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7/10

七 エディタは何を使うんだろう。

 古代魔導書に記された緊急コマンドが、青白い光となって空間に広がる。


「sudo system.admin --emergency-access -force」


 その瞬間、世界が一瞬フリーズしたように静止した。


WARNING: Emergency Access Requested

Caution: System stability may be affected

Proceed? [y/N]:


「まさか、対話型の承認が...」


 目の前に浮かぶプロンプトに、思わず声が漏れる。この世界のシステムは、本当にコンピュータそのもののように動いているのだ。


「y」


 一瞬の躊躇の後、僕は承認を与えた。


Access Granted

Developer Mode: ACTIVE

Debug Level: FULL

System Core Access: ENABLED


 視界が大きく変化する。今まで半透明だった画面の数々が、より鮮明に。そして、その内容も一気に専門的なものへと変わった。


「これは...システムのコアログ!?」


SYSTEM LOG:

[WARNING] Multiple reality anomalies detected

[ERROR] Version control system compromised

[CRITICAL] Branch corruption in progress

Location: ./world/physics/gravity.git

Location: ./world/magic/elemental.git

...


「ちょっと、何が起きてるの?」


 ピクシィの問いかけに、僕は急いで説明を始める。


「この世界のルール...物理法則や魔法の仕組みが、ファイルとして管理されているんだ。そして今、そのファイルが何者かによって書き換えられようとしている」


 図書館員が身を乗り出してくる。


「それは、古の予言に...」


 彼の言葉は、突然の警報音で遮られた。


CRITICAL ALERT:

Unauthorized modification detected

Target: ./world/magic/elemental/fire.git

Status: Pull request pending

Author: Unknown


「誰かが、火の魔法の仕組みを書き換えようとしている!?」


 慌てて詳細を確認しようとした時、予想外の展開が起きた。


Connection Established

Remote Access Detected

User "Aria" is attempting to connect...


 見知らぬユーザーからの接続要求。しかも、その通信ログには見覚えのあるパターンが...。


「これ、地球のSSHプロトコルの形式だ」


 その時、新たなメッセージが表示される。


Aria > Hey, fellow developer! Need some help?

Aria > This world's repo is pretty messed up, isn't it?


「...仲間?」


 困惑する僕に、さらにメッセージが届く。


Aria > Look at the fire.git changes

Aria > Someone's trying to implement infinite MP hack

Aria > Classical buffer overflow, lol


「なるほど...!」


 僕は相手の指摘した変更点を確認する。確かに、魔力消費のチェック処理に危険な改変が加えられようとしていた。


「話が見えてきたぞ」


 僕は図書館員とピクシィに向き直る。


「この世界への攻撃は、二種類ある。一つは、私のVRシステムとの干渉による一般的なバグ。もう一つは...」


 画面に表示された不正なコードを指差す。


「意図的な攻撃。この世界のシステムを書き換えようとする何者かの仕業」


 その時、新たな通知が表示される。


Quest Updated: [Debug the World]

New Information:

- Multiple system threats identified

- Potential ally discovered

- Emergency access rights obtained


「で、どうするの?」


 ピクシィの問いかけに、僕は決意を込めて答える。


「まずは、この不正アクセスを防がないと。でも、その前に...」


 僕は謎の協力者"Aria"にメッセージを送信する。


> Thanks for the info. Who are you?

> And more importantly...

> Which side are you on?


 送信直後、建物が大きく揺れる。窓の外では、空間の歪みが更に強まっていた。そして...。


Alert: System instability reaching critical levels

Recommended action: Immediate intervention required


 時間との戦いが、始まろうとしていた。

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