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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
三章 どうも不滅王殺しのヨハンです
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プロローグ

三章スタートです。




 ヨハンたちが冒険者ギルドを訪問した同日。




 ――その夜のこと。




 ピチャンピチャンと、天井のつらら石から滴り落ちる水の音が、静寂な洞窟内にこだまする。


 暗く深い、月の光すら届かぬ地の底で、それ(・・)は髑髏の玉座に鎮座していた。


「カリュウーグ様、お耳に入れておきたいことが」


 フードで顔を隠した男が玉座の前で跪き、そう語る。


「……話せ」


 重々しい声で返事をするカリュウーグ。


 闇に溶け込むような漆黒のローブを身に纏っているためか、その表情は伺い知ることが出来ず、男も慎重に言葉を選んで話していく。


「要警戒集団の一つ、紅衆(ヴァーミリオン)がハーフベルの冒険者ギルド内にて警邏隊の特別部隊と接触しました」


「……警邏隊か。特に戦力になりそうな者の名は浮かばぬが、お前(・・)が報告するほどのことなのかね?」


 カリュウーグの言葉に男はゴクリと喉を鳴らす。


 その様相は酷く緊張をしており、手にはじっとりとした汗が滲んでいた。


 それもそのはず。


 目の前にいる絶対的存在に対して、以前より進めてきた計画に、イレギュラーが生じたことを報告しなければならないからだ。


 決して怒らせてはいけない存在――、男はそれを念頭に置き会話を進めた。


「それが少々まずいことになりまして……」


「……ほう?」


 カリュウーグから突如発せられる、肌を刺すような強烈な殺気。それはまるで喉元に鋭利な刃を突きつけられているようなもの。男の頬に冷や汗がつたる。


「せ、先日、引退を宣言した竜の牙(ドラゴントゥース)の内二名ですが、その警邏隊の指導官として配属されたことが判明しました」


「……なるほど。では竜の牙(ドラゴントゥース)の残党がハーフベルに残ると?」


 男の言葉に、カリュウーグの怒気が増す。


 数千人規模の冒険者が所属するハーフベル冒険者ギルドの中で、プラチナランクの認定を受けた者は僅か二名。


 それが竜の牙(ドラゴントゥース)のリーダー『オーキス』と、紅衆(ヴァーミリオン)のリーダー『エラルド』の両名。


 残りのメンバーはゴールドランクとなるが、それでも一騎当千と呼ばれる実力者たち。


 ハーフベル冒険者ギルドの二大巨頭と言われてきたのが、この二つのパーティとなる。


「も、申し訳ございません。まさかこのようなことになるとは思いもよらず。も、もちろん紅衆(ヴァーミリオン)には竜の牙(ドラゴントゥース)のメンバー加入を認めないよう沙汰は出しております」


「……それだけで足りるのかね?」


「いえ、念のため紅衆(ヴァーミリオン)には緊急クエストとして、廃城ドラクロワに巣食う牛頭魔鬼(ミノタウロス)の討伐を請け負わせました。なるべく接点を持たせないように長期クエストをあてがったのですが、警邏隊との接触は防げずご報告に参った次第です」


「……そうか。牛頭魔鬼(ミノタウロス)はハーフベルへの強襲部隊として使う予定だったが、こうなっては仕方あるまい。しかし使い捨てにするのであれば、紅衆(ヴァーミリオン)は確実にハーフベルから離せ。あれらがおると我々の計画に支障が出る恐れがある。良いな?」


「承知しました。残る竜の牙(ドラゴントゥース)の処理はどのように?」


 男の問いに、一考するカリュウーグ。


「……ふむ、警邏隊に配属されたのは誰だ?」


「はい、リーダーの竜刃(ドラゴンエッジ)のオーキス、そして白妙の魔女(ホワイトウィッチ)のイリアの両名です」


「……よりによって、そ奴らか」


 不機嫌そうに語るカリュウーグ。


 それを感じ取ったフードの男も、口早につらつらと言い訳を並べる。


「申し訳ございません。拠点も手放し、クランも解散、引退宣言まで出した奴らが、まさかこのハーフベルに残るなど思いもよらず……、面目御座いません」


「……まあ、良い。あれらが結託せねば我一人で屠ることも出来よう。他は順調であるか?」


「は! カリュウーグ様のお力もあり、ゴールドランクの冒険者が所属しているパーティは、全て長期遠征のクエストにあたっております」


「……結構。念のため我も魔瘴石(スポーンストーン)をいくつか増やしておこう。上手く割り当てよ(・・・・・)?」


「ははっ、お任せくださいカリュウーグ様」


 男が頭を垂れ返事をすると、カリュウーグはおもむろに立ち上がり、懐から手のひらサイズの水晶玉(・・・)を取り出した。


 それを掲げるようにして見つめるカリュウーグ。


「……しかし、欲しいと思うとダンジョンは上手く目覚めてくれぬものだな」


 カリュウーグは、半ば呆れたかのようにそう語る。


「……だがそれも、もうしばらくの辛抱。大量の贄と瘴気を取り込み、ハーフベルの地に我が居城を造り上げてみせようぞ」


「ええ、至高なるカリュウーグ様であればそれも可能にございます。迷宮国家(・・・・)を建国の暁には、何卒わたくしめを地上の代官に」


「……わかっておる。我がここまで力を取り戻せたのも、お前の働きが大きい、ローガン(・・・・)よ」


「勿体なきお言葉にございます」



 カリュウーグが水晶玉に魔力を込めると、辺り一帯に輝かしい光が広がっていく。



「……我が願いの成就も達成間近。……抜かるなよ、ローガン?」



 水晶の眩い光によって、カリュウーグの顔が鮮明に映し出された。




 漆黒のローブの奥には肉の削がれたスカルフェイス。

 



 その眼窩の奥には、二つの紫炎が燃え盛っている。



 

 狭く暗い洞窟の奥に、カリュウーグの不適な笑い声が木霊した。






【あとがき】

お待たせ致しました。いつも異世界えぶりでいを読んでいただき誠にありがとうございます。


感謝の三章開始でございます。あまりに多くの読者の皆様に読んでいただきましたので、かなり先走って三章スタートです。


今回は謎のプロローグとなりましたが、次回からはヨハンたちの日常に戻りまして一話スタートとなります。


最後にこの数日間、誤字報告、感想、いいね、ブクマ、評価をいただきました読者の皆様、本当にありがとうございます。

応援されているという気持ちとなり励みになりました。


次回更新は8月21日を予定しております。


三章もよろしくどうぞ!



追伸

三章のタイトルは、三章が完結次第入力します。

お見苦しいですが、ご了承くださいませ。


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