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神様が創りし地〜勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める!〜  作者: 立花 黒
ダンジョン断崖絶壁の虚空城

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第31話、暗躍する者

 ◆ ◆ ◆



 はぁー、ほんと嫌になるよな。


「こっ、殺して……く……」


 ダンジョン内で俺と遭遇してしまった哀れな冒険者を、生意気だったから時間をかけて痛めつけているわけだが——


 地面を這いつくばる冒険者の腹を思いっきり蹴ると、懐からギルド証が零れ落ちた。拾い上げて見てみると、この男がC級冒険者と言うことがわかった。

 この程度でC級なのか。やっぱり第十三部隊(アンラック)の奴らが異常なだけで、俺はかなり強い。そしてそんな俺が、冒険者のランクで新人と言われるE級なんてのがおかしすぎる。ただ任務が忙しすぎて、冒険者としての活動が出来てないだけなのだ。しかし俺がE級だと分かった途端、こいつみたいな実力がない奴に舐めた口をきかれてしまう。


 ボルコスでさえB級なんだから、俺が本気だしたら軽くA級に上がってしまうんじゃないのか?

 しかし——


「おらっ」


「がはっ、はっ、はっ……」


 ちゃんとダンジョンが活性化するのを見届けないと不味いのに、部隊長を含めみんなやる気がなくなってすぐに撤収しちまった。だから結局いつものように、俺だけが一人現場に残されそうになったもんだから抗議したら、俺と同じく冒険者登録させられているボルコスとコンビを組まされる事に。

 ボルコスはボルコスで、馬鹿よりマシだと思っていたのに変異種追っかけてどっか行きやがるし。正式にあいつを馬鹿二号にするべきだろうか?

 ……そう言えばあいつ、トロイくせにB級なもんだから通り名なんて持っているんだよな。

 あぁームカついてきた。と言うか、マジうちの奴らって使えねぇー奴ばっかだ。

 街へ帰還したら誰でもいいから拉致って、憂さ晴らしに自室でねっちり再起不能(オモチャ)にするか。


『ギギチチチィッ』


 不気味な音に視線を向ければ、変異種なんだろう。複数の彷徨う人形(パペット)がゴチャゴチャに混ぜ込んで丸めたような球体から、多くの手足が突き出たモンスターが現れた。


 あぁ、ほんと魔法が使いたい。こんな火を点ければ終いな相手は、中級炎魔法(メギラ)か派生の爆炎魔法(エンドラ)で一発だろ?


 だがこれまで我慢して我慢して、力を手にするため我慢をしてきた。生まれてから幼い頃までのスラムで過ごした期間は勿論、拾われて訓練漬けの日々を過ごした時、そして振るいにかけられ生き残るための試験中ですら、一度も魔法を使わずこの肉体一つで生き抜いてきた。


 そんな俺のように魔法を一切使用しない者を、世間では生粋なる脳筋(・・)と呼ぶ。


 人は体内を巡る魔力を使用しない状態が続くと、魔力が肉体、筋細胞にまで馴染み、常人では到底出せない肉体強度、瞬発力、持久力を発揮するようになる。しかし一度でも魔法の使用、魔力を外に出してしまうと、また同じように魔力が体内に馴染み出すまで数ヶ月の月日を使ってしまう。


 冒険者や一般人なら問題無いだろうが、常に前線で活動を強いられる俺たちにとってそれは死活問題。自由を許される約束の日まで、魔法を使ってみるのは我慢だ。気を抜けば、その時点で俺の人生が台無しになってしまうから。


 だから時間はかかるが——


 ほっといても死ぬ虫の息の冒険者を放置すると、魔力付与(エンチャント)されているナイフを太腿から各々一本づつ抜き取る。そして構える中、彷徨う人形(パペット)団子はこの俺を恐れる事なくジリジリと距離を詰めてくる。


 くはは、俺もたまには息抜きが必要だ。来い、バラバラに切り刻んでやるよ!


 団子から次々と剥がれ伸びてくる手や足を躱し、切断し、何度も何度もナイフを人形本体であろう凝縮された部分を狙い攻撃していく。すると剥がれ落ちた隙間から顔面の集合体が現れた。ギチギチ蠢くどいつの顔も、味気ない彷徨う人形らしい平らな顔面。


 そこ目掛け中にいる影の悪魔(ドギーマン)ごと、エンチャントされたナイフをズボズボ突き刺していく。そして球体から伸びる彷徨う人形の手足が残り数本になった頃、ナイフを深々と刺したあとグチャグチャにかき混ぜる事に成功。すると顔面部分がドバッと黒い霧に変わり、残された手足部分がバラバラと崩れ落ち消失していく。


 ふぅー、少しは楽しめたな。さてと、そろそろ俺も城下町へ避難しとかないと、溢れかえり押し寄せるモンスターたちに飲まれ喰われてしまうかもしれない。


 脳筋者だからこそ最大限まで使えるようになる第六魔力回路、感覚鋭敏化(ゴッドアイ)。そのステージ(スリー)を発動し、周囲を探る。


 ——なんだ? あの特大の変異種と遭遇していた人間たちの反応が、まだ消えていないだと?

