第25話、城下町の噴水広場
今日は特別にもう一話アップです♪♪
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「さて、ここから山越えするわよ」
ララノア先導の元、山一つ小川一つ、そしてもう一つ山を越えると、見渡す高原の遥か先に暗雲と呼べる、どす黒い雲のカーテンのような霧が前方一面に現れた。
圧迫感を感じずにはいられない地面から大空まで垂直に聳えるあの黒霧の先が、ダンジョン断崖絶壁の虚空城だ。
そしてその黒霧のカーテンの下部の方に、視界を横断するようにして人が作り上げた壁が、ダンジョン生物と人が住む世界を二分していた。
しかしこの壁も、眼前までくると見上げる高さだな。
壁は起伏ある高原に延々建てられているため場所によってはここより土地が低く、壁の上に人が歩ける通路が有るのを知る事が出来た。
この壁は見張り兼緊急時に、モンスターと応戦するための砦となるのだろう。また建造されてから多くの時が流れているようで、壁面にはツタが張り付き、場所によっては完全に苔色へ染まっている。
壁の一角、通用門を潜ろうとしていると、出入り口付近の物陰から兵士が顔を覗かせた。その兵士は私たちの二の腕に巻かれた腕章を見ると、生暖かい目に変わる。
「坊主たち、試験頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
私たちの故郷には冒険者ギルドが無かったため知らなかったが、どうやらこのデカデカと『試験中』と記載されている腕章をしているイコール冒険者見習い以下だと言う事は、関係者の間では共通認識のようだ。
壁を通過した私たちは、黒霧に向かって高原を進む。そして黒霧までもう少しといった所で、突然凄まじい風切り音を立て前方に突風が吹き荒れ始める。するとこちらへ流れ出した黒霧が、あっという間に私たちを包み込む。その場で固まり風に耐えていると、徐々に周囲から黒霧が取り払われていった。そのため前方に突如として断崖絶壁の上に建造された、城と城下町が現れたような印象を受ける。
そして黒霧の壁は、私たちの後方へと移動していた。
ダンジョン、そこは外界から隔離された不思議な空間。ダンジョン内では天候の変化や時間の流れが存在しない。つまり昼のように明るいダンジョンはいつまで経っても明るいし、雨が降るダンジョンは四六時中雨が降る。
断崖絶壁の虚空城の空はどんより雲で、明け方の朝日が昇る前の暗いが見えない事はない、と言った明るさのダンジョンであった。
そして高原を進んでいくと、地面が草原から人が敷き詰めたような石畳へと変わる。
そこからは長く連なった城壁の上のような通路を進んでいるのだが、通路の左右は渓谷になっており覗き込んでみるがその底は深すぎて黒いとしか見えない。そのため馬車が往来出来るくらいの道幅があり転落防止の段差もあるのだが、自然と皆んな通路の中央付近を歩いてしまっている。
そして言葉少なく所々石畳に亀裂が入る通路を進んでいき、断崖絶壁の上に建造されている城下町へ近づいていく。
因みにこの先の城下町と城を繋ぐ通路もここと同じような一本道らしいのだが、防衛の際はその二箇所が要となり激戦区となるのだろう。
もしもの時に備え、入念に地形の凹凸をチェックしておくか。
そして城下町への入り口となる開けっ放しにされている門まで来た。眼前には噴水がある広場が広がり、そこから先は扇状に何本も街の奥へと続く細く曲がりくねった通路が見える。
「なんだか、お化けが出て来そうですよね」
門から先の無人となっている城下町をおっかなびっくりしながら覗き見るエルの発言に、リーヴェの顔が青くなる。
……えーと、ここからは実際にモンスターが出てくるわけなのだが、こんなんで大丈夫なんだろうか?
