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神様が創りし地〜勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める!〜  作者: 立花 黒
旅立ちとギルド

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第14話、小鬼の追撃

 私は壁に張り付くと、小窓から民家の中に居座るモンスターたちの動向を伺う。

 しかしなんでこんなダンジョンから遠く離れた村なんかに、ゴブリンが複数体も居るのだ?


 書物で見たり使用人仲間たちから聞く限りでは、今世のモンスターの多くはダンジョンの中、もしくはその周辺にしか存在しないはず。


 ダンジョンから生み出される好戦的な奴らは、トドメをさすと魔石を落とす事がある。

 その魔石を使用して武器や防具を製作すると、それらに魔力加護や様々な補正を与えることが出来る優れものになる。そのため各国は自国にあるダンジョンを独占管理、またダンジョン活性化などで溢れてしまった時にモンスターから町々を防衛するため、ダンジョンへ出入り出来る箇所は必ず壁を建設している。つまり壁の外に、多くのモンスターが出る事は平時ではあり得ない。


 またどこかの壁が、モンスターにより突破されたと言う大事件も聞いていない。仮にダンジョンからここまでをモンスターが通って来たとしても、他の街に全く被害が出ていないと言うのもおかしな話だ。しかも私たちは数日前まで情報が集まる配達屋をしていたので、なにかあれば真っ先に情報が手に入るため情報漏れの可能性も低い。


 しかし実際にゴブリンたちが目の前にいる以上、私の考えが及ばない所で物事が進んでいる可能性がある。


 私は奴らに気がつかれないようスッと建物から離れると、物陰に隠れる二人と合流しゴブリンがいる事を伝える。


 ゴブリン、奴らはそこそこ鼻が良いが、それは人と比べての話。接近を許さない限り、大丈夫なはず。

 風は西側に向かって吹いているが、奴らに気付かれにくい風下を進めたなら、このまま遭遇する事なく外へ出られるかもしれない。


 しかしすんなり話は進まなかった。

 先ほどの場所から暫く進むと、どの道を通ろうとしても小さな鬼たちの姿が見え隠れしていたのだ。ただ霧が深い事が幸いして、殺した人間に悪戯をしている奴らは私たちに全く気がついていない。


「アッ、アルドくん、来た道からだれかが近づいて来ています」


 その言葉を受け、その場に身を隠すと後方を確認する。すると二匹のゴブリンがこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。奴らはキョロキョロしながら、通り過ぎる建物内に人がいないのかを探っているようだ。


「片付けてくる」


 私は小石を拾うと、放物線を描くようにして奴らに向かって投げる。

 暗闇の中、左右以外注意が散漫なゴブリンたちの後方に落ちた小石が、コッと音を立てた。

 反応して後方に向かい首を捻るゴブリンたち。


 ゴブリン相手なら第一段階(シングル)で十分!


 私は大地を踏みしめ蹴ると、一気に前方へ飛び出す。そして霧に包まれながらも僅かにある周囲の光を、その刀身に集める剣でそのまま振りかぶる!

 僅かな鈍い輝きに気がついたのか、後ろを振り向いていたゴブリンが目線だけをこちらに戻す。そこでやっと私に気付き、驚愕の表情を浮かべるゴブリンたちだが——


 気づくのが遅かったな。


 ゴブリンの瞳に青白い光が映り込む中、喉元を瞬時に斬り裂く。

 返す刃で私に斬りかかろうとしていたもう一匹の首も狙おうとするが——奴の剣が邪魔だ!

