確か、花火を綺麗とも言っていた
私が嫌いなあの人は
私と同じ感性を持っていた
中也の骨、詩を初めて人と語り
私はあの時、私がわからなかった
たぶんヒトラーにだって、
夕陽を見つめて黄昏た日もあったと思う
だからと言って夕陽を嫌いにはならない
それと同じ、そんな言葉を巡らせていた
どこかの祭りから、帰ってきた人々に
紛れ込んでいる夏の暮れ
駅員からの誘導に従いながら
私もどこか、帰ってきた人を演じている
観てもいない、知らない花火を
綺麗だったという感情の中にポツンと居て
飲み込まれて一つになる
また一つ、私は溶けて混ざった
私の嫌いなあの人は
確か、映画を観て泣いてもいた
心を揺らして輪郭が歪んで、
私は、私を嫌いになることが出来なかった