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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
一章 どうも新米隊長のヨハンです
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4話 フォルナ村実地研修 鉱山突入!




 第一陣が鉱山より戻ってきた。


 その顔はゴブリンの返り血に濡れ、皆、焦燥としている。


 着ていた装備も所々損傷しているところを見ると、かなり激しい戦闘があったのだと伺える。


 だいぶ消耗してるような気がするが、二回目の突入は可能なのだろうか? もうすでに疲弊し切っているけど?


 そんなこと考えてると前方から、見覚えのある厳ついスキンヘッドがやってきた。


 ハート様だ。


 本名を忘れてもあの綺麗に剃り上げたスキンヘッドだけは忘れない。というか両腕がゴブリンの返り血で紫色に変色してんだけど? いよいよ世紀末感が半端ない。


「よお、小僧。第二陣で突入か?」


 中々フランクに接してくれるハート様。


 この人も根は悪い人ではなさそうだ。


「はい、今からです」


「なら気をつけろよ。中は瘴気(しょうき)がかなり濃いからな」


「瘴気ですか?」


 その言葉にグラッドさんが。


「ガラン副隊長、それってもしかして鉱山がダンジョン化しつつあるのでしょうか?」


「ああ、そうかもしれねぇ。ゴブリンも思ってた以上にわんさか出てきやがってな。そのせいで俺が面倒みてる隊の奴らみんな日和っちまった。お陰でこの様だぜ。だからお前らは日和るんじゃねえぞ? って、俺を倒したお前がいるなら問題ねぇか。がっはっはっは!」


「は、はぁ……。頑張ります?」


 ハート様の笑いのツボが分からん。


「じゃあ、俺はスピドラ隊長に報告に行ってくるわ! 万が一、鉱山がダンジョン化するのならこの研修は中止だ。不本意だが騎士団へ出動要請しなきゃならねぇ。じゃあな!」


 片手をヒラヒラとさせながらハート様は行ってしまった。

 

「ダンジョン化……、そうなると非常にまずいな」


「グラッド教官、何が問題なのでしょうか?」


 と、ラウル君。


「まず第一に鉱山の内部が迷宮化するんだよ。今までとまったく異なる構造にね。そうなると既存の地図が使えなくなるのが痛い。マッピングは時間と手間がかなり掛かるからな」


 なるほど、確かに。土地勘のない俺らの生命線はこういった地図と言っても過言ではないだろう。途中で迷子なんて勘弁してほしい。鉱山で遭難なんてリアル脱出ゲームじゃん。


「そして第二に、迷宮化して瘴気濃度が濃くなれば、多種多様な魔瘴石(スポーンストーン)が出現するんだ。そうなるとモンスターもゴブリンどころの騒ぎじゃなくなってくるぞ?」


 あー、それはとてつもなく嫌だ。特に虫系モンスターのコックローチ。日本で言うところの巨大なゴキブリなんだが、強さに関わらず存在だけで俺のメンタルをゴリゴリ削るモンスターである。


「最後に魔瘴石(スポーンストーン)迷宮核(ダンジョンコア)化だ。魔瘴石が迷宮核へと変化すると、核を守護する固有(ユニーク)モンスターが出現するんだ。そのどれもが凶悪かつ強い。生まれたての迷宮だとしてもその脅威はさほど変わらないだろう」


「では鉱山が迷宮化する前に魔瘴石を破壊する必要があるってことですね?」


「その通りだラウル君。気配察知スキルがあれば魔瘴石の禍々しいオーラも捉えることが出来るだろう。だがくれぐれも焦らず慎重にいくぞ? さあ、我々も突入だ!」


「「はい!」」


 グラッドさんの号令で我々十八小隊も鉱山へと突入。


 まじで迷宮化する前になんとかせねば。


 目指すは魔瘴石。


 フラグが立つ前に破壊したいものである。




 ◆◇◆




 というわけでさっそく突入してみました、ゴブリン鉱山。


 鉱山と言っても、人の手が入りまくっているので、坑道もしっかりと整備がされていた。


 道幅もそれなりに広く、天井には魔法のカンテラまで付いている。もっと暗い場所かと思いきや、想像よりも明るい。組木もしっかりとされているので相当な無茶をしない限りは落盤の心配もないだろう。さして進むのには苦労はしない。


