No.7 ROBOROIDオンライン
廊下で話すのもなんだからと研究塔の飼育課に誘い、二人を空いている席へつかせ飲み物を渡してやる。
「一人でできるって言ってるのにあのヒトたち、ず〜っとついてくる。子姐とおにいさんのおかげでやぁっと解放された!」
「シェイシェイちゃんってお偉いさんなんだ。あぁ、そう呼んじゃいけないんだっけ?」
「気にしなくていいヨ。わたしのことはそのまま"シェイシェイ"と呼んでもらえると嬉しいネ」
「わかった。……ところで、あのさ。初対面でこんなこと聞いていいのかわかんないんだけど」
何を聞く気かと彼の目線を追うと、彼女の足元を見ているようだった。つま先が力なく垂れた両足が目に映る。
「足、わりーの?」
「ウン。昔、手術で足の機能失ったノ」
「手術で……災難だったな」
「いいノ。もう過ぎたことネ」
歳不相応に落ち着いた彼女の笑顔を見ると、シェイシェイと出会ったばかりのときを思い出す。
2年前だっただろうか。
まるで人形のように表情が抜け落ちた顔が印象的な子供だった。今よりもずっと幼かったのに、泣きもぐずりもせず大人がやるような仕事を淡々とこなしていた。
彼女は親や兄弟のことは一切口にしない。外にいたときに、幼い少女では受けきれない痛みを経験したのかもしれないと考えると、今でも深くは聞けない。少なくとも今のように穏やかな笑顔を見せてくれるまでとても時間がかかった。
「それに今はそんなに困ってないノ。自分で足の代わりになるもの作ったからネ」
「自分で?」
車椅子の手すりの裏を弄ったかと思うと、どこに折りたたまれていたのか、タブレットやらロボットアームやらが飛び出してくる。
「お? おぉ……」
手すりの間に現れたタブレットのキーボードをカタカタと操作すると、アームの指先が机上のボールペンを優しく掴む。彼女ご自慢の、やたら数の多い仕掛け式車椅子だ。
「おーーー……え、マジ? その車椅子、自分で改造したってこと?」
「ソウよ? ニンゲンの足よりもよっぽど優秀! 今はノーマルモードだけど、パワーモードに切り替えれば急傾斜のある坂道も登ることデキルようになるヨ〜!」
「へえぇぇ、シンプルに技術がすげぇ……カッコイイ。なんかあれみたい。PC版のROBOROIDオンラインでこーゆうカスタムしてる人みたことある」
「えっ……おにいさんもしかしてオンラインやってる人?」
「やってるやってる。見る専だけど。え? まさかシェイシェイちゃんも??」
「シェイシェイも見る専ネ!」
「ええぇぇーーマジィ? いや実際造っちゃってるあたりシェイシェイちゃんのがやべーんだけど」
少し話をするうちにシェイシェイはロベルに懐いたらしい。私は『ロベルを』彼女に任せ、パソコンと睨めっこをしながら同僚たちに任せた本日分の進捗を確認する。




