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2話

後ろの集団から1人の男が前に出てきた。


「私が証言します。」


そう言ってペコリと国王様へと頭を下げた。



ピコン!



『モブ夫

 リリアンに××(自主規制)してもらう約束で、エドワードから嘘の証言を依頼されています。

 ××(自主規制)が報酬なんて、この学園の男は発情期の猿ばかりなんですかね?

 まぁ、サキュバスにとって若い男との××(自主規制)は食事みたいなものだから、いくらでも誰とでもやる気満々ですけどね。』


またもや頭痛がしてきた。

しっかし、この『鑑定』はすごいよ。

誰がこの解説をしているのかとっても気になるけどね。


(もう好きにさせてもらうわ・・・)


ギロッと俺が睨むとモブ夫がオドオドし始めたよ。


(この小心者がぁあああ!)


「私が彼女を虐めているとの証言でしたよね?」


今の俺は女の姿だし、取り敢えず女の態度で接しないといけないよな?


「それではあなたに約束していただきます。もし・・・、あなたの証言が嘘でしたらどう責任を取るのでしょうか?ここには国王様も始め、宰相様や騎士団の団長様もいらっしゃいますし、この私、公爵令嬢を貶める言動ならあなた1人だけの命では済まないのでは?そこまでの覚悟があっての証言ですよね?」


お!モブ夫が顔面蒼白になってガタガタと震えているぞ。

もう一押しだな。


「どうなんですか?」


「す、すみませぇええええええええええええええええええっん!」


モブ夫がいきなり土下座をしてしまった。

そのままずっと「すみません・・・」「すみません・・・」とブツブツ言いながらガタガタ震えて土下座を続けていた。


国王様がクイッと首を動かすとどこからともなく鎧姿の男達が現われ、モブ夫を引きずりながらホールから出て行った。


その光景に愚弟が唖然とした表情で立ち尽くしていた。

しばらく放心状態だったが、我に返ったみたいで急に俺を睨んだ。


「姉上・・・、その態度、どうしたのだ?いつもオドオドして言いたい事もまともに喋る事も出来ず、社交界に出る事も出来ずに我が公爵家の恥だった姉上が凜とした態度を・・・、どうなっているんだ!」


「そうだ!」


王子も叫んだ。


「オリビア!さっきからどうなっているのだ!今までの私に対しての態度は猫を被っていたのか?頭だけは良かったがそれ以外は全く駄目だったのは演技だったのか?」


はぁ~・・・、この元の体の人って余程のコミュ障だったみたいだな。

だからといって、婚約者がいるのに他の女に入れ込んで婚約破棄をするバカ王子。

妾の子だから馬鹿にしている愚弟。


(もう遠慮はしない。)


「いえ、私は気付いたのです。このままでは私は駄目になってしまうとね。これからは言いたい事を言って、やりたい事をします。」


グルンと首を回しカラフル軍団にメンチを切った。


「婚約破棄ぃいいい!そんなのこっちから宣言するわ!皇太子に騎士団の団長の息子ぉぉぉ、それに宰相の息子と公爵家の息子と家柄だけは立派な連中ばかりが集まって、やっていることは盛りのついた犬か猿みたいな真似事?何が真実の愛?立派なのは親が立派なだけであんた達はその七光りに乗っているだけで、中身は全く伴っていないって自覚があるのかしら?女に溺れた男ってここまでバカになるって笑いが止らないわよ!」


「黙れぇえええ!」


お!王子が真っ赤な顔で怒鳴ったぞ。

図星を突かれて開き直ったか?


「おのれぇぇぇ・・・、この私が大人しくしてればつけ上がりやがって・・・、オリビア!何を言おうが貴様が罪人なのは明白なのだ!リリアンが貴様に虐められている!この事は絶対なのだ!リリアンは正しい事しか言わん!そして王族である私の判断も全て正義なのだよ!」



「この痴れ者がぁああああああああああああああああああああああ!」



国王様の顔が真っ赤になりプルプルと震えていた。


「ここまで貴様がバカだとは思わなかったぞ!王族とは何ぞや!その言葉の意味も知らず権力と女に溺れるとは、何とまぁ恥知らずの愚息!どうやら王族の肩書がお前の目を曇らせていたが、もう儂も容赦しない!」


