 詠唱完了と同時にギルド長から放たれた疾風が彷徨う鎧を、その中に潜む影の悪魔(ドギーマン)ごと真っ二つする。

 他方では斬り込むカイルさんが、魔力付与(エンチャント)された剣を別の彷徨う鎧の鎧と兜の隙間に突き刺し霧へと還した。

 またギルド長が放った二射目の風魔法で、最後の彷徨う鎧も葬った。


 クックックッ——


 しかしギルド長、伊達に長生きをしているわけではなさそうだ。ギルド長が先程から使用している風魔法、本来なら初級魔法だけあって威力はそこそこしかない。しかしあの鋼鉄の鎧をいとも簡単に切断しているあたり、並みの力ではない事が伺える。


 そう言えば初めて会ったさい普通に会話をしていたが、ギルド長は真実の呪文(トゥルースペル)の事を把握していた。つまり真実の呪文の魔法を知り、扱えてもなんらおかしくない。

 それとなんとなく肌で感じるのだが、ギルド長と風魔法は相性が良いのだろう。そのため魔法効果がプラス補正を受け、初級魔法でもあのような高い攻撃力を実現していると思われる。

 ギルド長のため冒険者ランクは与えられていないが、仮にランク付けするとなると、かなり上級の冒険者なのではと推測出来る。


 加えてギルド長がいるため目立っていないが、剣と盾を装備するカイルさんも危なげない戦い方をしているため、そのランクに応じた戦闘能力を持っている事が伺える。

 しかし強いパーティーで回復役に徹するのは、今までが今までだったため楽をさせて貰っているようで、なんだか申し訳ない気分になってきてしまう。


 私たちのパーティー構成は、精霊魔法使いのギルド長、B級冒険者の戦士カイルさん、そして私と、レコ王国の特使である騎士長職のギャザルさん。

 また現在ダンジョンにはローゼルの街で最上級であるB級冒険者二名とC級冒険者十六名からなる四つのパーティーが潜っており、活性化に伴って生み出された変異種狩りを行ないながら深部へと向かっている。

 そして五つ目であり殿(しんがり)を務める私たちのパーティーの目的は、レコ王国側の代表として訪れているギャザルさんと深部まで趣き、ダンジョンが完全に沈静化した事を確認する事である。


 しかし腐敗していると思い込んでいた自国であるレコ王国が、まさかわざわざ冒険者ギルドの顔を立てるような事をするとは。

 ギルド長に聞き知ったのだが、レコ王国は四年前から明らかに変わってきていると言う。それは情報通によると、新任の外交大臣が優秀であるからともっぱらの噂らしい。

 まず変わったのは他国との関係を見直し、理不尽な事を言われるがままだった関係性を改善。言わないといけない場面では、こちらの主張をはっきりと伝えるようになった。

 また同盟各国間で設立されている様々な名目の協力機関へ多額の寄付金を払うも、今までレコ王国に発言権は与えられていなかった。それらの機関を思い切って脱退し、他国への無駄な資金流出を減らしていっている。


 ククゥックックックッ——


 そこで新手の彷徨う鎧が現れ、それをギルド長が魔法で瞬殺する。


「ギルド長、俺の分ぐらい残して下さいよ」


「いやー、すみません。私もそうなんでけど、久々なため精霊たちも張り切っているんですよね」


 私もカイルさんに続く。


「私も深部へ連れていって貰っている立場でありながら、楽をさせて頂き申し訳ありません」


「いえいえ、王国部隊と違って血気盛んな我々冒険者は、皆攻撃職を希望する者が多いため、神官などの回復職の方が極端に少ないですからね。みな回復魔法が使えても兼業ですので、専門レベルで回復魔法を扱えるアルドさんは、こちらとしても同行して頂けるだけで頼もしいですよ。なので緊急時には、よろしくお願いしますね」


「わかりました」


 そうそう、政策は国内にも波及しており、財源の確保として税率を上げる代わりに、現在大きな利益を出しているとされる食料生産業界に目を向け、生産並びに売買の自由化、無償で生産技術の知識の共有、売り手が不当に売値を釣り上げないよう最高金額を低価格に設定、それを守らない者には追徴課税を施している。また富裕層が利用するであろう芸術品関連の売買には、さらなる課税対象として候補に挙がっているらしい。