そして街へ入り噴水前の広場へ着くと、改めてララノアから断崖絶壁の虚空城の説明が始まる。
「はい、ここからダンジョン内に潜むモンスターが現れるから、無闇に先走ったりはぐれたりしないようにね。それでダンジョン断崖絶壁の虚空城は、大きく分けて城下町エリアと城エリアがあって、今回私たちが活動する城下町エリアは、そこまで強いモンスターは出ないから安心して。ただ強くないと言っても、このダンジョンに現れるモンスターは影の悪魔と言って、生み出される器へ憑依することによって彷徨う人形や骸骨兵士として襲ってくるから、倒しても油断しないように。中に潜む影の悪魔を倒さないと、気付いたら復活した彷徨う人形や骸骨兵士に囲まれてしまってたって事があるから、特に気をつけるように」
ララノアの説明にエルは真剣な表情で素直にうんうん頷いているが、リーヴェはおどおどした感じでキョロキョロと辺りを見回しながら聞いている。
あーこのパターンだと、リーヴェの尻拭いを私がするパターンになるような気がしてきた。
「それと影の悪魔自体は物理攻撃が殆ど効かない相手だけど、こちらも直接攻撃されても殆どダメージはないから安心し——」
『キイィィ』
明らかに不自然に、広場に面した煉瓦造りの民家の戸が開いたため、一同に緊張が走る。
そして入り口の闇からぬっと姿を現したのは、人の形はしているが顔も何もない木製の彷徨う人形だった。
そいつはフラフラとした足取りでゆっくりとだが、時折呻き声を上げながら確実に私たちの方へ移動して来ている。
「早速来たわね。んであんな感じで襲ってくるんだけど、影の悪魔本体を倒せないまでも無力化させる必要はあるわ。アルド、あんたこのパーティーの前衛よね? 」
「はい」
「早速あれと戦ってみて」
「わかりました」
モンスターが武器を持っていたら、奪おうかと思っていたんだけどな。いや、たしかダンジョン内だと倒したら敵の武器も一緒に消えるんだったか? どのみち素手でやるしかないか。
辺りに新手が現れないか全方位回復探索版を発動しながら、彷徨う人形に向け歩み始める。
「アッ、アルド、エルルンから武器を貰わなくていいの? 」
「問題ないです」
そして私と彷徨う人形の距離は縮まっていき、互いに射程距離に入る寸前——
私が飛び込み距離を無くす。ゼロ距離で出した押し上げる形の掌底が彷徨う人形の鳩尾付近に突き刺さる。次いで出した後ろ中段回し蹴りで同じ箇所を攻撃し後方へ吹き飛ばした。派手に吹き飛んだ彷徨う人形は、道端に山積みにされていた木箱に頭から突っ込む。
「ひゅー、アルド素手でもやるじゃない」
「それ程でもありません」
「でも油断は禁物、無闇に近寄らないように。あいつらは器の身体を完全に破壊しないと、延々襲ってくるから」
そして一同は、ララノアに習い木箱から足だけを覗かせている彷徨う人形を見る事しばし。しかし彷徨う人形はそれから全く動く気配を見せない。
「あれ、おかしいわね? 影の悪魔どっか行ったのかな? 」
「あぁ、あの彷徨う人形を操っていた影の悪魔なら、倒しましたよ」
「えっ? 」
「祝福をした掌底では彷徨う人形の中の影の悪魔の反応が消えませんでしたので、掌底で穴が開いた箇所に直接祝福を施した蹴りを入れたのですけど、そしたら影の悪魔の反応が消えました」
……ん? 私の説明が下手だったのか?
ララノアは呆れたように、口をポカンと開けている。
いや、そうか!
私は木箱に突撃した彷徨う人形の足を掴み引き摺り出すと、連続踏みつけにより粉々に砕く。
「壊しとかないと、他の影の悪魔が来て動き出してしまうんでしたよね? すみません、いきなりのミスで、先生に呆れられるところでした」
「えっ、あっ、えぇ、いいのよ」
危うく私まで話を聞いていないと、勘違いされるところであったな。
「それとみんなにも、ここで祝福を施しておきますね」
そうして私はリーヴェとエルの両者の身体とそれぞれの武器に聖魔法防御を施す。
「あと先生もまだみたいですけど、私が施しましょうか? 」
「……えっと、そのエンチャントは? 」
「神光魔法の聖魔法防御です。まぁ効果は30分くらいで切れてしまいますけど、その時はまた掛け直しますので」
「そっ、そう、よろしく」




