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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
二章 どうも特務隊、隊長のヨハンです
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24/88

プロローグ

二章開始です。

よろしくどうぞ。




 時は少し遡り。


 ヨハンが首領巨獣鬼(ドン・トロール)を倒してから三日後のこと。


 場所は王都アウストラ東門詰所、所長室。


 そこで東門詰所の所長であるアグライト・チャベコフは、報告書を見ながら頭を抱えていた。


「はぁ、またヨハン君か。何かやるだろうなとは思っていたけれど、さすがにこれはやりすぎでしょ? 何がどうなれば新人警備兵が首領巨獣鬼(ドン・トロール)単独(ソロ)で討伐することが出来るのさ!? 僕はこれをどう評価すべきなの!? 褒めるべき? それとも叱るべき? もうわけわかんないよ」


 そう質問を投げかけられたのは、今回の実地研修で十八小隊の引率役だったグラッド、そしてその上司であるスピドラの両名。


 二人は今回の王国管轄鉱山のダンジョン化および、固有(ユニーク)モンスターの出現について報告にやってきていた。


「申し訳ありません、所長。報告書に記載した通り、最終的な探索の許可や、彼が一人囮となり首領巨獣鬼(ドン・トロール)と戦闘行為をおこなったこと。これら全ての責任は引率役であった自分にあります」


 グラッドの言葉に、さらに頭を抱えることになるアグライト。彼の言う責任とは、ヨハンの隊務規定違反を全て自分が被るということだ。


 今回の経緯を考えると、ヨハンの判断ミスは重大である。


 ダンジョン化の兆候があったにも関わらず、隊を率いて五階層へと向かったこと。これは非常に危険な判断と言わざるを得ない。


 結果論で言ってしまえば、そこにちゃんと救助者が居たのでヨハンの判断は正しかったのだが、本来であればそんな無謀な探索は早急に辞めさせるべきであろう。


 とはいえ、今回ヨハンがもたらした成果はとてつもなく大きい。歴代新人の中でも史上最大の武功と言って良いほどのものだ。


「グラッドくん? そんなに自分を責めなくてもいいよ。別にヨハン君を隊務規定違反でクビにするつもりはないから。ただやっぱり一度叱らないとダメかなぁ。固有(ユニーク)モンスターを討伐した英雄を叱るのは心苦しいけど、やっぱり命は大切にしてほしいよね」


「所長……」


「それよりもヨハン君の隊長としての資質はどうなの? 個人の戦闘力は規格外というのは理解したけど」


「はい、今回は事前に要救助者の情報があったことで、最終的には判断ミスをしたことになりますが、それまでは新人隊長とは思えないほどの指揮能力はありました。正直、このまま衛兵隊へ昇格させてもなんら問題はありません」


 実際、ヨハンの指揮を目にしたグラッドは、それまでの状況判断能力、そして魔物の殲滅速度を評価していた。


「なるほど。グラッド君にそこまで言わせるとはね。スピドラ君はどう思う?」


「はい、先のローズリリイ嬢との模擬戦を見ても、彼を新人枠で留めておくには、勿体ない人材ということは間違いないかと」


「ふむふむ」


 アグライトはしばし考え込む。


 実はヨハンたちが実地研修へと出立した同日、彼もまた騎士団本部で王都防衛についての定例会議に参加していた。


 昨今のアルフェリア王国の現状としては、近年稀にみる魔物の大量発生により、王都の騎士団が各地へ派遣されている。そのため王都に駐留する騎士団の人数は必要最低限のものとなっていた。


 そこに先の鉱山でもあったような魔瘴石(スポーンストーン)迷宮核(ダンジョンコア)化。


 そんな異常事態が他にも続々と報告をされているのだが、正直、手が回らないのが現状である。


 この国の騎士団と警邏隊の関係性は、日本で言うところの自衛隊と警察組織に近い。


 ただ位置づけとすれば、圧倒的に騎士団の方が上とはなるが。それもこれも所属する貴族の数が、騎士団の方が断然多いからである。


 そんな騎士団側から提案されたのが、ダンジョン化しそうな地域の調査を主とした”特務隊”の新設だ。警邏隊の中から実力者数名をピックアップして編成する少数精鋭部隊となる。