 ただ鉱山の内部は地下五階構造となっており、先に突入した第一陣は一階層までしか制圧出来てないようだ。


 我々、第二陣は二階層からの引き継ぎである。残り四階層。出来ることならさくっと魔瘴石を発見して破壊したいたいところ。何回もアタックするのは逆に疲れるからな。


「では、隊列を組んで二階層を目指すぞ?」


 グラッドさんの指示で、麻雀牌の五筒(ウーピン)みたいな隊形を組んだ。


 前列二名がラウルとネイ氏、真ん中は俺、後列にルナ氏とケイシー氏。グラッドさんはさらに最後尾、殿だ。


「よし、隊列も問題なさそうだな。それではこれよりヨハン隊長へ指揮権を移す。指示通りに動くように」


「「はい!」」


 はぁ……、まったくもって不本意だがターニャちゃんの件もある。隊長としての務めを果たすか。



 ――気配察知、練度【10】、発動!



 俺を中心に爆発するかのように広がる察知範囲。


 その察知範囲が恐ろしく広大であることに気が付くのに、そう大して時間は掛からなかった。


 一言、凄いとしか。


 だって察知範囲が、この鉱山の一階層をまるごと把握出来るほどである。先行した部隊全ての気配を捉えることが出来たのだ。


 練度【10】ともなると察知範囲も凄まじいな。恐らく察知出来る範囲は五百は軽く超えると思う。ちょっと覚えるだけで達人の数倍の察知範囲って。……つくづくチートだなぁ。


 ただ一つ残念なのが、地下に意識を伸ばしても生物の気配を捉えることは出来なかった。岩盤が邪魔をしているのか、それとも不思議な力が働いているのかわからない。要検証!


 それでもこの範囲ならば不意打ちされることはまずないだろう。さっさと二階層を目指そう。一階層には目当ての魔瘴石はないようだし。


「では十八小隊、地下二階へ向けて前進する」


 こうして我々の鉱山探索が始まった。



 ◆◇◆



 最短ルートを通ったことで二階層へ一番乗りした我々十八小隊。


 どんだけ()る気なのか。


 まだ他の隊は一階層の半分も進んでないというのに。


 やはり気配察知範囲が広いと判断も早い。敵がいないと分かりきっているからこそ出来る芸当だろう。うちの隊員も素直に俺の言うことを信じてくれたのも大きい。


 唯一、グラッドさんだけが行進速度にまじ引きしていたが気にしないでおこう。


 さて、ここからが本番だ。


 二階層に降りたら気配察知にうじゃうじゃとゴブリンが引っ掛かった。


 ――その数、七十五匹。


 まあ、これくらいの数ならなんとかなるだろう。


 俺たちだけで討伐するわけでもないし。


「みんな、そこら中にゴブリンがうろついてる。近づいて来たら指示を出すから、それまで進軍スピードはこのままで」


「「了解!」」


 そう言って二階層も爆進して行く。


 するとさっそく彼らのお出迎えが。


「ラウル、ネイさん! 次の角を曲がった先にゴブリンが五匹いる。盾を構えて敵を引き付け、ここまでおびき出して欲しい。そこを俺とルナさん、ケイシーさんで攻撃を入れる」


「え、でも隊長殿? 次の角ってまだ七十メートル近くありますよ? さらにその奥までわかるものでしょうか?」


 まあ、達人で察知範囲が百メートルって言われれば不思議に思うよな。そこは信じてもらうしかないのだが、なんて言えばいいのだろう? やっべ、これは言葉に詰まる。


「わかった、ヨハン! 俺はお前を信じるぜ!」


 そう言って盾を構える犬耳イケメン。


 無条件で俺を信用してくれるのは本当にありがたい。


 ラウルの野郎、最高にいかしてやがる。俺もそんな台詞を口にしてみたい。


「ラウルさんがそう言うのであれば、あたしも隊長殿を信じます! 誘い出しますので迎撃お願いします!」


 くっ、これがイケメンパワーとでも言うのだろうか? 


 熊耳長身女子を無条件で信じさせるなんて。


 これならラウルが誘えば簡単に愛のホテルに連れ込めそうじゃないか。やりたい放題、お持ち帰りしたい放題、ついでに言えば選びたい放題というまさにイケメン無双状態! なんて恐ろしい奴だ!!


