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83.ランメル王国に到着しました

 国境検問所から馬車で三日掛けてランメル王国の王都に辿り着くと、王都門を抜けたところにランメル王家とラドリス公爵家の馬車が待機していた。


 ラドリス公爵家の執事が乗った馬車は、オルフェウス侯爵家の侍女達が乗った馬車と、侯爵夫妻の荷物を積んだ馬車をラドリス公爵家に案内してくれるらしい。


 ラドリス公爵家に宿泊することになっているフランツとエレノアも、先に王宮に向かいランメル国王に謁見することになっていたので、それに配慮してくれたようだ。


 ランメル王家の馬車には待ち切れずに迎えに来たミハイルが乗っており、王宮まで先導して案内してくれることになった。


 ここでレイチェルがランメル王家の馬車に移動したことは、苦笑しただけで誰も敢えて突っ込んでいない。


 ミハイルの護衛も同乗しており二人きりではないので、エドワードも目を瞑ることにしたようだ。


 ただフォレスト王家の馬車にはエドワードとリリアンナの二人きりになってしまったので、寧ろそちらの方が問題である。


 今はまだ婚約を公表していないのだから、表面上は婚約者ではない者同士が馬車に二人きりというのは外聞が悪い。


 いくら二人の婚約が公然の秘密も同然とは言えそれはそれ、どう考えてもまずい状況だが、エドワードはどこ吹く風である。


 リリアンナはそんな彼に呆れ、溜息を吐くしかない。


 その代わりに、エドワードが隣に座ることだけはしっかりと断らせてもらった。


 因みにリリアンナがオルフェウス侯爵家の馬車ではなくフォレスト王家の馬車に乗っていたのは、エドワードのお願いと言う名の圧力があったからである。


 代わりにオルフェウス侯爵家の馬車には、ルイスとエミリアが同乗していた。


 フレデリックはクリフとミレーヌの二人と共にトリアード公爵家の馬車に同乗しており、今後の打ち合わせなどをしているらしい。


 ランメル王家や貴族に関してフレデリックが知り得た情報等、気に留めておくべきことを共有しているそうだ。


 今回はフォレスト王国代表というだけでなく護衛を兼ねている二人にとって、ランメル王国に関する情報を得ることは極めて重要なことだった。


 ランメルの王宮に到着し、謁見室まで案内されると、そこにはアルフレッドとラドリス公爵家が揃っていた。


 ランメル国王との謁見が済むと、今度は会議室へと案内される。


 応接室や談話室では人数が多くて全員が座れないので、こちらの場所が使われることになったようだった。


「つまり、ゲルグは直ぐに動く可能性が高いということですか」

「はい、皆様が王宮に到着されたことは今日中に耳に入るでしょうから、今晩か明晩には動くでしょう」


 ランメル王国の騎士団長から犯罪組織やゲルグの動向について説明を受けたエドワードが、微かに眉を顰める。


 到着したその日の夜に襲撃を受けるのはできれば避けたいが、そうも言ってられない。


 それに、アルフレッドとイリーナの婚約披露パーティーはすっきりとした気分で出席したいので、この件が少しでも早く片付くのは大歓迎だった。


 ゲルグが王宮に侵入した時に部屋の外に出られて面倒なことになるのは困るので、レイチェルの幼馴染である伯爵令嬢達とその両親にもこの話は一緒に聞いてもらったが、これ以上は彼女達に話すべきことではない。


 彼女達にはここで退室して、先に客室へと向かってもらうことになった。


 レイチェルもミハイルやロマーノと共に退出し客室へ向かった後、三人でお茶でもするようだ。


 ロマーノはアメリアの婚約者候補ではあるが、今日は他の候補者達がいないこともあって、正式な顔合わせは後日にするらしい。


 ただリリアンナが見たところ、魔力保有量はアメリアより若干ロマーノの方が多く、魔法力だけを考えれば二人は最良の組み合わせだと思われる。


 魔法力の高さは魔力保有量とほぼ比例していると言えるが、それは真面目に魔法の鍛錬に励むことが前提であり、必ずしもそうだとは言い切れない。


 だがアメリアが幼い頃から真面目に魔法の鍛錬を続けてきたことはリリアンナもよく知っているし、ロマーノもそれは同様だとイリーナから聞いている。


 後は二人の相性次第ではあるが、それさえクリアできれば問題はないだろうと思えた。


 そして彼女達が退出した直後、リリアンナはランメル国王から遠い目をしたくなるような話を聞かされ、口元だけ笑みの形を作りアルフレッドを感情の籠らない目でそれとなく睨んだ。


 何を考えたのか、アルフレッドはリリアンナが七つの元伯爵家の者達相手に手加減なしの魔法を放ち一方的に蹂躙した映像を、よりによってランメル王家とラドリス公爵家の方々に見せたらしい。


 一体いつの間にそんなものを記録していたのかと、小一時間ほど問い詰めたいところである。


 イリーナは純粋にリリアンナの魔法の実力を絶賛し、不当な侮辱を繰り返していた七家の者達には激怒していたが、問題はそこではない。


 ランメル国王や騎士団長からは術式を付与したおしめに興味を持たれ、導入を検討したいとまで言われ、全てフレデリックに対応を丸投げし彼の仕事を増やすことになった。


 現実逃避したくなるのを何とか取り繕って表情を保っていたリリアンナには、それを悪いと思う余裕などなかったのである。


 だがその直後にアルフレッドとイリーナが犯罪組織の拠点突入作戦に参加しようとしていると聞き、どうにかして止めてくれとランメル国王から懇願された時は、リリアンナだけでなくフォレスト王国側全員が顔色を変えた。


 二人揃って何を考えているのかと、これに関してもじっくりと問い詰めたい気分である。


 婚約披露パーティーの主役なのだから大人しくしていろと、その場で全員で説教する羽目になったのは予想外だった。


 その結果、婚約披露パーティーが終わった後でなら好きに動けと、無理矢理二人を納得させたのである。


 ただその頃には、二人にできることがあるかどうかは分からないが。


 そしてこの日の夜は結局、ゲルグが動くことはなかった。


 どうやら今晩決行するようだと犯罪組織に潜入していたランメル王国の暗部から連絡がきたのは、翌日の午後を少し過ぎた頃だった。

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