 しかし警邏隊の人員にも余裕があるわけではない。


 日々の取り締まりや、事件の多さで言ったら騎士団よりも忙しいくらいなのだから。


 アグライトが人員を割けないことを理由に断ろうとしたのだが、そんな矢先に実地研修での事件が重なってしまうという不運。これはもう早急に手を打たねばならない。


 今回も結果として全てが上手くいったが、一歩間違えれば間違いなく死人が出ていた案件である。


 アグライトが頭を抱えたくなるのも仕方がない。


 今の人員配置、仕事バランスなどから見ても、新部隊へと割けるのは新人くらいしかいないのだから。


「二人ともありがとう。とても参考になったよ。とりあえず退院明けにでも、ヨハン君には僕の方から話をするから。今回の引率役、ご苦労様。きみたちのおかげで最悪の結果は免れたよ」


「過分なお言葉ありがとうございます」


 そう言ってスピドラとグラッドは退室して行った。


 一人となったアグライトは再び机の上に置かれた報告書に目を通す。


 そしてまるで誰かに愚痴るかのように。


「はあ……。期待してたとは言え、さすがにこれはやりすぎだよヨハン君。特務隊を彼に任せてもいいものかどうかすっごい悩む。でも任せるなら彼が一番適任なんだよねー。それに今回のドロップアイテム(・・・・・・・・)。これ、どーしよっかなー」


 アグライトは、報告書の一番最後の記載されている″取得物一覧″と言う項目を見てそう呟く。


 こう言ったダンジョンでは、ユニークモンスターや魔障石(スポーンストーン)を破壊すると、稀に特殊なアイテムへと変化することがある。


 今回、ヨハンが破壊した魔障石もその稀なケースの一つとなった。


 それをラウルから報告を受けたグラッドが回収し、王国鑑定局で調べてもらった結果が書かれているのだ。

 


 ちなみに鑑定結果なのだが、このようになっている。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【鑑定済み取得物一覧】


《名称》

・魔剣グランドリッパー


《鑑定結果》

 魔剣の一振り。自身の魔力を使用することで、切れ味の増大と、斬撃の拡張を行うことが出来る長剣。刀身の材質は魔力浸透率の良いダナンメタル。評価額としては金貨18〜25枚ほど。


 アイテムレア度【B】ランク。


 譲渡許可済み。


 国家鑑定士サザーランド・シモン。

 


《名称》

・■■■■■クリスタル


《鑑定結果》 

 用途不明のクリスタル。名称は鑑定不能。しかし、魔力や呪詛と言ったもの感じられないので、現状は特に当たり障りのないクリスタルであることは間違いないだろう。記念(スーベニア)アイテムの可能性が非常に高い。評価額は不明。もし必要ないようであれば引き取りを希望したい。(シモン)


 アイテムレア度【C】ランク。


 譲渡許可済み。


 国家鑑定士サザーランド・シモン。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 基本的に警邏隊のルール上、こういったドロップアイテムなどの物品は、討伐に関わった者たちで分配されることになる。


 人数が多い場合は、ドロップ品は王国での買取りの上で金銭分配。


 もしくは取得希望者がいるのであれば、個人的に分配額を支払うならばそれが可能となる。

 

 今回の件で言えば、魔障石を守護する固有モンスターの討伐者はヨハンただ一人。


 すべてヨハンの総取りとなるのだ。


 それがまたアグライトをひたすらに悩ませた。


「なんでこういう時に限って魔剣(・・)なんてもんが出るんだろう? もう少し気軽に渡しても大丈夫そうなアイテムをドロップしてほしかったな。といっても仕方ないけどさ。あー、もうこれ絶対ヨハン君が周りからなんか言われるよ。変なトラブルに巻き込まれなきゃいいけど。渡しても大丈夫かなぁ?」


 そんなどうでも良いことにまで頭を悩ますアグライト。毛根へのダメージは計り知れない。


 新設部隊に、新人からの隊長抜擢。さらには近衛騎士ですら羨むような装備の獲得。ヨハンが悪目立ちしそうでならないのだ。


 悩みに悩むアグライト。



 その熟考は三日三晩に及んだ。

 

 

 結果、彼の辿り着いた答えが。



「はぁ……、どうせ普通に仕事をさせたって僕の予想を遥かに超えた案件になっちゃうんだ。だったらここはもう彼を信じて特務隊を任せてみようか。それに魔剣持ちの新人隊長っていう肩書きなら、彼もより一層箔が付くだろうし」



 こうして王国警邏隊に新たな部隊『特務隊』が新設される運びとなった。



 この時まだヨハンは夢の中。

 


 彼の運命の歯車が動き出す。



【後書き】

本日も最後まで読んでいただきありがとうございます。

まただらだらと更新してまいります。

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