「では、ルナさんは弓を、ケイシーさんは魔法で牽制をお願いします。後は俺と前衛二人が受け持ちますので」


 剣を抜き二人を待つ。その間、俺は気配察知に集中する。万が一、失敗したならすぐさま救援に行かなければならないからだ。


 ただ、それは杞憂に終わる。


 二人がゴブリンと接触すると、猛ダッシュでこちらに戻って来た。



「――来ます!!」



 角を曲がって現れたラウルがそう叫ぶ。


 その背後には、粗末な鎧を身に纏ったゴブリンが。


 体長150センチほどの緑色の小鬼。


 しかし身体は筋肉質で性格は獰猛。


 武器を扱えることもあり、油断すればベテラン兵士すら簡単にやられることも。



 ――ヒュンッ!!



 坑道内に風切り音が鳴ったと思ったら、ルナ氏がすでに第一矢を放っていた。


 しかも先頭にいたゴブリンにヘッドショットを決めるという凄技。


 すげえ、五十メートルを一発かよ。


 すると立て続けに。


「――岩石槍(ランドスピアー)!」


 呪文詠唱が終わった魔女っ子(ケイシー)から放たれる岩の槍。


 凄まじい速度でゴブリンを貫いた。


 まごうことなきオーバーキルですな! 


 まじ魔法パネぇ!!


 そして残りは三体。


 前衛二人が残りのゴブリンを足止めしているので、俺がサポートへと入る。


 ――身体強化、練度【2】、発動!


 念のため、身体強化を施してからゴブリンたちの背後に回り込む。


 ゴブリンたちも俺に気が付いたが、反応がびっくりするほど遅かったので、そのままバッサバッサと斬り倒した。


「これで終わりだ」


 最後の一体の首をスパンっと刎ねて終了。


 するとどうしたことか。


 俺にある変化が起きたのだ。



 何か得体の知れない確信感――。

 


 脳内にリンゴーン、リンゴーンと、鐘の音の鳴り響くような感覚。……あくまでも感覚だけだが。

 

 でもね、これはきたよ。


 あれだよ、あれ。


 上がったね。



 ――俺のレベル(・・・)が。



 スキルウィンドを見てみると。


・LV:6

・SP:405


 ほら見たことか!!


 レベルが上がりSP(スキルポイント)が増えた。


 しかし、その他はあまり変わっていない様子。


 気持ち二の腕に筋肉ついたかなー、って感じの微々たる変化である。筋トレ始めて三日目って言うのが的を射ているかもしれない。


「おいおい、まじかよ……。結成一日目とは思えないほどの殲滅スピードだな。そこらの衛兵よりもずっと早いぞ? なんでこんなチームワークがいいんだ? 信じられん」


 上官! それはラウルの言うことなら無条件で信じる女子が三名いるのと、俺を無条件に信じるラウル君がいるからです!


 そんなセリフを吐いてやりたいが、無駄に時間を費やすこともないだろう。


 すると熊耳女子が。


「いやー、それにしても隊長殿の気配察知は凄いねー! 角を曲がったら本当にゴブリンがいたからビックリしたよ! 次からは直ぐに行くから教えてくれよな?」


 メイスを肩に担いで可愛くウインクする熊耳女子。


 くっ、お茶目で可愛いじゃないか、この熊耳ちゃんめ! そのギャップが俺には堪らなくいいんだよ、クソがっ!!


「あの、隊長? 私たちも隊長をサポートしたいので、何かあれば気兼ねなく教えてくださいね?」


 おお、ルナ氏ありがとう! ちょっと今ので隊長としての信頼度が上がったような気がする。しかし、ラウルの存在が大きすぎて、ミーハー女子三傑の攻略ルートが見出せない。童貞には無理ゲー。


「ありがとうルナさん。じゃあ、さっそく次に行くぞ? まだまだゴブリンはたくさんいるからな」


「「おー!!」」


 こうして我が十八小隊の記念すべき初戦は勝利に終わった。



 ただ、この時の俺は完全に調子に乗っていた。



 だから気が付けなかったのかもしれない。



 坑道の壁が少しづつ変化をしていることを。




 

【あとがき】

読んでくださり、誠にありがとうございます。

やっと主人公のレベルを上げることが出来ました。

時間をかけ過ぎた。


最後にブクマ、評価くださった読者の皆様、本当にありがとうございます。

励みになりました。

明日もぼちぼちと更新してまいりますので、よろしくどうぞ。

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