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手に入らないもの

 ニラダより母がどんな人だったかを教えて欲しいと言われたガンディーはニラダについでに父親についても話してやると言い放つが、その前にニラダにこの件に関する事を尋ねる。


「話す前に聞くがよ、ドットにはお前の両親の事についてどこまで聞いているんだ?」

「ああ、母さんは元々ギルドの受付で、父さんは両親が、つまり俺の祖父祖母の用意した縁談で会った男だとは聞いているけど」

「ドットも肝心な部分は伏せたか、俺への気遣いか、それともお前が冒険者として変なプレッシャーを感じないかを気にしたかだな」

「その言い方、まるで俺の父親は冒険者みたいな言い方だね」


 ニラダはガンディーの話し方から自分の父親は冒険者ではないかと感じ、言葉にするが、その事を認めるも更にガンディーは発言を続ける。


「ああ、お前の親父は冒険者だった、まあ慌てるなお前の希望でまずは母親の事から話してやる」

「うん、それで母さんはどんな人だったのかな?」

「お前の母親は、まあ……美人で、その気立ても良くてよ……」

「ちょっと師匠、年甲斐もなく何照れてんだよ、なんか師匠らしくなくて気持ち悪いな」


 ニラダはガンディーが照れながら自分の母について話す様子を見て、少し気持ち悪い事を言うとガンディーは怒りニラダを羽交い絞めにする。


「てめえ!人がせっかく話してやろうってのになんだその言い草は!」

「痛い!痛い!師匠メチャクチャ本気でやってるじゃないか殺す気かよ!」

「はあ……はあ……まったく大人をからかいやがって、そのとにかくお前の母親はいい女だった、この俺にふさわしいくらいにな」

「ここで上から目線かよ、いくら冒険者としてすごくてもそれじゃあ他の人と結婚するのは無理もないよ」


 ニラダがガンディーの上から目線発言に苦言を呈すと少し顔を伏せながら語り始める。


「……はん、俺の場合はそれ以前の問題だったよ……」

「え?」

「……ニラダ、考えてもみろ、いくら両親の用意した縁談だからって、この俺がそんな事だけであきらめると思うか?……」

「それってどういう意味?」

「もしもだ、もしも本当に単なる縁談の紹介で両親が決めたからって理由だけで彼女が受けようとしたら、俺は当時の地位や立場、力を駆使してでも彼女をものにしようとしていただろう、俺は欲しいものは手に入れなきゃ気のすまねえ性分なのはお前も知っているだろう」

「……じゃあ、母さんは本気で父さんを……」

「……ああ、この俺が入るスキがねえくらいにな……あの時が初めてだ俺に手の入らねえものがあるって思い知ったのは……」


 師匠が初めて感じた打ちひしがれた思い、それをニラダは複雑な気持ちで聞いていた。

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