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11話 雑草収集王子


「こ・・・黒衣の男・・・・・・」


 アリスが呟くと、頭目は眉をひそめて繰り返す。


「黒衣の男?」


 黒衣の男は、アリスの手から離れた剣を、床から拾い上げた。


「そう名乗った訳では無いが・・・・・・、まあ、好きに呼べば良い」


 黒衣の男は、剣を片手で無造作に構え、剣先を頭目に向ける。


 頭目も、剣先をアリスから黒衣の男へ変えた。


「普通じゃ・・・無いな。技量の割に、魔力が一切感じられないのも、また不気味だ」


 頭目は、油断する様子が一切無かった。


 アリスは、頭目の言葉に、ある男を思い出す。


「魔力が一切・・・・・・無いって・・・・・・」


 魔力が無いと言えば、ジムだ。まさかジムが黒衣の男なのかとアリスは一瞬思ったが、どうにも体格が違う。身長は同じくらいだが、ガリガリのジムに対して、黒衣の男は中肉だ。おまけに、ジムは長髪だが、黒衣の男の髪はジムよりもずっと短く普通程度だ。


決定的なのは、ジムは全裸で攫われたのだから、黒衣をどこかに隠し持っているような事は絶対に不可能だ。


「最初から全力でいかせてもらおう。・・・・・・肉体強化!」


 頭目は、アリス相手には肉体強化の魔術を使っていなかったようだった。



ちなみにだが、肉体強化の魔術や、剣技などのスキルは、内魔力を使うので、魔石無しでも使用可能だ。炎や氷を出すような魔法は、内魔力に加え外魔力(魔素)も使わないといけないので、触媒となる魔石が必要になる。


アリスのような魔法剣士は、武器に魔石を埋め込み戦うのだが、残念ながらアリスは戦闘中に魔法を使える域にはまだ達していない。それ程、斬り合いをしながら集中力が必要な魔法を行使する事は難しいのだ。



ガキンッ


 広間が暗いせいか、頭目が瞬間移動したようにアリスには見えた。だが、黒衣の男は、片手で持った細身のロングソードで、両手で持った男のブロードソードを弾き返していた。


「こいつ・・・・・・どういうことだっ!?」


 頭目はすぐに姿勢を正すが、困惑しているようだった。


 アリスにも分かった。黒衣の男は今になっても魔力が感じられない。つまり、肉体強化の魔法を使っている様子が無いのに、人外の力を出しているのだ。実力を悟られないように戦う前だけ隠していると思っていた頭目とアリスだが、まったく違った。


「魔族か・・・・・・? いや、魔族とて、魔法の論理には逆らえないはずだ・・・・・・」


 魔族なら角があるはずなのだが、黒衣の男にはそれも無かった。顔にマスクはしているが、黒い髪を覆う物は一切ない。


「まあ・・・・・・良い。何か俺の知らない魔法体系なのだろう。そうだと仮定すれば・・・・・・」


 頭目が斬りかかる。力を溜めた渾身の一振りを、黒衣の男は体を仰け反らせて躱した。


「まだまだっ!」


ヒュンッ ヒュンッ ガキンッ ヒュンッ ヒュンッ ガキンッ


 黒衣の男は、頭目の剣を軽々と躱し、時には刃先を合わせてずらし、頭目が繰り出す剣の雨の中を悠々と過ごしている。そして、まるで遊んでいるかのように剣で時折頭目の体を撫で、皮鎧と服を切り裂いていく。


「くっ・・・・・・」

 

ビシュッ


 頭目は黒衣の男と距離を取った。


ドサッ


黒衣の男の最後の一振りで、頭目の胸当てはベルトを斬られて床に落ちた。


「動くな!」


 頭目が大声を出した。頭目の剣は、すぐ後ろで地面にへたり込んでいたアリスに向けられた。


「剣を捨てろ!」


「・・・・・・らしくないな?」


 黒衣の男は、剣を持つ腕を下げた。


「悪いが、騎士をやってた時ほど、誇りがある訳じゃないんでね」


 頭目の剣がアリスの首に当てられると、黒衣の男は剣を横に放り投げた。


「そのまま、こっちへ来い」


 頭目の剣先が、アリスの首に食い込んだ。一筋の血が流れ落ちる。


 黒衣の男が、頭目の剣の間合いに入った。にやりと笑う頭目に、黒衣の男は問う。


「一つ聞かせてくれ。誰に雇われたんだ?」


「・・・・・・まあ良いだろう。俺達は、(じん)()国だ」


「・・・・・・・・・・・・」


 黒衣の男は何も答えなかった。


 観念したのだろうと考えた頭目は、剣を振り上げる。


「死ねっ! 剣技 両断!」


ガシュッ


 頭目の剣は、袈裟懸けに、黒衣の男の左の肩口から入り、腰の右まで切り裂いた。


 仰け反って倒れるかに思えた黒衣の男だったが、左手を、剣を振り切った頭目の両手の上に置いた。


「なにっ?」


 頭目は剣を振り上げようとするが、黒衣の男の手によって微塵も動かせない。


「もう十分だ。理解した」


 黒衣の男はそう言うと、右の掌を頭目の胸に当てた。


その時に頭目は気が付いた。自分が繰り出した必殺の一撃を食らったと言うのに、黒衣の男の服は、まったく斬られた形跡が無かった。


ドスッ


「ぐ・・・ぼっ・・・・・・」


 頭目は口から血を吐いた。胸に、焼けるような痛みがあった。

 

後ろで見ていたアリスは唖然とした。頭目の背からは、漆黒の片刃の剣が突き出ていた。


ズシュッ


 黒剣が抜かれると、頭目は膝から崩れるように地面にぐしゃりと倒れた。


「どこから剣が・・・・・・?」


 呟くアリスの前で、黒衣の男は黒剣を一度ぶんと振り、腰に戻した。いつの間にか、黒い鞘もあった。確実に、先ほどは無かったはずだった。


「あなたは一体・・・・・・? まさかお父様に雇われたの・・・・・・? えっ! あれっ!?」


 ほんの一瞬だった。アリスの前にいたはずの黒衣の男が、忽然と姿を消していた。まるで、アリスがした瞬きの間に合わせたように・・・・・・。




次話は 本日17時投稿です。

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