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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
三章 どうも不滅王殺しのヨハンです
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3話 オーク掃討戦その2 竜刃




 前衛二人の釣り作戦でオークを誘い込むことにした、我らブルークレア隊。


 ラウルとネイ氏が円盾(ラウンドシールド)片手に、先頭を歩くオークに突撃(アタック)を掛ける。


 その距離およそ五十メートル。


 ルナ氏とケイシーは木の上で様子を伺い、俺とローズリリイは剣を抜き地上で迎撃態勢を整える。


 俺は右手に魔剣グランドリッパーを握りしめ、ほんの僅か魔力を込めた。


 すると細身の刀身の腹に刻まれた古代文字が、うっすらと輝き始めるではないか。


 おお、さすがは魔剣。ただ単に俺の厨二心をくすぐる物だけではないようだ。そのエフェクトも良き。


 そんなことを考えていると、ラウルとネイ氏が先頭のオークと接触する。



「「――盾打(シールドバッシュ)!!」」



 声を揃えて同じ武技(アーツ)を繰り出すという相性の良さ。まったく羨ましいかぎり。


 オークは「ブヒィ」という鳴き声を上げると、そのまま後に続く仲間のところまで吹き飛ばされた。

 

 初撃を叩き込んだ二人は、すぐさま踵を返してその場より撤退。俺たちの方へと戻ってくる。


 そんな二人について行くかのように、武装したオークがこちらに向かって走り始めた。


 不快な鳴き声を上げながら追撃してくるオーク。


 しかし、そのスピードはひどく遅い。


 そんな愚鈍なオークに合わせた速度で、上手に相手を引き付けてくれるラウルとネイ氏。


 まさに注文通り、頼りになるわ。


 俺が片手を上げて合図をすると、木の上にいるケイシーが詠唱を始め、ルナ氏が弓を構えた。


 そしてラウルたちが俺とローズリリイが身を潜めた林を通りすぎると、そこでくるりと反転する。


「来ます!」


 ラウルが吠える!


 前衛二人はそのまま円盾を構えてオークの迎撃準備。


 オークたちは手斧(ハンドアックス)を振り上げ、襲ってくるが……。


「――遅い!」


 先頭を走ってきたオークの首を、林から飛び出したローズリリイがスパンッと刎ねる!


 さすがローズリリイ、一撃かよ。


 頭のなくなったオークの身体が、地面にズシンッと力なく横たわる。


 そして続くオークは俺が斬り伏せた!


 袈裟斬り気味に斬撃を放ったのだが、その威力は鎧ごとオークの身体を真っ二つにするというもの。俺の斬撃を喰らったオークの身体が斜めにずり落ちる。


 つーかさ……。


 魔剣の斬れ味がおかしい!!


 身体強化も使ってないのにこの威力。鎧を着込んだ肉厚のオークの身体がまるでバター。


 完全なオーバーキル。


 逆に斬れ過ぎて怖いんだけど? 妖刀か?


 するとそれを見ていたローズリリイが。


「へぇー、良い剣ね! でも武器の性能に頼っているだけじゃあ良い剣士とは言えないわよ?」


 と、随分余裕に語ってくれる。


 もしかしてこの剣に嫉妬してるのだろうか? 


 いや、違うな……。


 あの狂犬は承認欲求の塊だ。恐らくオークを上手に倒した自分のことを俺に褒めて欲しいのだ。


 心の中でブンブン尻尾を振っていたのに、俺がオークをオーバーキルするもんだから拗ねただけ。


 ツンデレお嬢様面倒くせえな。


「リリイさんに比べたら自分なんてまだまだ未熟者ですから武器は大目に見てください。それよりもリリイさん、以前より剣の腕が上がりましたね? 凄く華麗な剣技でしたよ!」

 

「えっ!? そ、そう? わかる? あれからすっごく特訓したのよ!」


 なんだろう? ローズリリイの反応が髪型を変えて褒められた女子のようなそれ。


 童貞には理解不能な心持ちだが、とりあえずヨイショをしておくのが真なるツンデレ愛好家の務めというもの。


「やはりそうでしたか。剣のキレが段違いでした」


「ふふん、でしょ? ヨハンももっと精進するのよ!」


 目に見えてわかる上機嫌。


 もはや褒められることにノーガード。


「ええ、リリイさんをお手本にさせていただきますね」


 そんな俺の言葉がどストライクで効いたみたいで、さらに脳汁がピュッピュッするローズリリイ。


「お、お手本っ!? い、いいわ、そこで私の剣技を良ぉーく見ておきなさい!!」


 そう言って()る気満々になるローズリリイ。


 もうきっと心の中では、尻尾から竜巻が起こるくらい左右に激しく振っているはず。


 これでまた俺の猛獣使いスキルが1上がったぜ。


 そしてローズリリイは剣を構えると、近づいてきたオーク二体目掛けて猛ダッシュ。すれ違い様にその首をスパンスパンとリズム良く刎ねる!


