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章と環奈

 雄大と桜が挨拶を交わしてから1時間半後、マンション前には章と環奈の姿があった。二人が通う公立高校は桜や雄大の通う高校に比べれば近いし、部活をしていない二人はこの時間に出ても余裕を持って授業に間に合うのだ。


「章はさぁ、もう絶対に走らないの?中学校では県大会で優勝するぐらいだったのに勿体なくない?」


「いいんだよ。もう陸上はやり切った。高校に入ったら勉強一筋と決めていたんだ」


「それって私の真似じゃないの?」環奈はくすくすと笑う。


 章は中学時代は環奈と同じく陸上部に所属して、彼女が言った通りなかなかの成績を残した。しかし彼が陸上部に入ったのは、あくまで環奈と同じ時間を過ごしたいと思っただけで、陸上自体には何の興味もなかった。成績を残せたのはたまたま運動神経が良かっただけだ。高校に入って環奈が特定の部活はせずに勉強に打ち込むつもりだと知って、自分もそれに続いたのだ。そうでなければ一緒に登下校もできなかったろう。


「なんだよ真似って、環奈は理系希望だろ?残念ながら俺は数学以外の理系科目は全然だめだからな。環奈と同じ大学とはいきそうにない…」章はそう言うと少し暗い顔をした。つられて環奈も少し寂しそうな顔をする。


 本当は章は環奈と同じ大学の同じ学部に進学したかった。しかし彼女はコンピューター分野で中学時代から類まれなる才能を発揮していて、高校に入って猛勉強しているのも、日本でその分野の最高峰と言われる東京IT大学に進学を希望している為だった。章も懸命に理系科目を勉強し、特に数学だけは得意科目と言える程になったが、それすら環奈の学力には到底及ばなかった。


 そこで彼は一計を案じた。無理をして同じ道に進んでも、どうせ就職先は別々になるだろう。であれば経済や経営を学んで、大学在学中にIT系のベンチャー企業を立ち上げて環奈をそこに引き込んでしまえばいい。そうすれば大学どころか一生彼女の傍らに立って見守る事ができる。そう、章にとっての勉学一筋とは大学の受験勉強だけでなく、経営に関しての物でもあるのだ。


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