第102話、念話
魔なる者がレダエル、だと。どう言う事なんだ?
『レダエルは狂ってしまったのだよ。そしてこの世を混沌に陥れるために受肉化した。それが魔なる者』
つまり私の信仰が間違っていたと言う事なのか?
『それは自身でよく考えてみるんだな。そして今後が大切だ、何を信じて何に耳を傾けていくのか』
何を信じて何に耳を傾けるのか。
『話を戻すぞ。狂ったレダエルである魔なる者、それを正す者様がお告げと言う形で勇者パーティーを組織して、魔なる者を六つに分断する事に成功する。お前はその六つの内、既に三つに合っているな』
つまり天上真神レダギル、繁栄光樹アジュツゥレモ、煉獄覇王獣ザンバエルグドルガーは元は魔なる者レダエル。
『そして六つに分断されて正気を取り戻したレダエルなのだが、二度と暴走しないためにそこから魔法の五属性の力を一体の精霊竜に封じ込め、更にそこから五つに分け切り離した一つがこのメギルベルである。つまり私もレダエルの一部』
目の前にいるメギルベルがレダエル。……そして五体の精霊竜とは、氷壊神竜ブリディアブ、風酸神竜クゼレス、土天神竜ドルバン、雷光神竜ラグナベイナか。
『ほぉ、知っていたか。なるほど、そして精霊魔法には興味がないか。まぁこの五属性の真実の呪文を使うには、その属性の精霊竜の名と六つに分けられたレダエルの分身の名が必要になってくるため、神光魔法より発動条件が難しいがな。因みにワシはこの世に現れるために受肉化しておる。それは他の四体と違ってワシは人間と関わり合うのが好きなのだよ』
『人間と関わり合う、ですか? 』
『このように語り合うのもそうだが、隣のエルと言う娘から引き出している色恋沙汰の話が一番の好物である』
言われて隣のエルを見れば、彼女は顔を真っ赤に染めて口をあわあわさせている。
『私とエル、同時に話しかけていたのですか? 』
『あぁ、そうだ。そしてエルの方は本音を引き出し、自覚させている最中である』
『自覚、それは何をですか? 』
『それはもちろん、お前には秘密だ。……それとリーヴェと言う娘、なかなかに興味深い存在だな』
『リーヴェですか? 』
『あぁ、そしてお前の勇者パーティー時代の過去世にも縁ある存在だ』
勇者パーティー時代、私はリーヴェの前世と出会っていた?
『それについては詳しく教えて貰えないのですか? 』
『私の口からはこれ以上詳しく答えられない。そう言う決まりだからな。しかしいずれ近いうちにわかる日が来るだろう。リーヴェと言う娘が何者であるか』
◆ ◆ ◆
今ボク達はメギルベルとの会話が終わり迷宮核の部屋へと向かっている。因みにメギルベルの機嫌が変わらない内に進もうと言う事になって、お姉ちゃん達は連れて来ていない。
しかしなんなんだ、このメギルベルと言うドラゴン。失礼だ、ボクがアルドさんの事をどう思っているのか、根掘り葉掘り聞いてくるだなんて。でも自覚してしまった。ボクはアルドさんの事が大大大好きな事を。
しかも眠れなかった本当の理由や引っ付いて飛行している時ドキドキしていた事を知っている存在。だから下手に刺激してアルドさんに気持ちをバラされてしまわないよう、細心の注意を払って受け答えした。でも頭の中に話しかけられるのはドッと疲れちゃったよ。
そう言えばアルドさんはどんな事を話していたのかな? ボクと同じで恋愛についてかな? お姉ちゃん達とあんなエッチなキスをしているアルドさん。あんなのを見せつけられたら眠気が吹き飛んでしまうよ。
しかしどうしよう、思い切って聞いちゃおうかな? えーい、迷うな。いつもの調子で聞いちゃえば良いだろ。
「あの、アルドさん、メギルベルとはどんな事を話していたのですか? 」
「レダエルについて話をしていた。そして私の信仰心が揺らぐ程の事実を教えて貰っていた」
「うわっ、なんか固そうな話ですね」
「詳しくはみんなが揃った時に話すよ」
「はぁーい。……それとアルドさん」
「どうした? 」
「疲れたら言って下さいね。実はボク、小さい頃から肩揉みが得意なんです」
ボクは決めたんだ。これからアルドさんと、触れ合う機会を増やすんだって。
「そうか、そしたら疲れた時は頼もうかな」
「はい。……あっ、あの扉が迷宮核の部屋の扉かな? 」
「リーヴェ達が心配したらいけないので急ぐか」
そうしてボク達は、迷宮核の部屋の中に書かれているルーン文字を紙に書き写し部屋を後にする。そこでアルドさんが話しかけてくる。
「そう言えば、なぜ最初メギルベルは私達の前に現れなかったのだろう? 」
「あっ、それボク聞きましたよ。なんでも人が来ないから、眠っていたそうです」
「そうだったのか」
「はい、確かに言っていました」
そしてメギルベルがいた所を通り過ぎようとしたのだけど——
「アルドさん、いないですね」
「あぁ、いないな」
そう、メギルベルは居なくなっていた。どこに行ったんだろう?
そっそれよりもう一回、アルドさんを運ばないといけないんだった。
「……アルドさん、ひとっ飛びするので引っ付きますよ」
「あぁ、頼む」
アルドさんの背中に引っ付き、ギュッと抱きしめる。さっきより少しだけ強く抱き締めてるけどバレないよね?
「エル——」
その言葉にドキリとする。
「重いだろう、すまないな」
「ははっ、これぐらい大丈夫ですよ。では行きます」
そうしてお姉ちゃん達の所に戻ると、メギルベルもいた。聞いてみると沢山の人と話したいんだって。そしてメギルベルの暇潰しに付き合ったボク達は、メギルベルの背中に乗せて貰いダンジョンの入り口まで一瞬で運んで貰うのであった。