 最後に刃に付着した血糊をヒュッと払い、残身。


 すげぇ、強さのインフレ始まってるのって思うくらいローズリリイが強い。意外と百体くらい難なく倒しそうだ。


 まあ、お願いされてもやらせないけどね。


 そんなローズリリイに負けじと、ラウルとネイ氏も武器を構えてオークの前へと立ち塞がる。


 ラウルはまるで戦いの教科書をなぞるかのように、盾打からの斬撃でそつなくオークを倒す。


 ネイ氏は槌矛(メイス)に闘気を溜め込み、それをオークの腹目掛けて強打。すると槌矛を喰らったオークの腹が、背中から爆散するという中々なスプラッターな現象が起きるではないか。


 おっそろしい武技(アーツ)を覚えたもんだ。ネイ氏は怒らせないようにしよう、そうしよう。


 これでオークの残りは後四体。


 最後尾にいたオークはケイシーの岩槍で身体を貫かれて即死、もう一匹はルナ氏の矢が眉間を貫通(・・)し即死。


 残る二体は俺とローズリリイがサクッと斬り捨て、これにて終了。


 こうして我々は五分も掛らずオーク十体を葬り去った。


 すると一連の流れを見ていたオーキスさんが。


「はっはっはっ、お見事! ほんとにきみたち新人なのか? そこらのシルバー冒険者よりもよっぽど強いぞ?」


 どうやら合格点をいただいたみたい。


「ありがとうございます。たまたま策が上手く嵌まっただけですから」


 オークがゴブリンより遥かに強いといっても動きはノロマだからな。囲まれたりしなければどうとでも対処が出来るというもの。


 無難に立ち回れば次の作戦も問題なくこなせそうだ。


「じゃあ、次は俺の番だな。あまり参考にならんかもしれんが、()を超えた人間がどこまで強くなるのか良く見ておくといい」

 

 おお、オーキスさんビッグマウス!


 でもそれだけ自らの強さに自信を持っている証拠なのだろう。もしかしたら何かしらのスキルを覚えられるかもしれないな。才覚強化を掛けておくか。


 というわけで才覚強化、練度7、発動!



「――いくぞぉ!! リミッター解除、限界突破(・・・・)ぁ!!」



 瞬間。


 オーキスさんの身体から、練り上げられた青白い闘気(オーラ)のようなものが吹き上がる!!


 そのあまりの圧力に、身体全体がビリビリと震えるほど。


 まじかよ……。


 これ、ただの身体強化じゃないな?


 以前。俺が使った練度10でも、ここまでの威圧感はなかったはず……。まさかまだその上のステージがあるとでもいうのだろうか?


 そんなことを考えていると。

 

「さて、諸君! 作戦開始だ。俺の討ち漏らしを頼むぞ? といっても俺から逃げようとするオークだと思うがな、はっはっはー!」


 そうオーキスさんが語ると、背中の大剣を抜刀しながら、そのまま一閃!!


 片刃の大剣から巨大な斬撃が放たれる!!



 ――スドォォォォォォン!!



 オーキスさんが放った斬撃は、俺たちの眼前に映る砦を守る堅固な門を軽く爆散。


 もはや威力がおかしい。


「俺が竜刃(ドラゴンエッジ)と呼ばれた由来を、その目で見ておくと良い」


 そう語ると、オーキスさんが立っていた地面が窪み、その場から文字通り姿が消える(・・・)


 次いで。


 砦の方から聞こえるけたたましい轟音――。


 粉塵が巻き上がると同時に、オーク共の叫び声が一斉に上がった。


 やれやれ、一気にクライマックスかよ。


 こうなると逆にオークが哀れに思えてくる。


 ……っと、いかんいかん。


 見惚れている場合じゃないな。部隊の指示をしなければ。


「皆さん、もう少し砦に近づいて隊列を組み直します! 確実にオークを処理していきましょう」


「「了解!」」


 そうして林を颯爽と駆け抜けて行く、我らブルークレア隊。


 その間にも俺の気配察知から、恐ろしいほどの速さでオークの気配が次々と消えていった。


 というかもうオーキスさん一人でいいのでは?


 そんなことを考えつつも、言われたことはきっちり守る童貞。約束と貞操は守るためにある。


 我々は、粉々に破壊された門からおよそ百メートルくらいの場所へと陣取ることに。


 砦の中はオークの悲鳴で阿鼻叫喚の地獄。


 こんなに離れていても、オーキスさんの威圧感まだを感じるとは……、プラチナランクやばし。


 そんなことを考えている時だった。



 突如、俺のシナプスを駆け巡る無数の電気信号。



 それと同時に得る確信的な何か。


 もうこれはあれっスね。


 ステータスウィンドウを開くとそこには。



 ――威圧 練度【1】  NEW!



 まじで取れちゃったよ、ニュースキル。


 おらおらスキルの金字塔でもある威圧スキル。これはもう間違いなく練度マックスでいいでしょ?


 これで今日から俺も覇気使い。


 なんつって。


 すると大跳躍で砦の遥か上へと飛び出してくるオーキスさん。天高く舞い上がった。


 というか飛び過ぎ! 


 あれ、どーやってんの? 


