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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
序章 どうも新人警備兵のヨハンです
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エピローグ



 目が覚めるとどこか見慣れた白い天井が。


 むくりとベッドから身体を起こして辺りをキョロキョロと見渡す。


 簡素なベッドが四つ置かれた医務室だった。



 ……オウ、デジャヴ。



 一つ違うとしたら今回は俺の全身が包帯でぐるぐる巻きにされていることくらいか。


 そしてなぜか全身がとてつもなく怠い。


 回復魔法を使い過ぎると反動で、倦怠感が強まると聞いたことがあるがこれがそうなのだろうか? 気を失う前、骨にヒビが入るような音してたもんな。


 それにしても……。


「あー……、まったく酷い目にあった。まさか訓練で病院送りになるなんて」


 ベッドの上でぐいぐいっとストレッチをおこない、身体に痛みがないか確認するが、どうやら問題なさそうだ。


「まじでローズリリイとはもう関わりたくないな。あんな奴と関わってたら命がいくつあっても足りないって」


 そんな愚痴のような独り言を呟いていると、まるで時機を合わせたかのように廊下からパタパタと足音が。


 そして両開きの引き戸がガラッと開けられると、入ってきたのは魅惑の天使ナタリーさん。


「あら、ヨハンさん! 良かったぁ、目が覚めたんですね! 心配したんですよ?」


 これまたデジャヴ。


 なんか前にも聞いたことがあるぞ?


 もしや……。


「また三日(・・)も意識がなかったんですからね? 訓練とは言え無茶をしてはダメですよ? 運ばれてきた時、ヨハンさんもの凄い大怪我されてたんですから。覚えてますか?」


 やっぱりね! また日付が飛んだよ! もうワープだ、ワープ! 時の加速やめてくんない? まじで?


「あー……、はい、なんとなく。ちなみに俺の身体って、そんなに酷かったんでしょうか?」


「えーと、確か一番酷かったのが肋骨の骨折でしょ。さらに疲労骨折が全身の至る所にあったのと、それと併せて肉離れ、捻挫、打撲、他にも色々とありましたが忘れちゃいました」


「まじっすか」


 引くくらい大怪我しとるやんけ。何してんの俺?


 肋骨はきっと赤髪ツンデレのせいだが、その他の怪我は割と身体強化の反動のような気がする。どれだけリスキーなのか。


 安易に身体強化を使うのは考えものだな。特に練度【8】の身体強化は俺にはまだ早過ぎるようだ。使っても練度【5】までの強化じゃないと身体が耐えられそうにない。それでも酷い筋肉痛にはなってしまうが。


 今回は無茶をしてしまったが、ある意味良い経験となったな。身体強化のデッドラインが判明したのは大きい。今後は気をつけよう。


 とりあえず練度【8】はしばらく封印決定!


「あ! そういえばヨハンさんって貴族の方に知り合いなんていらっしゃるんですか?」


 突如ナタリーさんの口から不穏なセリフが発せられた。

 

 これには思わず。


「いえ……、まったく」


 シラを切るという。


 だってこれは仕方ないよね!? 貴族の知り合いなんてあの赤髪ツンデレか、この前助けた可憐なお嬢様しかいないんだもの。俺にとっちゃあどちらも地雷、関わりたくはない。


「そうなんですか。実は昨日、執事のような方がヨハンさんを訪ねてこられて、現在意識不明で面会出来ませんとお伝えしたら、残念そうに帰っていかれたんです。家名はお聞きしませんでしたが、今日で王都を後にするようなことを言ってらっしゃいましたよ? 何か重要なことでなければいいんですが」


 あー、十中八九スミスさんだな。きっと例の件についてだろう。諦めてなかったか。


 スミスさんが言うお礼を受け取ってしまうと、万が一スカウトされた時に断り辛いんだよな。逆にすれ違ってくれて助かった。


「ナタリーさん、きっと大丈夫ですよ。もし何か用事があるのであれば、またあちらからアプローチがあるはずですし」


「それもそうですね! ではヨハンさん、これから少し診察をしますからそのまま起きててもらえますか?」


 なんとまさかのここでご褒美タイムが到来!!


 ナタリーさんがおもむろに聴診器を用意し始めたのだ。


 これには思わず。


「もちろんですとも!!」


 ナタリーさんとのリアルお医者さんごっこに興奮してしまい声が大きくなってしまう。


 うわぁ、どうしよう? 


