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第1話 雄大と章 

 そのビルはセキュリティが甘かった。古いビルであれば、メインの出入口にオートロックがついていないというのは珍しくは無いが、このビルは中に入れるだけでなく階段から屋上への出入口のドアも施錠されていない。


 一応屋上には落下防止の手すりは設置されているが、ビルの関係者が外に出て転落事故でも起こしたら誰の責任になるんだろう?大体にして不審者が入り放題というのは問題があるだろう。自分自身が不審者であるのにもかかわらず、雄大は階段を登りながらそんな事を考えていた。


 ビルは五階建てなので、屋上に出るには六階分の階段を登ることになる。しかし高校生であり、部活も体育会系の雄大にはなんという事も無い。息切れもせずにすぐに登り切ってしまった。事前に確認したとおり、外へと続く扉には鍵がかかっていなかった。雄大は扉を開けながら、違う意味で胸がドキドキしていた。


 扉を開けて外に出ると照明もなく真っ暗であった。今は夜なのだからそれは当たり前だ。しかし地上の光も少しは届いているし、まわりのもっと高い建物の外部通路などについた照明の明かりもあって、何も見えないという程でもない。ただ足元には何やら配管の様な物があるので、手にした懐中電灯を点けようとしたところで、他に人間の気配がある事に気が付いた。


『まずい!!』雄大は頭の中でそう叫んだ。慌てて逃げて引き返してもいいが、よくよく考えれば自由に出入りできるビルの屋上なので、関係者の振りをして夜風に当たりにでも来たとでも言えば、それはそれほど不自然ではないだろう。頭の中でそんな葛藤をしているうちに、気配のした方から声がした。


「なんだよ雄大じゃないか。こんな時間にこんなところで何してるんだ?」そう声をかけられて、その人物の顔をよくよく見ればそれは同じマンションに住む松代章だった。


 意外なところで意外な人物と会ったものだ。雄大は章とは学年も一緒でずっと学校も一緒だった。幼馴染と言ってもいい。

「章こそこんな時間にこんなところで何やってるんだ?」雄大の方からそう聞き返したが章は何も答えない。


「お前まさか…」雄大にはピンと来てしまった。それはもしかしたら自分と同じ目的なのかもしれない。そうこのビルの屋上からは雄大と章の住んでいるマンションが良く見えるのだ。しかも表のLDKとベランダに面した方ではない、廊下側の個室の方である。


 二人の住むマンションの造りは、よくある外廊下沿いにずらりと部屋が並んでいるタイプではなく、二住戸が階段とエレベーターを挟んで配置されていて。その固まりがいくつも横に並んでいるタイプだ。階段横の個室の窓はこのビルからよく見える。


「どうも俺と同じ目的みたいだな」雄大は章にそう言った。


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