 どういう事だ? ただ手こずっているだけでみんな瀕死なのか? それとも変異種を狩れるほどの冒険者が紛れ込んでいたのか!?


 他国のダンジョンを活性化させる事は、相手国への宣戦布告とみなされる。また下手をすれば相手国のみならず、周辺諸国をも敵に回しかねない行為。

 そこで足がつかないようダンジョンから遠い村の住人を拉致ってわざわざこのダンジョン内で始末したわけなんだが、それだけでは活性化に至らなかった。そこで急遽足りない分は、活性間近に生まれ落ちる変異種を使って冒険者を狩ることで目的を達成させようとしたのだが。


 くそっ、俺たちの痕跡を残さないよう綿密な計画のもと時間をかけて任務にあたっていたって言うのに、村人が貧弱すぎて連れていく途中でバタバタ死んじまうもんだから予定が狂っちまった。


 ……任務が失敗に終わろうものなら、俺たちの暗躍が他国にバレる事はなくても、名に傷が付いてしまう。そうなると俺たちを煙たがっている反対派がうるさいんだったっけ?

 ほんとマジ失敗しても、俺の責任じゃないからな!


 ——くそっ、とにかく直接出向いて、どちらにしても俺がトドメを刺しとく。ついでにそこからなら入り口付近までも探れるから、ついでに他に生き残りがいないかも探っておくか。

 城内の通路を疾走する。


 はぁー、本当に俺って、貧乏くじ引きすぎだろ? 今度流行りの占い屋で、今後の人生を見てもらうべきだろうか?


 移動中何匹か変異種に遭遇するも、もう遊んでいる時間が無いかもしれない。そいつらは相手にせずただただ駆ける。

 そしてドーム状の開けた空間に辿り着いた俺は、その光景を目の当たりにする。


神聖放出弾(ホーリーフレア)


 複数の光球が死神みたいな影の悪魔(ドギーマン)に迫り始めたかと思えば、それから逃げ惑っていたドギーマンは何発も直撃を受け、あっという間に俺の目の前で消滅してしまった。


 なんだ今のは!? それに俺の見間違いか?


 地面に情けなくケツを付けてしまっている冒険者五人に、何も恐れる事なく堂々とこの場に直立している一人の冒険者。そしてその立ってる冒険者が、魔法を使って馬鹿でかい影の悪魔を瞬殺したように見えたが?


 ……落ち着け。ダンジョンが完全に活性化していないとはいえ、活性化間近のダンジョンで無傷でいる時点でおかしい。それにあの冒険者、試験中の腕章をしている雑魚中の雑魚なはずなのに、俺の勘が他の五人ではなくてこの冒険者に対して警鐘を鳴らし続けてやがる! 間違いない、今の魔法を撃ったのはこいつだ。そしてこいつは、くくくっ、かなりの実力者!


 向こうも俺に気がついたか? しかしよくよく見れば若い、まだ十代後半ぐらいか!? ただ俺は舐めてかからず、くはははっ、全力でこいつを殺す。ぶっ殺してやる!


 歩行に緩急をつける。狙いは心臓、串刺しにしてやる! 脳筋であり魔力回路のブーストに加え殺しの技術を幼い頃からずっと磨いてきた俺の研ぎ澄まされた一撃。それを魔法を使ったばかりの魔力が満たされてすらない奴が、止められる道理はない。即ち、俺の間合いに入ったが最後、背中から心臓が飛び出すぐらいの勢いで串刺しにしてやる!


 そして俺の間合いに奴を捉えた。

 と同時に生存維持本能(ライフバイタリティ)を発動し、自身のみならずナイフにも闘気を纏わせる! 瞬間、目にも止まらない速度で出したナイフの突きが、ロックオンしている奴の心臓を正確に捉え、突き刺す!


 ははひゃっ、何も出来ずに死んだな!


 とそこで、心臓を突かれた奴がナイフを持つ俺の手首を握り、力の限り前進してくる。そのため奴の心臓を串刺しにしているナイフが更に食い込み、刀身のその殆どが背中を突き破り外気に晒されているのだが——


 空いてる手を手刀の型に変え、腕を目線まで引いている!? こいつ、イカれてやがる! 素手で一か八かの攻撃をするつもりなのか! しかしそんな状態でのへなへな攻撃が、俺に通用するとでも思ってやがるのか!?


 予想した通り、奴はイタチの最後っ屁で手刀を、俺の心臓に向け——


 なっ!? 早——


 しかもそれを止めようとした脳筋である俺の腕を跳ね除け、そのまま俺の胸に——


「ぐっ、ぶぅがふっ」


 馬鹿な、脳筋の俺が雑魚に力負け——


『グツゥチャッ』


 そこで胸から引き抜かれた俺の心臓が、奴の手の中でまだ脈打っているのが見え、……奴はそれを……冷酷な、冷めた……瞳で——


 ……悪魔……なの……か?

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