ドットとゲンの鍛冶
ニラダはゲンの弟子であるカールに自分が冒険者として歩み続けられるのは仲間達がいるからだと話し、その思いを更に話し続ける。
「彼らにも彼らで冒険者になった理由はあり、目標もあります。それでも俺の目標と重なる部分があるから一緒に歩んでくれることが自分にとって冒険者を続け目標を追える力になっているんだと思います」
「なるほど、いや実は親方とのやり取りを聞いていたら、あなたは武器は必要だと言いましたけど、その時もドットさんの話をしてましたね」
「え?まあ、ゲンさんはドットおじさんの名前を出したら怒ってましたし、逆効果だったかもしれませんが」
「ですが、他の皆さんがあなたと共に歩んでいきたい理由も見えてきました。あなたがドットさんの思いも背負っている事、ドットさんのお兄さんであるお師匠さんに会いたい思いが強いのはそれもあるかもしれませんね」
カールの発言の内容の一部分に違和感を覚えたのでニラダは思わず尋ねた。
「え?待ってください、俺の師匠がドットおじさんのお兄さんって話しましたっけ?」
「あれ?う、ううん、私も話してないよ、じゃあどうしてカールさんが知っているんですか?」
「親方から聞いた事があるんですよ、ドットさんのお兄さんがあのSランク冒険者のガンディー氏だという事を」
「意外ですね、ゲンさんはドットさんの事はすでに嫌っていて、そんな事に関心があるとは思わなかったから」
ティアはゲンがドットの事をすでに嫌っていて、ドットの家族関係には関心がないと思っていたが、ここでカールからゲンがドットの話をしていた事が語られる。
「これ話したら怒られるんですけど、結局親方もドットさんに嫉妬していたんですよ」
「お父さんに気に入られたからですか?」
「はは、へたくそとは言っていたんですが、親方は『あいつほどの鍛冶師もなかなかいない』って言うくらいにはすごいと思っていたんですよ」
「そうだったんですか」
「確かにアビジンやオリハルコンといった特別な金属の扱いは血筋も関係していて親方の方が上手かったかもしれませんが、冒険者個人個人に合わせた物を作るのはドットさんの方が上手かったそうですよ」
「はい、私もそう思います」
「そうよね、武器も防具も私達が扱いやすいように市販のものと比較すると微妙な調整もしっかりしているし」
「……そしてその事が親方の冒険者嫌いを加速させたんですよね」
ドットの微妙な鍛冶での調整能力はミヨモ達も高く評価する部分だが、その事もありゲンは冒険者嫌いを加速させたというのだ。