エピローグ
高校を卒業した春休み、三人は近所のファミレスに集まっていた。
「しかし本当に環奈が東京IT大学受かるとはな…東大より難しいんだよな」雄大が言った。
「なんか途中からがぜんやる気が出ちゃってね。絶対私の作ったAIで世界を変えてやるんだ」環奈の鼻息は荒い。
「俺は大学在学中にベンチャーを立ち上げるよ。環奈も早いところAIの開発費に投資を集められるぐらいには基礎を固めておいてくれ」章は名門私立大学の経済学部への進学が決まっていた。
「…最後に桜泣いてたな」雄大が言った。
「ああ、ヒューマノイドも泣くんだな」章はそう返す。
「全然記憶消せてないよね。個人的な感情でも入ったのかしら?とんだポンコツだわ……もう間違いなく人間だね」環奈が笑う。
「早いところ桜が生まれてくるように頑張ろうな。でも俺はAI開発にどう関わるんだろう?そこがよく分からない」雄大が言う。彼は他の二人とは進路が全く違う。大学もスポーツ推薦で進学した。
「桜がなんで帰らないといけなくなったのか…なんかもうひとつ凄いこと言ってたような気がするけど、そこは思い出せないのよね」そう言ったあと環奈は窓から外を眺める。つられて章と雄大も同じ方を見た。
隣の公園では桜が満開に咲いていた。時折吹く風が花びらをまき散らして、辺り一面は桜色の絨毯に覆われていた。
<了>