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113.罪を重ねています

 ガルドレア公爵達の下卑た笑い声が室内に響き渡る。


 何がそんなにおかしいのかと睨め付けたくなるほど、その声は耳障りで不愉快だ。


 彼らは一頻り笑うと、こちらを挑発でもするかのように、見下した目をして鼻で笑った。


「たかが禁忌の子程度でこれほど驚くとは、王族も騎士団長も大したことはないな」

「ええ、本当に。私達の血を引いているお陰で、ヴァネッサはこんなに綺麗で可愛くて優秀な、素晴らしい娘になったのですもの」

「全くだ。ロイドも禁忌の子というだけで、フォトレイ伯爵家と馴染みのある犯罪組織に預けられはしたが、あいつは薬を作ることに関しては才能があるからな。私達よりも魔法力があることだけは気に食わないが」


 ジェラルドとカミラが勝ち誇った様子で自慢げに語り、こちらを嘲笑う。


 二人が語った内容には色々と突っ込みたいことばかりでとんでもないことまで暴露しているのだが、どうやらそれには気付いていないらしい。


 自白魔法が行使されているとは言え、聞いていないことまで次々と暴露しているにも拘らず悦に入っている様子は、ただただ滑稽でしかなかった。


「無能だと陰口を叩かれているお前達二人の血を引く娘の、どこが優秀なのだ? 公爵令嬢だとは思えないほど全てにおいて能力が低いと蔑まれているというのに」

「あれのどこが綺麗で可愛いんだ? 単にあいつらの美の基準がおかしいだけなのか?」


 ジェラルドとカミラに呆れ毒気を抜かれたミハイルとアルフレッドが、思わずそんな本音を漏らす。


 ミハイルは兎も角、アルフレッドは本人を前に堂々と容姿を貶めることを言っているので流石に問題がある。


 それを視線で嗜めると、気まずそうに目を逸らされた。


「私達の自慢の娘を侮辱するとは何様だ! こんなに素晴らしい娘の価値が分からぬとは、やはり愚かな男だ。こんな奴が次期国王だとは何と嘆かわしいことか!」

「その通りだわ! こんなに素晴らしい私達の娘を嫁がせてやると言っているのに、他の娘を選ぶような愚かな男は、次期国王として相応しくないわ! ここはやはり、ジョルジュが代わりに王位に就くべきよ!!」


 ヴァネッサを侮辱されたと感じた二人は激昂し、逆にミハイルを侮辱したかと思うと王位簒奪まで仄めかす。


 どこまでも罪を重ねる発言を繰り返す二人に呆れ溜息を吐くと、リリアンナは彼らを無視してミハイルに視線を向けた。


「フォトレイ伯爵家とは、ガルドレア公爵家と関係のある家でしょうか?」

「先代のガルドレア公爵の母親の生家です。こちらも以前から色々ときな臭い噂の多い家ですね。彼女は後妻ですが、本来ならガルドレア公爵家に嫁げるような家ではありません。それに関しても不審な点があります」

「後妻であっても、相応しい家から選ぶでしょうしね。ロイドを預けたということは、フォトレイ伯爵家と馴染みがあるのは例の犯罪組織と考えて間違いないでしょう。それで、不審な点とは? 後妻と言うことは前妻は儚くなられていたのでしょうか?」

「先代の異母姉を出産後、産後の経過が思わしくなくそれで儚くなられたと。現ガルドレア公爵の祖父は、前妻の喪が明けた直後に出席した夜会で何者かに媚薬を盛られ、訳も分からないまま目の前にいたフォトレイ伯爵家の娘を襲ってしまったようです。その時に娘が身籠ったことで、責任を取って後妻に迎えることになったと聞いています」


 そこまで聞いたリリアンナは、目を伏せて考えを巡らせる。


 ガルドレア公爵家の者達は、爵位の割に魔法力が低い者ばかりだ。


 それを疑問に思っていたが、恐らく相応しくない家から後妻を迎えたことが原因だろう。


 そしてフォトレイ伯爵家が例の犯罪組織と関係があったのであれば、かの家の娘が後妻に入ることになったのも、最初から仕組まれたことであったと考える方が自然だ。


 それ以外にもアンナ絡みのことを含め、気になることは色々とある。


 だが話の繋がりとして、まずはフォトレイ伯爵家に絡んでいるであろうことから片付けていくことにした。


「ロイドは先代の異母兄と異母姉の間に生まれた禁忌の子ということですが、これも仕組まれたことなのかもしれませんね」

「フォトレイ伯爵家の血を引く後妻の息子が、ガルドレア公爵家を継ぐ為に、ですか。有り得そうですね。これは先代が存命ですから、そちらに自白魔法を行使して吐かせることにしましょう」

「それで、異母兄と異母姉はどうしているのでしょうか? 先程の話からすると、既に儚くなられているようですが」

「二人とも若くして亡くなっています。異母兄は婚約者との結婚を半年後に控えた頃、自ら命を絶っています。異母姉はその直後から体調を崩して引き篭もり、約一年後に病死したと聞いています」


 それを聞いて、より疑惑が深まる。


 それを、そのまま躊躇うことなく言葉にした。


「フォトレイ伯爵家による、ガルドレア公爵家の乗っ取り、でしょうね。更に王位簒奪が追加されたようですが」

「……やはり、そう思われますか?」

「そう考えるのが自然かと。公爵家の割にガルドレア公爵家の方々の魔法力が低いとは感じていましたが、フォトレイ伯爵家の魔法力を受け継いでしまったのでしょうね。恐らくそれ以外の能力もなのではありませんか?」

「そのようです。以前のガルドレア公爵家は、優秀な者が多かったようですから。先代の異母兄と異母姉も、あらゆる面で優秀だったそうです。逆に先代は全てで落ちこぼれだったようですが」

「そうですか……」


 二人の会話を聞いたガルドレア公爵達が、後ろで何やら騒いでいるが、それを綺麗に無視して考えに耽る。


 流れで思わぬ問題に関わることになってしまったが、これを放置するのも後味が悪い。


 余計なことに首を突っ込んでいる自覚はあるが、こうなったら仕方がないだろう。


 だがその一方で、媚薬絡みでガルドレア公爵達を追い込むつもりが、何故ここまで話が膨らんだのかと、リリアンナは頭痛を覚え深く溜息を吐いた。

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