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12話 追いはぎ王子




 アリスは、左手で持った剣を引きずりながら、階段を下りた。


 一階の扉を開くと、外は僅かなかがり火があるだけなので暗い。だが、何やらごそごそと、物音が聞こえた。


 アリスが足音を消してそちらへ近づくと、そこには、倒れた盗賊の体を物色する・・・・・・ジムがいた。


「あなた、何をしているの?」


「ひっひゃっはぁぁぁ!」


 体を震わせて驚いたジムだったが、アリスを見てほっとする。


「なんだおま・・・、なんだアリス様かよ。ちょっとほら・・・・・・良い物 持ってないかなって・・・・・・」


「仮にも同じ王族が、なんと情けない・・・・・・」


 アリスは周囲を見回す。盗賊の一味と思われる男達が、何人も倒れていた。


「これ・・・・・・あなたが倒したの?」


「ひゃは? 俺?」


 ジムも立ち上がって周囲を見回す。ジムはいつの間にか、付近に生えている雑草で腰ミノだけは作って身に付けたようだった。


「お・・・・・・、そ・・・そうだぞっ! 皆、俺が倒したんだ! だから、必要経費として、財布とかを多少貰っても良いって訳よ!」


 ジムは持っていた剣を抜いて見せた。それをブンブンと振って、にやりと笑っている。


「・・・・・・そんなナマクラで、この傷がつけられるはずがないでしょ」


 アリスは首を横に振った。


盗賊達は、全員が見事な一撃で、息の根を止められていた。


「えっ! これ安モンなのかっ? まあ、所詮盗賊のだもんな・・・・・・」


 ジムはため息をつき、剣を投げ捨てた。そして間を置かずに、目ざとくアリスの持っている剣に気が付く。


「ん? なんかその剣、高級っぽくねぇ?」


「えっ? まあ、これは盗賊のリーダーが持っていた剣だから・・・・・・」


「それくれ! 盗賊の財布だけじゃ、新しい制服が買えそうにないんだっ!」


 腰ミノだけの半裸で両手を差し出し、ジムは寄って来る。そのあつかましさに、アリスは剣を振り上げる。


 だが・・・・・・、


「いっつつ・・・・・・痛った・・・・・・い・・・・・・」


 アリスは剣を落とした。痛めた右手首のせいで、力が入らなかった。


「おっ! なんだ? 怪我しているのか? そんなお客様に朗報です! 今ならこの高級回復薬(ポーション)が、なんと中古の剣と交換で手に入ります!」


 ジムが瓶に入った回復薬(ポーション)を差し出してきた。色からして、どう見ても低級品質の回復薬(ポーション)だった。恐らく盗賊の誰かの懐から盗んだものだろうと予想された。


「貸しなさい!」

「毎度ありぃ~」


 アリスは回復薬(ポーション)を手首に振りかけた。痛みが徐々に引いていく。その目の前で、どや顔したジムが、剣を拾って大切そうに抱える。


「そんな剣より、もっと良い剣をあなたは持っていたでしょ?」


「あれは、国宝だからさすがに売れないだろ? こっちの剣は、売ってキャバ屋代にするんだよ!」


「新しい制服は?」


「も・・・もちろんそれも買うよ! この格好じゃ、さすがになぁ?」


 ジムは、腰を左右に振って、腰ミノを揺らして見せた。


 その下品な様子に、アリスは苛立ったようにジムに言う。


「剣よりも、盗賊達の皮鎧を剥いで、身に付けなさい!」


「え~、肌に直接 鎧なんてつけたら、肌荒れしちゃうだろ?」


「じゃあ、下のシャツとか、ズボンとかも剥ぎなさい!」


「俺が潔癖症っての知らねぇのぉ? あんないつ洗ったのかもわかんねー下履き、着れるはずねーだろ」


「あなた・・・・・・王女の前で半裸になる罪の重さ・・・・・・分かって無いようですね・・・・・・」


 どんなに言ってもジムは折れる様子が無いので、アリスは首を横に振って諦めた。


「結局、この男達は、ただの盗賊だったのでしょうか?」


「と、言うと?」


「なにか・・・・・・、絶対に身代金を奪ってやると言うような、覇気が感じられませんでしたわ。他に狙いがあったとか?」


「はん? 金以外の目的って、自分がそんな豊満ボディだと思ってるわけぇ?」


「そんな事を言ってるんじゃありませんっ!」


 アリスはジムにローキックを放った。


「・・・・・・まあいいですわ。頭目の男も手掛かりになるような物は何も持って無かったですし、後は騎士団に背後関係を調査させます。とりあえず、帰りたいですけど・・・・・・」


 アリスは、暗い森を見る。かがり火から松明を作り、森の中を無理に進む事は出来るが、明るくなるのを待った方が得策だと思えた。しかも、今までいた建物は、どうやら今は使われていない古い砦で、防衛に向いている。


オオーン 


 遠くで、何かの遠吠えが聞こえて来た。


「おいアリス様、ここにいると、死体を狙った魔獣が寄って来るぞ」


 ジムが、剣を不格好に構え、周囲をきょろきょろとする。


「・・・・・・砦の中に戻りましょう。空き部屋で、朝を待ちます」


「ひゃっはっは。そうこないとな!」


 ジムはにやりとし、剣を鞘に戻して砦の扉へと向かう。


「アリス様ぁ、二階と三階 どっちにしますぅ?」


「好きにしなさいっ! 一緒の部屋な訳が無いでしょ!」


 アリスは、ジムを用心するために、近くの盗賊から剣をはぎ取った。


「痛っ・・・・・・」


 アリスは手首に痛みが走り、顔をしかめる。まだ重い物を持つ程には回復していなかった。


「アリス様ぁ、回復薬は魔法みたいに即効性がある訳じゃないんだから無理するなって! 俺がいるだろぅ? 武器を持たなくても安心だって!」


「あなたがいるから、剣が必要なのです!」


 ジムに続き、アリスも砦の中へと入った。


 砦の外では、かがり火が点々と置かれているが、その中の一つが、パチパチと火の粉を多く飛ばしていた。




次話は 本日20時投稿です。

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