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82.ランメル王国に出発です

 学年末試験が終わり、その結果が掲示板に張り出された。


 前回同様リリアンナとエドワードは共に全教科満点で首席、クリフとルイスは同点で三位、次がミレーヌと今回も幼馴染の五人で上位を占めている。


 名前が掲示されるのはAクラスの人数と同じ上位三十名で、全てAクラスの生徒の名前で埋まっており、それも前回、前々回と変わらない。


 つまり進級してもAクラスの顔触れが変わることはなさそうだ。


 アンナの件で協力してもらっていることを考えれば、これは願ってもないことである。


 それに一安心しながら一番下を見ると、前回同様最下位としてアンナの名前と全教科の点数が掲示されている。


 前回に続き、全教科二十点未満、正確には十五点未満と散々な結果だ。


 それでもアンナの行動は前回と変わらず、自分はエドワードに続く二位だと妄言を吐き騒いでいる。


 だが流石に三回目ともなれば、周囲も慣れて冷めた視線を送るだけだ。


 この時点でアンナの留年は確定したようなものであり、遠巻きにしながらもおめでたい頭だと嘲笑する者が少なくなかった。


 一応追試もあるが、自分は成績上位者だと思い込んでいるアンナは通知を受けながらも関係ないことだとこれを無視している。


 最後の望みである追試を受けなかったことでアンナの留年が正式に決まり、病気療養以外では久々の留年者となった。


 その事実を、アンナ本人が理解できるかどうかは分からないが。


 成績発表の翌日から春休みに入り、追試はその五日目から行われる予定だったが、一教科目をすっぽかした時点で全てが終わった。


 リリアンナ達は二日目にランメル王国に向け出発しているので、アンナの留年が決定したことを知るのは帰国後のことだ。


 それまでは、留年したことを理解できているかどうかも含めて、アンナがどのような反応を見せるかは一切考えないことにした。


 今回ランメル王国に向かうのは、オルフェウス侯爵一家に、エドワードとルイス、クリフとミレーヌにレイチェル、そしてレイチェルの幼馴染である伯爵令嬢の三人とその両親達、フレデリックとエミリアの兄妹だ。


 ルイスはアルフレッドの弟として、クリフとミレーヌはフォレスト王国側の代表兼護衛として婚約披露パーティー及び建国祭に出席することになっている。


 レイチェルはミハイルの婚約者としてランメル王家と顔合わせをする為であり、三人の伯爵令嬢達は婚約者候補であるランメル王国の貴族令息達と顔合わせをする為だ。


 伯爵家序列一位のブライトン伯爵家の令嬢であるアメリアは、イリーナの弟でラドリス公爵家の後継であるロマーノとの婚約が有力となっている。


 伯爵家序列三位のグラスト伯爵家のエヴリン、同じく五位のアレスト伯爵家のメイベルは、それぞれランメル王国の侯爵令息との婚約が有力視されていた。


 何れもお互いの魔法力を確認した上で、本人達の相性を見ながら話が進められることになっている。


 フレデリックは犯罪組織のことがメインではあるがこちらにも関わる予定で、外交官としてランメル王国との交渉を一手に引き受けており、滞在中は多忙を極めることになるだろう。


 エミリアは社交界デビュー前ではあるが、ルイスの婚約者として婚約披露パーティーに出席することになっている。


 建国祭には出席しないが、その間はレイチェル達の側に付き守りを固める予定だ。


 魔法力はレイチェルの方が強いし、当然護衛も同行しているが、エミリアもルイスの婚約者なだけあって魔法の実力は相当なものであるし、万が一の不測の事態に備え、別行動よりも一緒にいた方が都合が良くもある。


 それに付きっ切りになれないエドワードの代わりに、比較的自由に動けるエミリアは、レイチェルと共に行動するよう命を受けてもいた。


 実際は護衛と言うより、お守りの意味合いの方が強くはあるが。


 兎も角こうした理由により、このメンバーでランメル王国へと向かうことになった。


 それぞれの護衛や侍女も同行しているのでかなりの大所帯だ。


 通常であれば王都から馬車で移動することになるが、今回は可能な限りランメル王国に滞在できるよう、王都郊外から国境検問所近くまで転移魔法陣を利用することになった。


 本来はこの転移魔法陣を利用できるのは外交官だけであり、年に何度もこうした例外が発生することは滅多にない。


 だが今回は婚約披露パーティーの前に犯罪組織との決着を付ける為にも、一刻も早くランメル王国の王都に到着すべきだとのことで、利用する許可が下りたのだ。


 お陰で婚約披露パーティーの八日前に到着することができる。


 そして婚約披露パーティーの前にゲルグが仕掛けてくるよう、犯罪組織に潜入しているランメル王国の暗部がそう仕向けてくれているとのことだ。


 そして場所は、ラドリス公爵家ではなく王宮の客室に忍び込ませる予定である。


 建国祭には各国から要人が出席することになっているが、彼らには離宮に宿泊してもらうよう準備が整えられているので、王宮の客室に忍び込まれたところで殆ど影響はない。


 だがラドリス公爵家に忍び込まれれば、婚約披露パーティーに影響が出る可能性が高い。


 これは、姪の婚約披露パーティーに水を差したくないとランメル国王が配慮したからでもあった。


 それもあって、リリアンナはエドワード達と共に王宮の客室に宿泊することになっている。


 本来アルフレッドの妹である彼女は兄や両親と共にラドリス公爵家に宿泊すべきだが、ゲルグの狙いがリリアンナである以上そうもいかない。


 確実に王宮に忍び込ませ捕らえる為にも、そうするより他なかった。


 そしてゲルグを捕らえると同時に、騎士団や魔法士達が犯罪組織の拠点へ突入し、構成員達を一人残らず捕らえる手筈になっている。


 それがいつになっても対処できるようフォレスト王国の魔法士達もランメル王国に集結し、既に準備を終えている状態だ。


 後は決行を待つのみである。


 ただそこに参加しようとするアルフレッドとイリーナを止める羽目になるとは、誰一人思っていなかった。


 婚約披露パーティーの主役二人が何を考えているのかと、全員で説教したのは言うまでもない。

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