そして隣にいる青髪の男に視線を移した。

その青髪の男の人は深々と国王様に頭を下げ、またその隣にいた緑髪の男も深々と頭を下げた。


「この国の宰相として私も責任を取らせてもらいます。我が愚息カルロスは侯爵家より追放、平民へと降格させます。あれだけの馬鹿をしでかしましたので、もう家族としては認められません。あんな愚息を育てた私も責任があるでしょう。国王様、何なりと私に処罰を・・・」


「この国の守護を司る騎士団にあるまじき愚息です。そんな息子はもはや我が家系から消し去ります。そして、私も責任を取り団長の任を降りる事に・・・」



「そ、そんな父上・・・」


「お、親父・・・、何で親父が・・・」



「馬鹿者・・・、これが政を司る者の責任だよ・・・、国民の手本とならなければならないのが貴族の責任だ。我々は国民からの税によってて生かされている事を忘れているとはな。女に溺れしかも無実の者を貶めようとする・・・、もやは貴族の資格は無いと思え。お前にはそれが分からなかったとは嘆かわしいぞ。」


青髪の人、会話からするとこの国の宰相なんだろう、その人がとても悲しそうに話している。

大切に育てた息子が間違った道に進んでしまった後悔だろうな。

会場がシ~ンと静まり返ってしまった。


「愚息よ、そういう事だ。」


国王様が厳しい視線で王子を睨んだ。


「どうやら貴様は人の上に立つ器ではなかったようだ。全員仲良く平民として暮らすが良い。それが最後の情けだ。肩書が無ければお前達はどんな存在かよく分かるだろう。誰も助けてはくれん。真実の愛とやらでどこまで生きていけるかな?そして気付いても遅い・・・」


「そ、そんな・・・、父上・・・」


王子がガックリとしたが、まだ諦めきれないのかグッと背筋を伸ばし王様を睨んだ。


「しかし!私は光魔法の使い手ですよ!数百年に一度の!勇者になる事を約束された私を切り捨てるのですか?」


「うるさい!」


王様が掌を王子に向けると眩い光が溢れ出す。


ビッ!


真っ直ぐな光線が王子の足元の床に突き刺さった。


「お前だけが使える訳ではない。その魔法、儂から受け継いだだけだ。そんな儂でも勇者になれず、光魔法が使える事は口外しなかった。お前のようなちんけな光魔法で勇者になれると?冗談は寝てから言え。」


今度こそ心が折れたのか、王子がガックリと膝を折り床に蹲ってしまった。






「使えないわ・・・、まっ!元々殺すつもりだったしね。」






ザン!


誰かの呟きが聞こえた。直後に何か空気を切り裂いたような音が聞こえる。



ゴロン!


「「「!!!!!!!」」」


誰もがその光景に声を上げる事が出来なかった。


ドサッ!


首の無い王子がゆっくりとうつ伏せに倒れた。

コロコロと転がった頭部が横たわった体にぶつかりもたれかかった。


(そ、そんな・・・、何が・・・)



人が死んだ・・・



いや、殺された・・・



そんな衝撃的な光景に俺も体がガクガク震え何も言葉が出ない。

口はカラカラ、今にも気を失いそうだ。

俺は失念していた。

ここは間違い無く異世界だ!

さっきまで俺がいた現代日本とは違う!

この世界は命の価値がとても低いと、さっきまでの会話でもそう感じた。


ピンク女と目が合った!

ニヤッと笑っている!


(次は俺の番?あの女の邪魔をしたから、狙われるのには間違い無い!)


「こ、殺される・・・」


ガクっと膝の力が抜け、情けなく床にへたり込んでしまった。


ピンク女の人差し指からとても長い爪が伸びている。

そして、その爪には真っ赤な液体が付着していた。

あの鋭利な爪で王子の首を刎ねたのか?

さっきまでの純真そうな表情がガラッと変わり、とても妖艶な笑みで俺を見つめていた。


(あの顔が魔族であるサキュバスの本当の表情?)


血の付いた長い爪をペロッと舐め上げた。



「お嬢様!」



(ん?)