 降って湧いたかのような至福イベントで心臓バクバクなんですけど? もしかして治療という名のセクシャルな診察が始まっちゃうのかい?


 もう服は脱いだほうがいいのだろうか? いや脱ぐべきだな。しかもここは全裸でいこう。


 うっかり脱いだことにしてしまえば、きっとナタリーさんも「もう困った子ね、ヨハン君は」なんてセリフから一気に童貞卒業ルートに持ち込めるやもしれん。


 よし、これでいこう!!


 いや、いくべきだ!!


 こんにちはしちゃおう、ナタリーさんの目の前で、下半身こんにちはーって。



「じゃあヨハンさん?」



 髪を耳にかき上げ、艶やかな笑みを浮かべるナタリーさん。


 クラクラするほど色っぽい。


 ナース、巨乳、年上。


 何気に完成しているエロのトリプル役満、彼氏単騎待ち。


 そう、あとは俺がツモるだけ。


 ナタリーさんの彼氏という配牌を!!


 いざ!!



「……私、院長先生を呼んできますから少し待っててくださいね?」



 そう言い残すとナタリーさんは足早に部屋を後にした。


 は? え、ちょっと待って?


 ナタリーさんが診察してくれるんじゃないの?



「……………………」 



 役満テンパイで、まさかの四槓子(スーカンツ)流れで流局という……。


 ド畜生がぁぁぁぁぁぁぁ!!(血涙)


 今回はまじで期待した、童貞卒業のチャンス到来と! なのに、なのにこれは酷くない!?


 こんな大怪我をしたんだ。少しくらいセクシャルな展開があってもバチは当たらないんじゃないの!?


 くっそぉぉぉ、運命の神がいるのであればマジで死んでしまえばいいのにぃぃ!!


 神よ、そんなに俺のことが嫌いなのでしょうか!?



 ーー嫌いではないぞ? 



 急に答えんなや、じじい! むしろ答えなくていいから! 心の声を拾われると無茶苦茶恥ずかしいんだぞ!?


 そんな恨み辛みを心の中で叫んでいると、いつもの院長先生がやって来た。


 そしておもむろに魔法で俺の身体をスキャンをすると。


「うん、骨もくっついてるし、これはもうばっちり治ってるね。じゃ、退院で」


 有無を言わさず自室への強制送還になるという。


 解せぬっ!!



 ◆◇◆



 不本意ながら部屋へと帰ってきた俺氏。


 今日は一日安静ということで仕事は休み。


 最近の俺の休みって基本入院日なんだよなぁ。なーんかもったいない気がするのは気のせい?


 しかも週休六日という世間にバレたらお怒りを受けるシフトである。税金泥棒も甚だしい。

 

 することもないのでしばらく部屋でストレッチをしてると、コンコンッとドアをノックされた。


 ん? 珍しいな。俺の部屋に来客だなんて。誰だ? 思い当たる節がない。


 あっ……、もしかしてローズリリイが俺の部屋までカチコミに来たとか。いやいや、それは考え過ぎだ。でもなー、あの女からやり兼ねないんだよねー。


 そーっと、ドアを開けると。


「よっ! 病院に様子を見に行ったらもう退院したって聞いてさ。もう大丈夫なのか?」


 立っていたのはラウルだった。


「なんだ、ラウルかよー。ビビらせんなって!」


「お、おう? それは悪い。で、もう身体は平気なのか?」


「ああ、残念ながら院長先生にまったく問題ないと言われたよ。無念だよ、マジで」


「ああ、それなら良かった……、のか? なあ、ちょっとヨハンに相談があるんだけどいいか?」


 相談? 珍しいな。リア充イケメンがこんな毒男になんの話があるというのか。万が一、恋愛相談であればラウルはまじで〆ようと思う。


「ああ、とりあえず入んなよ」


 狭い部屋なので俺はベッドに腰掛け、ラウルは椅子に。初めて自室に招く客がラウルとは。まったく女っ気がなくて泣ける。


「で、相談ってなんだ?」


 野郎の相談などささっと終わらせたいので、そう問いかけると表情を焦燥とさせるイケメン。そんなに話し辛いことなのか?


