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ありがとう

 しばらくの沈黙の後やっと雄大が口を開いた。

「その話が本当だったとして、どうして戻らないといけないのかな?何だったら今の話の記憶を消してもらって、今まで通りに過ごせばいいじゃないか」彼は今にも泣きそうな顔だ。


「それはだめなんです。これ以上歴史を歪めるのはまずいと、マザーAIから帰還命令が出たんです」


「どう歪めるのがまずいのか聞かせてよ。なんか納得できない」そう言った章の方を桜は見つめる。そうして隣にいた環奈にも目をやってからこう話した。

「将来環奈は田辺君と結ばれるんです。田辺君は私に好意を抱いてはいけないんです」桜の意外な発言に三人はまた絶句してしまった。


「環奈と結ばれるのは俺じゃないのか!?」章が叫んだ。


 桜は今度は章の方を向いて話す。

「でも松代君は二人を変わらず見守り続けるんです。自分の遺伝子を残したいという生物としての本能に関係のない複雑な感情の動きが、新たなAIアルゴリズムの決定的ヒントになったらしいんです。でも伝記を読んでもどうにも腑に落ちなくて、どうしても実際に三人の行動を覗いてみたくなったんです」桜が答える。


「そんな個人的な興味で時間跳躍までして私たちの前に現れたって言うんだ…確かに偏ってるね。そうか、友達だと思っていたのは私たちの娘、いや孫だったのか…」そう言った環奈の瞳からは一筋の涙がこぼれていた。


「こんなはずじゃなかったんです…どうも私の記憶操作にみんなに好きになってもらいたいという偏りがあったみたいです。もうお別れです」そう言って桜は振り返り、三人には背を向けて数歩歩いた。


 少し距離を置いたところでまた三人の方を向いて、最後に別れの言葉を告げた。


「ごめんね。ありがとう。さようなら」


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