騎士のような服装をした女性が俺の前に立った。

栗色の髪に真っ黒な瞳、日本人風の美人な女性だった。


(誰だ?)


「このイザベラ!お嬢様の護衛騎士としてこの命捧げます!」


スラっと腰の剣を抜き、目の前にいるピンク女に剣の切っ先を向けた。


「あなたはどうやら魔族のようね。ここ数十年もこの国に現れた事が無かったはずだったけど、どうして今更現れたのでしょうか?やはり勇者を狙って?」


「それがどうした?四天王様より魔王様が復活される兆しが表れたと啓示があったのよ。魔王様の復活、それは勇者の血を捧げる事なの・・・」


そして、王子の死体に視線を向けた。


「勇者と思ったらとんだ偽物だったわ。期待外れもいいところよ。」


ゾッとするような冷たい視線で周りを見渡している。


「まぁ、ここにいる全員の血を捧げれば多少は魔王様復活に役立つかもね。この国の王族は2000年前の勇者の子孫って事だし、血がどんなに薄まっていても役に立つと思うわ。」


「そんな事を私が許すと思うかぁあああ!」


剣を両手で握り正眼に構えた。


「お嬢様!私がこの魔族を食い止めます!だからすぐにここから逃げ出して下さい!」


「くくく・・・」


ピンク女が笑っている。


「ダメよ、ここからは誰一人も逃がさない・・・」


次の瞬間、彼女の横に巨大な真っ赤な魔法陣のようなものが床の上に浮かび上がった。


ズズズ・・・


今度こそ信じられない光景が目の前で起こっている。


魔法陣の中から真っ黒な山羊が直立したような感じの生き物が出てきた。

しかも!どう見ても体長は3メートルを超えている!


(この姿、見た事がある・・・)


そうだ!この姿は悪魔の姿だ!本で見た事がある!

まさか・・・、悪魔を召喚したのか?


「ふふふ・・・」


ピンク女が蠱惑的な表情で微笑んでいる。


「バフォメッツ、誰一人逃がすな。全員の血と魂を魔王様へ献上するのだ。」


山羊頭が頷いたように見えた。


次の瞬間、山羊頭の悪魔の姿が消えた。


「ぐぎゃぁあああああああああああ!」


後ろの生徒達の中にいつの間にか移動し、1人の男子生徒の胸に腕を突き刺した。

腕がそのまま貫通し、血まみれの心臓を握っている。


信じられない光景が目の前に広がっていた。


ピコン!


『バフォメッツ

 サキュバス・クイーンによって召喚されたレッサーデーモン(下位悪魔)の一体。

 普通の人間では勝ち目がありません。確実に殺されますよ。

 すぐに逃げる事をお勧めします。』


「あ、悪魔って・・・、いくら何でもファンタジー過ぎる・・・」


(に、逃げなきゃ・・・)


だけど!足がすくんで動かない!


(ど、ど、どうしよう・・・)


ピンク女がゆっくりと俺に近づいて来る。


「お嬢様には手出しさせません!」


護衛騎士の女性がピンク女に斬りかかったが・・・



グサっ!



「ぐっ!」


ピンク女の爪が更に伸び護衛騎士の胸に突き刺さっていた。

その場所は心臓だ・・・

そして、背中からその爪が突き出していた。


「ごふっ!」


護衛騎士の女性の口から大量の血が噴き出し、ゆっくり崩れ落ちピクリとも動かなくなった。

胸と背中の傷口から真っ赤な血がドクドクと大量に溢れ、みるみるうちに床に大きな血だまりが出来ている。


(こんな簡単に人が死ぬって・・・)


女がペロッと舌舐めずりをしている。


「どんなに鍛錬しようがたかが人間、四天王直属の私の前では木偶人形と同じよ。私の計画を邪魔したあなた・・・、ゆっくりとなぶり殺してあげるわ。」


血まみれの長い爪を俺に向けた。



【・・・ベラ・・・】




【イザ・・・ベラ・・・】



(何だ!この声は?)


どこから聞こえているんだ?



【よくも・・・、よくも・・・】



(これは!俺の頭の中から聞こえる!誰の声なんだ!)



【よくもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!私の大切な人をぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!】



頭の中に大音響が響き、俺の意識が無くなった。


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