14話 暗躍する王子
王都の喧騒が静まり始めた時刻、高い建物の屋根の上に、黒い影があった。
人数は三人で、中心の一人の男の脇で、二人が膝を突き頭を下げている。
「奴ら、ドミトル王国を示す物を、服の中に忍ばせていた」
「でしたら、やはりシルドニアとドミトルの戦争を誘発させようと?」
「じゃあ、戦争が始まってメリットがある国が雇ったって事かよ?」
「サンっ! 主様にタメ語は止めろ!」
「別に良いじゃねーのムーン。主様は良いって言ってんだからさ」
「馬鹿めっ! それは主様の心が宇宙よりも広いからであって・・・」
「ムーン」
主と呼ばれた男が名前を呼ぶと、ムーンと言う女性は慌てて頭を下げる。
「も・・・申し訳ありません主様。出過ぎた・・・」
「いや、ムーン、これをやろう」
そう言うと、主は腰から剣を鞘ごと引き抜く。
「ありがとうございますっ!」
まだ差し出していなかったのに、見えない速度で主の手から剣を奪い取ったムーンは、まるで我が子を抱くかのように剣を抱き、くんかくんかと匂いを嗅いだ。
その様子にドン引きしながらも、サンは口を尖らせる。
「ずっりぃなぁ。ムーン、お前 二本目だろ?」
「うっさい! 主様が私にくださったのだっ! くんくん」
「くださったって、前の剣は、主様が『どちらかに』って言って出した瞬間に、お前が強奪したんだろ!」
「私の主様コレクションに手を出すと・・・・・・、本気で殺すよ」
ムーンがそこまで言うと、主が口を開く。
「ムーン、以前の剣は、サンにあげるんだ。あれは、サンの方が適性を持っている」
「はいっ! 受け取れ、サン!」
間髪入れずにムーンは腰から剣を抜き、サンに渡した。その素早さに、またサンはドン引きする。
「ったく。まあこれで、俺も魔剣持ちだな。この愛剣も、これでお役御免って訳か」
サンは腰の剣を入れ替える。お役御免と言う剣は、かなり傷だらけの年季の入った騎士剣だった。
ムーンは、剣を抱いたまま主に尋ねる。
「主様、今回 私が頂いた剣も、もしかして・・・・・・」
「ああ。魔剣だ。持ち主の男は、魔剣って事にも気が付いていなかったが、お前ならすぐに使いこなせるようになるだろう。ただ、鍔と柄を作り変えておいてくれ」
「はいっ! 嗅ぎ倒してから・・・・・・いえっ、後日かならずっ!」
キラキラとした目をするムーンに、付き合いきれないなと、サンはため息を付く。
「ところでムーン」
「はいっ!」
一呼吸置いた後、主は尋ねる。
「好きな料理はなんだ?」
「えっ?」
顔を赤らめた後、ムーンは答える。
「トーストに、生クリームと蜂蜜をかけたものですっ! 王都の美味しいお店を知っていますので、是非主様もご一緒に・・・・・・」
「どさくさに紛れてデートに誘ってんじゃねーぞ」
サンの突っ込みに、ムーンは殺気のこもった視線を飛ばす。
だが、主は何も言わず、何かを考えているようだった。
「・・・・・・以上だ。次の指示を待て」
「はっ!」
「了解っす!」
サンとムーンの姿は消えた。
残った男は、黒色の仮面を外した。男の美しい顔が、月光に照らされた。
「『俺達は』・・・・・・か、なるほど、やはりそうか・・・・・・」
いつの間にか、男の髪が伸びていた。長い黒髪が、風で舞い踊る。
「複数の勢力が・・・・・・人間領で蠢いている」
黒衣の男は、闇に溶け込むようにして消えた。
今回はここまで!
次回をお楽しみに!




