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106.侵入者撃退中です

 怒声と共に睨み合いが続く中、よく知った魔力が飛び交うのをリリアンナの感覚が捉える。


 すると程なくして、少し離れた場所でも複数の魔法が発動されたのを感知した。


 思ったより早かったなと思いながら口元に笑みを浮かべると、リリアンナはゆっくりとエドワードを見上げた。


「どうやらレイチェル王女殿下が魔法を使われているようですね。随分と派手になさっているようですが」

「煩わしい鼠でも出たのかな。二箇所に向けて立て続けに魔法を放っているようだね」

「あら、エミリアが空間に対して浄化魔法を行使していますね」

「空気が汚れでもしたのかな?」

「そうですわね。離れた場所でも魔法が次々と使われているようですけど、これはミハイル王太子殿下でしょうか?」

「そのようだね。彼のところにも、良からぬ虫が湧いたようだ」


 態とらしく状況を伝えるリリアンナとエドワードに、ガルドレア公爵達が目を眇める。


 公爵夫人だけは驚愕に目を見開いているが、ガルドレア公爵達は何を言っているのか理解できていないようだった。


「先程から何を訳の分からないことをほざいているのだ! 王太子とフォレストの王女が魔法を使っているかどうかなど分かる訳がないだろう!!」

「魔法力が弱いお前達の基準で考えてもらっては困る。私達は魔法大国と呼ばれるフォレストの王太子と、その中でも魔法の名門として有名なオルフェウス侯爵家の直系だ。同じ王宮内で行使されている魔法ならば、難なく感知することができる」


 相変わらず自由に動かせない首から下をだらしなくソファーに凭れ掛からせながらも、口だけは威勢よくガルドレア公爵が怒鳴り立てる。


 話すことだけはできているのは、アルフレッドがその辺りを上手く調節しているからだ。


 それがどういうことか当然理解できていないガルドレア公爵を、エドワードは嘲り氷点下の眼差しで見据えた。


「王太子殿下と妹ほどではないが、俺もレイチェル王女殿下とミハイル王太子殿下が魔法を行使されているのは感知している」

「私も魔法が行使されていることは感知できていますわ。どなたが行使されている魔法かまでは分かりかねますが、そこまで把握されているエドワード王太子殿下とリリアンナ様、そしてアルフレッド様は流石ですわね」


 エドワードに続き、アルフレッドとイリーナまでもがガルドレア公爵達を嘲笑う。


 それに更に激怒した彼らは、血管が千切れるのではないかというほど青筋を立てていた。


「巫山戯るなっ! 王宮の客室と王太子殿下の部屋がここからどれだけ離れていると思っている。魔法を使ったかどうかなど分かる訳がないだろう!」

「たった今、王宮内で行使されている魔法ならば、難なく感知できると言ったばかりだが。お前達の低い魔法感知能力と私達の魔法感知能力を一緒にするな」


 こちらの言葉を何一つまともに聞いていないガルドレア公爵を、エドワードが冷笑し切り捨てる。


 彼は致命的なことを暴露しているが、それに気付いてなどいない。


 それにくすりと笑うと、リリアンナもエドワードに続いた。


「ええ、本当に失礼な方々ですわね。夫人を除くガルドレア公爵家の皆様の魔法力は、フォレストの男爵家と同じ程度、ベントス伯爵令嬢など平民の平均的な魔法力しか有りませんもの。そんな方々が私達の魔法感知能力を自らと同列に扱うなど、身の程知らずもいいところですわね」

「何だとっ! 貴様無礼がすぎるぞ!!」


 相変わらず自分達の置かれた状況を理解できないガルドレア公爵達は、リリアンナを激しく罵り始める。


 だがリリアンナは彼らを嘲笑してはいるが、言っていることは何も間違ってはいない。


 そしてこの状況を看過できないエドワードは、室内が凍り付いたと錯覚するほどの冷気を、彼らに対し放ち始めた。


「無礼なのはお前達の方だ。お前達にできないからと言って、私達もそうだと思うな。それに、リリアンナはこの大陸最強と称しても過言ではない優秀で強力な魔法士だ。それを考えれば、お前達にできないことを簡単にやってのけるのも当然のことだろう」

「そんなのはただの過大評価だ! こんな小娘にそんな力がある訳がない!!」


 その途端、リリアンナの背後からも強烈な冷気が漂い始める。


 リリアンナを溺愛するアルフレッドと崇拝するイリーナが、今にも凍結させそうな勢いで、ガルドレア公爵達に冷え切った視線を突き刺していた。


 それを感じ取ったリリアンナは逆に冷静になり、三人とも頭に血が上りすぎではと頭が痛くなる。


 それと同時にレイチェル達の魔法の気配が消え、それから間もなくしてミハイルの方の魔法の気配も消えた。


「どうやら終わったようですね」

「…ああ、レイチェル達が魔法を使うのをやめたようだな。あの子達なら入り込んだ鼠程度、簡単に捕まえられるだろう。寧ろやり過ぎではないかな?」

「部屋を破壊するような魔法は使っていないようですから、まあ許容範囲内かと」

「そうだね。鼠だけが相手なら問題ないか」

「ミハイル王太子殿下の方も終わったようですね」

「そちらも問題なく終わったようだね。あちらも大したことはない相手のようだから当然のことか」


 リリアンナとエドワードはガルドレア公爵達を見据えながら、簡潔に分かりやすく状況を伝える。


 だがこれでも自分達の不利な状況を理解できない彼らは、二人の言葉を鼻で笑っていた。


 ガルドレア公爵達が改めてリリアンナ達を罵倒しようと口を開きかけると、丁度そのタイミングで扉をノックする音が聞こえてくる。


 それが誰なのかを理解したリリアンナ達は、そろそろ決着をつけるかと不敵な笑みを浮かべた。

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