「退院したばかりのヨハンに話すのは酷なんだけど」


 もしかして彼女が出来ましたとか言うんじゃなかろうな? それなら〆ちゃうよ? まじ〆ちゃうよ?


「ヨハンが捕まえた誘拐犯がさ、一昨日牢屋の中で殺されたんだ」


 誘拐犯? あー、お嬢様を拐おうとした奴ね! そんな奴もいたなー。モブかと思って俺の脳内HDDからデリートしてたわ。


 しかし、あの誘拐犯殺されたのか……。


 まあ、十中八九口封じだろうな。悪人の末路というかなんというか。悪いことはするもんじゃないな。


 それよりも牢獄内まで誰にも気付かれずに侵入してくる暗殺者って。どんなヤバい奴がバックにいんだよ。


「ちょうどその日って、俺が牢番の当直でさ」


「ん? なんだラウル? もしかして殺した犯人でも見たのか?」


 多少ばかり言葉を交わした所で、どうにも難しくなるラウルの表情。


「いや、残念ながら物音がしたと思ったら既に誘拐犯が殺された後だったんだ。牢番をしていたのに、俺はまったく侵入者に気付けなかった。ほんと何のための牢番なのか……。悔しくてさ」


 なるほど、相談とはコレのことか。自分を責めちゃってるわけね? ほんと性格までイケメンだな。


 というかそもそもな話、なぜ相談相手が俺なのか? 自分で言うのもアレだが、もう少しちゃんとした人に相談した方が良いと思うよ?


 一応、答えるけどさ。


「うーん、でもこれは気付けなくても仕方ないんじゃないか? 牢屋にぶち込まれた奴を始末しに来るキチガイな殺し屋だぞ? そんな奴がまともであるはずがなかろーに。逆にそいつと遭遇しなくて良かったじゃん」


「そ、そうかな?」


「当たり前だろ? 断言するが間違いなく俺たちの手に負えるような奴じゃないのは確かだ。それにラウルが気に病むようなことでもないと思うぞ?」


「だけど俺のミスでその人死んじゃったわけだし……」


 正義感の塊かよ? いい加減にしてほしい。


「いいか? 俺から言わせればそんなのミスじゃない。勘違いも甚だしいわ。それに貴族の娘を拐うような奴なんて遅かれ早かれ死んでたっつーの。死刑が少し早まっただけだ。特にパグ……ごほんっ。所長からお叱りを受けたわけでもないんだろ?」


「ああ、特には。何もなかったからちょっと不安になってさ」


「じゃあ、そういうことだ。この経験を次に活かせばいいんじゃないの? それに俺たち新人に出来ることなんてたかが知れてるし。出来る範囲のことを確実にやる。それで十分だと思うけどね」


 途中、面倒くさくなり、それっぽいこと言ってまとめてみた。これは俺に相談してくるラウルが悪い。


 しかし。


「……うん、確かにそうだな。ヨハンの言う通りかもしれない。日々の積み重ねって大事だもんな。なんだかスッキリしたよ。ありがとな、ヨハン!」


 真面目イケメンなラウルは、それをド直球で受け止めたみたいで、何やら元気復活といった感じに。


「じゃあ、そろそろ詰所に戻るわ! 少し抜けただけだから。ヨハンも明日から復帰するんだろ? また一緒に巡回に行こうぜ」


 そう言って、どこかの野球少年のように部屋を飛び出して行くラウル君。これで空回りされると逆に俺が困るんだけどなぁ。ほんと単純な奴め。まあ、それがラウルの持ち味なんだろうけど。


 そんなこんなでその日はゆっくりと過ごした。



 翌日、目が覚めると身体の倦怠感もなくなり、体調もすこぶる良くなった。



 ふと部屋のカレンダーを見ると今日は週始め。


 日付が飛んじゃったから曜日感覚なくなってたんだよね。これはいかんわ。今週は日付ワープしないように無難に立ち回りたいものだ。



 そう思いつつも、激動の一週間が始まることをこの時の俺はまだ知らない。





 

 




【あとがき】

本日も最後まで読んでいただきありがとうございます。

とりあえずまずは序章が終わりました。

次章は7/14(木)を開始予定としています。

プロットもなしに思いつきで書いている今日この頃。

ボチボチと更新してまいります。

少し間が空きますが、どうぞよろしくです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 四槓子は役満なので流れるなら四槓流れ?それか四開槓ともいうらしいですが
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