 次いで、そのまま空中をタッタッタッと駆け抜ける。まるで足元に地面があるかのように。


 よく見ると、その足元が陽炎のようにぐにゃりと湾曲してるのが見て取れる。


 何か力場のようなものがあるようだ。


 それで空を走れるのかぁ……、まじの人外じゃん。


 そんな時だった。


 またしても俺の脳裏にピコーンとした反応が。


 ちらりとステータスウィンドウを見てみると。



 ――歩法スキル



 ――天空闊歩(てんくうかっぽ)   NEW!



 新たなスキル取得の文字が。


 しかし、これだけでは終わらない。


 まるで俺の身体がオーキスさんとリンクしたかのように、さらにスキルの取得は続いていく。



 ――縮地    NEW!



 ――殺気    NEW!



 ――立体機動  NEW!



 ――気功法   NEW!



 ――硬気功   NEW!



 ――気刃    NEW!



 全身を駆け巡るビクンビクンとした強い感覚。まるで、もうらめぇ状態の童貞。

 

 ここにきてスキルの連続取得とか。オーキスさんのあまりに強い存在力のせいだとでも言うのだろうか?


 ただ見ているだけでも、その力の一端を手にすることが出来た。


 オーキスフィーバー万歳!!


 そんな中、破壊された門より命からがら逃げだしてくるオークたち。


 悪いが一匹たりとも逃がす気はない。


「ラウル、ネイさん! 先頭のオークに突撃(アタック)を掛けてください。ルナさん、ケイシーさんはそのフォロー。リリイさんはソロで逃げる個体を優先的に処理してください」


「「了解!」」


 もはや敗残兵と言ってもいいようなオークたち。


 ほとんど大きな抵抗をされることなく、流れ作業の如く処理をして行く。


 そして五十体ほど倒した頃だろうか。


 数が減ったからかオークの悲鳴よりも、オーキスさんの声が砦内に良く響くようになる。


「ヨハン君! もうそろそろ終わりに近い! 砦の中に突入してくれ!」


「わかりました。オーキスさん!」


 そうして砦内に入ると、そこはもう瓦礫の山。


 そこらかしこに大きな爪で抉ったような傷跡が見受けられる。


「すごい……、魔法も使わずこんなことが出来るなんて」


 ラウルが畏怖と感嘆が混ざったような感想を語る。


 まあ、俺も同意見だよ。


「隊長! あそこ!」


 ルナ氏が中央の建物内に逃げ込んで行くオークを発見する。


 先ほどから気配察知をしているのだが、生き残った三十匹ほどのオークたちが、崩れかかった中央の建物へと集結してるのだ。


 籠城?


 いや、それはないか。


 あの金髪戦闘民族並みに強いオーキスさんがいる限り、籠城は意味をなさない。


 だとすれば、そこにあるのはオークが命を懸けてでも守らなければならないもの……、そう魔瘴石(スポーンストーン)である。


「皆さん、おそらくあそこにオークの魔瘴石があるはずです! オーキスさんの指示を待ちましょう」


 すると俺の声が聞こえたのか。


「――問題ない、このまま突入しよう」


 オーキスさんが上空から勢いよく降りてきて、道すがらそう話す。


「オ、オーキスさん!?」


「はっはっは! ヨハン君、驚いている暇はないぞ? まだ最後の仕上げが残っているからな」


 そう言って石造りの建物内へと入って行くオーキスさん。


 それに遅れまいと我々も続いて入って行くと、室内の中央部には黒々とした水晶と、それを囲むようにして円陣を組むオークたちが。


 以前、鉱山で見た水晶よりもかなり小さいが、それでも小さな子供くらいの大きさはある。


「なるほど。あんな()の魔瘴石が自然発生したとは考えにくいな。とりあえず破壊してみるか」


 そんなオーキスさんの一言を聞いてか聞かずか。


 突如、魔瘴石が黒く輝き出すと、周囲のオークたちの身体から黒い煙が立ち上り始める。


 三十体ものオーク全てが黒い煙と化すと、次第にそれは一体の大きなモンスターを形成した。


 どこか見覚えのある、登場シーン。


 これってまさか……。


「おいおい、あの魔瘴石、ユニークモンスター出しやがった。いいねえ、面白そうだ!」



 そんなオーキスさんの素敵なセリフと共に、俺たちの前に四本牙の巨大なオークが出現した!







【あとがき】

本日も異世界えぶりでいを読んでいただき誠にありがとうございます!

次回は久しぶりのボス戦を予定してるのですが、チート冒険者のせいで戦いになるのかどうか。

さて、どうしようかな?


執筆スピードが遅くなり申し訳ございません。

だらだらと書いてまいりますので、お待ちいただければと!


最後にこの数日間、誤字報告、感想、いいね、ブクマ、評価をいただきました読者の皆様、本当にありがとうございます。更新頑張りますので、お付き合いください。


次回は8月31日(水)を予定しております!

よろしくどうぞ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 覚えたいスキルが多くて振り分け過ぎるとそのうちポイントが足りなくなりそうだな汗
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