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第2話 章と雄大と環奈と桜

 田辺雄大と松代章は同じマンションに住んでいて、学年も一緒の幼馴染であるが、他にもそのマンションにはもう二人同学年で仲のいい人間がいた。そちらは性別が違っていて女の子だった。名前は目黒桜と佐藤環奈。中学まで四人は同じ公立の中学校に通っていた。高校は章と環奈は同じ県立高校に進学したが、雄大と桜は私立に進んでバラバラになってしまった。


 もちろん廊下や近所で顔を合わせれば、今でも挨拶をするし雑談もするのだが、みんなが一緒に過ごす時間というのは、今ではほぼ無くなってしまった。そうして疎遠になってみて、初めて雄大は自分が異性として桜に惹かれている事に気が付いた。それに気が付いてしまうと、四六時中桜が何をしているのかが気になってしまう。遂にはいけないと思いつつも、桜の部屋の明かりが見えるこのビルの屋上に来てしまったというわけだ。まさかそこに章もいるとは思わなかった。


「お前らは同じ学校に通って、付き合ってるんだからこんなストーカーみたいな真似をする必要無いだろう?」雄大は章に言った。


「付き合ってる?誰と誰が?まさか俺と環奈の事か?」


「違うのか?お前ら同じ高校だしいつも一緒にいるじゃないか」


「そりゃ同じマンションに住んでいて同じ学校に通ってるんだからな。でももし俺が環奈の事が好きだとして…小さい頃からずっと一緒に育ってきて、今更告白めいた事なんかできるわけないだろう」


「え?お前ら付き合ってなかったのか?」


 雄大が驚くのも無理はなかった。彼は部活があるので家を出る時間は普通より早いし帰りも遅い。なので他の三人と顔を合わせることはあまり無い。それでも部活の無い日には、章と環奈が仲良く一緒に登下校している場面を見かける事はあった。昔から環奈が章に対して恋愛感情を抱いていることも知っている。てっきり高校に入ってから付き合いだしたものだと、なぜだかずっと思いこんでいた。


 章は何か考え込んでいる。そうしてこう言った。

「…という事はお前は環奈の部屋を見に来たわけじゃないよな?…もしかして桜なのか?」


「…ああ、高校が別々になって話す機会もめっきり減ってしまった。そうして自分の気持ちに気が付いたんだ。ここから彼女の部屋の明かりだけでも見れたらいいなと、そう思ったんだ」実は背中に背負ったリュックの中には双眼鏡も入っているのだが、それは伏せておいた方が良いだろうと雄大は思った。


「良かった。もしお前が環奈にストーカーの様な事をしようと考えていたのなら。俺はここでお前とやり合わなければいけなかったろう…」そう言って章はマンションの方を振り向くと手すりの方に歩いて行った。そこには三脚と小型カメラが置いてあった。カメラには大振りな望遠レンズが装着されている。


 双眼鏡を持ってきた自分にそんな事を言う資格がないことはわかりつつも、雄大は驚いて声をあげた。

「お前それって本当のストーカーじゃないか!」

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