 急遽軌道変更で袈裟斬りに一刀両断。


「グギャェー」


 そして断末魔が上がってしまう。

 私とした事がしくじってしまった。

 血飛沫を撒き散らしながら倒れるゴブリンを背に、早足でリーヴェたちの元へ戻る。

 不思議な霧のため音がこもっているとは言え、先ほどの断末魔を上げさせてしまったのは完全に私のミスだ。

 早くこの場から離れないと。


 二人を連れ移動を再開させて程なく、近くしか索敵が出来ない全方位回復なのに、複数の敵の反応を感じとる。

 やはり先ほどの断末魔で、近くのゴブリンどもが集まってきてしまっている。

 二人が不安げな表情を浮かべる中、ゴブリンどもを避けて進んでいるため、中々村の西方面にも進めていない。

 そして焦りが募る中、突然エルに袖を引っ張られる。


「アルドさん、こっちです」


 エルが進行方向上から少し逸れた、民家の一つを指し示しながらに言った。


「どうした? 」


「この民家は使われていないんですけど、地下に隠し通路が。そこを通ったら、直接外に出れます! 」


「本当か!? 」


「はい、もう数カ所ありますけど、ここはその内の一つです! 」


 そして私たちは、その空き家に足を踏み入れる。一歩踏み出すたびに床がギシギシ音がする古い民家を、エルに続き早足で進んでいく。そして地下へと続く階段を降りると、物置部屋のような空間に出た。


 古びた家具や道具がある中、エルは観音開きタイプのタンスを開く。そして何も入っていないタンスの中、壁側である正面の板を取り除くと、人一人が四つん這いで通れるくらいの横穴が現れた。


 これが隠し通路か!


 とそこで、一階出入り口の扉が開く音が!

 ゴブリンどもが匂いを嗅ぎつけてきたか!?


「二人とも急ぐんだ! 」


 急かすとまずはエルが穴の中に入り、四つん這いになり進んでいく。


「リーヴェも早く! 」


「アルドくんは!? アルドくんもついてくるのですよね? 」


「あぁ、ただ片付けてからだ。このままだとこの抜け穴まで奴らが来てしまうからな。でも必ずいくから、安全なところで待っていてくれ」


「……わかりました。ただリーヴェは出口で、アルドくんが来るまでずっとずっと待ち続けますから! 」


 そこで上の階から、ギシギシ床をふみ鳴らす複数の音が!


「それは死ねないな……、さぁ早く! 」


 そうしてリーヴェを穴の中に押しやると、穴に板を嵌め込みタンスの扉を閉める。


 さてと、私の本職は回復なんだがな。

 解除魔法使いのあいつならば、回復魔法以外にも精霊魔法が使えるわけで——

 愚痴を言っても仕方がないか。


 階段を駆け上がり一階まで一気に行くと、民家の中には既に二匹のゴブリンの姿が。


「ギギャー」


 私を見つけるや否や、狭い廊下で剣を振り上げながら走り寄って来るゴブリンども。

 揃いも揃って、せっかちだな!

 接近してきた先頭の一匹が、私に向け剣を振り下ろす。私はそれを受ける形で剣を構え、衝突する直前で力の限り押し上げた。


『ギイィィン』


 私の剣により弾かれたゴブリンの剣は、手元からすっぽ抜けると勢いよくクルクル回転しながら天井に突き刺さる。

 そこで私は唖然とするゴブリンのガラ空きになっている胴体に向け、横薙ぎに剣を振るった。

 立ったまま血飛沫を上げ続けるゴブリン。

 私はその横をすり抜け、次に続いていたゴブリン目掛けて剣を真っ直ぐ下へと振り下ろす。

 ゴブリンは先ほどの私がしたように、それを剣で受けようとする。が私の力の前では無力。振り下ろされた私の剣が、ゴブリンの剣を押し退け脳天に突き刺さる。


『ドガンッ! 』


 一息つく間もなく、入り口の扉が蹴破られた。

 戦闘の音を聞きつけて来た新手か!

 そして奇声を上げながら、扉からゴブリンどもがなだれ込んで来る。


 くそっ、こんな場面、暗殺勇者でなければ音も立てずに仕留めるなんて無理がある!


 そいつらは先ほどのゴブリンのように、剣を振り上げながら走り寄って来ている!

 そこで私は、同じように剣で受け止めようとしたのだが——


『ギギイィン』


 なっ!?

 私の剣が折れた——


 そう、山賊から奪い使って来た剣の刀身が、あろうことかゴブリンの剣と激突させた衝撃で折れてしまっていたのだ。

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