 そして私とリーヴェが体験した人身売買を撤廃。さらに私の妹のような優秀な人材の他国への流出を防ぐため、それに変わる政策が行われているらしい。

 まぁ優秀な人材は売る先が他国から自国へと変わっただけに思うため、この件に関しては何とも言えない。

 ただ確実にこれから先、世界で一番貧しいとされるレコ王国が、今後変わっていくのではないかという予感は十分に感じる。


 因みにダンジョン活性化と言う周辺の町々を混乱に陥れそうな重大事件、本来なら冒険者ギルドは信用ならんとレコ王国が冒険者を締め出し独自で調査、その後は管理を申し出てもおかしくないのだが、今回冒険者ギルドの顔を立てる特使の派遣のみと言う方針を選んでいるのは、確かに昔のレコ王国ではあり得ない対応だろう。


「もう少しで深部、迷宮核がある部屋ですね」


 そのギルド長の言葉で、リーヴェとエルの顔を思い浮かべる。

 私たち三人ではまだこの深部付近はリスクが高すぎるため、本当なら私がここまで来る事はまだまだ先であっただろう。

 それと戦いにまだまだ不慣れな彼女達には、休息は必須。こうしてたまには別行動をするのも、悪くないかも知れない。

 しかしここまで来ると——


 もっとも深い場所へ迫っているため、刻々と魔素が濃くなってきている。魔素が身体にのしかかる圧迫感により、血が滾り心が弾むように踊り始めている。


 ククックゥックックッ、あと少し、あと少しだ——


 そこでレコ王国特使のギャザルさんが、声を潜めてギルド長へ語りかける。


「先程からあの笑い、不気味なんですが」


「すみません、根は真面目で良い子なんですけど、ちょっとだけ変わっていまして」


 とそこで金属音や何かが壊れる破壊音が、通路の先から聞こえてくる。他のパーティーが敵と遭遇しているようだ。


「私たちも戦闘に加わります」


 細い通路を抜けた先に現れたこの巨大な通路は、巨人が両手を挙げてなんなく通れそうなほど縦長だ。また左右の壁一面はステンドガラス、天井には天使達の壁画が所狭しと描かれているため大聖堂のような空間だ。

 そして通路の途中から先にある蠢くようにして漂う濃い黒い霧により、そこから先が全く見えなくなっている。


 どれだけの数の敵がいるのだろうか?

 正確には分からないが、その霧より手前に見える限りは彷徨う鎧十数体。

 それに応戦しているのは、九名の冒険者達。その内訳は殆どが戦士や剣士で、他には盗賊一人、あと魔法職の者が一人だけいるようだ。

 みな増援を待っているからだろうか、ざっと見る限り無理な突撃などはせず、あの霧から距離を取るようにして戦っている。


「加勢するぜ! 」


 カイルさんは到着そのまま足を止める事なく、近くにいた冒険者の助太刀で斬り込んでいく。そして鎧の脇付近の繋ぎ目に剣を捻じ込み彷徨う鎧を黒霧へ変えると、更に突貫し霧の近くにいる別の彷徨う鎧との距離を詰めていく。


「カイルさん、気をつけて下さい! 」


 今加勢を受けたばかりの冒険者の人が叫んだ。


 そこで暗闇の中で何かが動いている? と思った次の瞬間、黒霧を纏い飛び出した巨大な曲刀の刀身が、そのまま横薙ぎにカイルさんの首筋を切り裂こうと現れる。

 カイルさんは身の丈程あるその曲刀を咄嗟に屈んで避けるが、新たに現れた先ほどより少し下へズレているだけでほぼ同じ軌道の曲刀が迫る!?

 二連撃か!?

 それを咄嗟に構えた盾で防ぐも、その威力で真横へ吹き飛ばされ地面を転がる。


 そしてそいつはヌッと黒霧から姿を現した。

 あれは体長がゆうに三メートルを超える、腕が四本もある骸骨騎士(スケルトンナイト)。今しがた攻撃をした右腕二本には曲刀、そして残りの左腕二本にはそれぞれ盾が張り付いている。


「うおりゃーぁあ! 」


 カイルさんを追撃しようとする骸骨騎士の行く手に、掛け声と共に三人の冒険者が割り込む。

 吹き飛ばされたカイルさんは、剣を杖のようにしてつきながら立ち上がろうとしているのだが、その背後の闇に——


 新たに浮かび上がる不気味な影。

 そうして闇の中からカイルさんを追って飛び出して来たのは、同じく四本腕の巨大な骸骨騎士。しかしそいつは盾などの防具を持たず、その腕全てに長い槍が握り込まれている!


 瞬間そこから繰り出されるであろう怒涛の攻撃を予見し、嫌な汗が噴き出てしまう。

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