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114.嫌な繋がりです

 リリアンナと同じタイミングで溜息を吐いたエドワードは、騒ぎ立てているガルドレア公爵達を冷めた目で一瞥する。


 そしてミハイルを振り返ると、真剣な面持ちで口を開いた。


「本来ならばフォレストの王族である私がランメル王国の問題に口出しすべきではないのだろうが、何れ可愛い妹が嫁ぐことを考えれば、できる限り憂いの芽は摘んでおきたい。協力できることがあれば、遠慮なく言ってくれ」

「今でも充分にフォレスト王国の方々には助けられていますよ。今もガルドレア公爵家の領地の本邸と王都のタウンハウス、両方の家宅捜索に協力していただいているのですから」


 その言葉にジェラルドが息を呑み目を見開く。


 そして猛然とミハイルに食って掛かり始めた。


「家宅捜索とはどういうことだ! 何の権限があってそんな無礼なことをしている!!」

「お前達がエドワード王太子殿下方にアプディスを混ぜたお茶を出した時点で家宅捜索に入った。他国の王族に違法薬物を盛ったのだから当然だろう。それから、無礼なのは王族である私達に不敬を働くお前達の方だ」


 ミハイルは冷静かつ簡潔にそう説明するが、当然の如く彼らがそれを受け入れることはない。


 口汚く罵倒するガルドレア公爵達を無視してエドワードに向き直ると、ミハイルは控えめに笑みを浮かべた。


「フォレスト王国の魔法士の方々に協力していただいたお陰で、証拠隠滅される恐れもなくなったようです。踏み込むと同時に邸にいた者達全員を無力化してくださったそうですから」

「お役に立てたようで何よりです」

「先程部下から連絡がありましたが、先代も捕えたようですよ。自白魔法を行使するよう指示しましたから、異母兄達のことも直ぐに判明するでしょう」


 ガルドレア公爵達がエドワード達に媚薬を盛って襲う計画を立てていることを掴んだ時点で、家宅捜索に入ることが決まっており、建国祭の真っ最中ということで必要最低限の人数ではあるが、いつでも踏み込めるよう騎士達が準備を整えていた。


 この部屋を監視していた騎士達が、ガルドレア公爵側が媚薬入りのお茶をエドワード達に出したことを確認した時点で、騎士団長であるアレックスに報告がいき、家宅捜索に踏み切っていたのだ。


 今回はフォレスト王国の王族であるエドワードとレイチェルが狙われていたこともあり、例の犯罪組織絡みでまだランメル王国に残っていたフォレスト王国の魔法士達が、急遽これに協力することになった。


 それもあって、ランメル王国の騎士達が必要最低限の人数であっても成し遂げることができたのだ。


 アレックスは部屋から出ることなく、ガルドレア公爵達から少し距離を取って遠距離通信用の魔道具でその報告を受けていたが、感情のまま怒鳴り散らしていた彼らがそれに気付くことはなかった。


 因みにヴァネッサは何も話してはいないが、それは静かにしているのではなく単に魔法で口を封じられているだけだ。


 アルフレッドはヴァネッサにも身動きできないよう魔法を行使していたが、直ぐに彼女だけはレイチェルと交代していた。


 つまり婚約者であるミハイルを襲おうとしていたヴァネッサに対し、レイチェルが容赦なく魔法を行使しているのである。


 それは今も続いており、レイチェルが魔法を行使する度に二人はお互いに睨み合っていた。


「そうなると、次はフォトレイ伯爵家ですか」

「彼らも今晩の建国祭の夜会には出席していますから、一応監視はつけています。以前から警戒はしてましたからね」

「ただあの家は認識阻害魔法や洗脳などの、精神に作用する魔法を得意としているのです。魔法力自体は大したことないのですが、監視や警戒をするには面倒な相手ですね」

「ですがオルフェウス侯爵令嬢が作られた魔道具のお陰で、こちらは何とかなりそうです」

「洗脳など精神に作用する魔法も、無効化してしまいますからね」


 フォトレイ伯爵家には認識阻害魔法に適性がある者が多く、これまでは監視や尾行をするのに苦労していたらしい。


 だが認識阻害魔法を感知する魔道具があれば、その問題も解消される。


 リリアンナが作製した状態異常無効化の魔道具は洗脳や幻覚にも効力を発揮するので、やっとまともに監視や尾行ができるようになると感謝され、このような状況だと言うのに、何だか気恥ずかしくなってしまった。


「そう言えばさっき話を聞いてから気になっていたのだけれど、ゲルグはロイドを犯罪組織から逃してやったと言っていたわ。ザボンヌ子爵令嬢と会ったのは少なくともそれから一年は後のはず。なのにどうやってガルドレア公爵家と連絡を取っていたのかしら? ゲルグ自身は、逃した後もロイドと連絡を取っていたことは確認できているけれど」

「そうだよね、考えられるとすれば……」

「そんなものっ、私がゲルグと通じていたからに決まっているだろう!」


 アンナに近付くようロイドに指示したのがガルドレア公爵だと言うことを聞いた時から抱いていた疑問と疑惑を話していると、ジェラルドが踏ん反り返って横から口を挟んでくる。


 やはりそうかとリリアンナがエドワードと顔を見合わせ眉を顰めていると、自白魔法の影響で更に暴露し始めた。


「ロイドの奴がアプディスの効果を検証する相手をしくじった所為で、犯罪組織から逃げないとまずい状況になったからな。それで、ゲルグに連絡役をやらせたんだ」

「ゲルグとはいつ通じたんだ?」

「ロイドが逃げる少し前だ。だがロイドの野郎、一年前から行方が分からなくなった。アンナ・ザボンヌと接触したことだけ報告して、その後は消息不明だ。お陰で新しい媚薬も手に入らなかった」


 どうやらゲルグ同様、ガルドレア公爵達もロイドが殺されたことは知らなかったようだ。


 薬を作るのに散々支援してやったのに裏切りやがったと、恨み言をブツブツと呟いている。


 その様は異様としか言いようがない。


 仮に今もロイドが生きていて、ゲルグが作らせようとしていた何種類もの媚薬が完成していれば、アプディス以上の被害が出ていたことだろう。


 そしてそれらをガルドレア公爵達が悪用していた可能性が高い。


 そう考えると、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

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