No.6 王謝謝
「子姐」
少女が私たちの前で車椅子を止めると、白衣の集団もそれにならうように動きを止めた。その呼びかけに応えるように彼女の前で少ししゃがむ。
「シェイシェイ」
「あれ? 知り合い?」
「あなた、研究棟にこもっていたのでは?」
「休憩中ネ」
車椅子に乗った少女の名は王=謝謝。
彼女が動くたび、頭の左右に髪で結ったリボンが揺れる。片腕に抱いている淡い水色のぬいぐるみは、イルカが大好きだという彼女に私が縫ってプレゼントしたものだ。大泣きして喜んでいたのを今でも思い出す。
御歳12歳の彼女だが、こう見えて楽園内随一の科学者である。
「ねえ子姐? そのおにいさんは? 見ナイ顔ね」
ロベルもならうように彼女の前に出て少し身体を屈めた。彼にしてはまっすぐにシェイシェイの瞳を覗き込んでいる。
「ロベルって言うっす。よろしく、シェイシェイちゃん」
「きみね、黙ってみておれば、王教授に向かって無礼な口を……」
いけすかない男に何を思ったのか、白衣の男たちが顔を厳つくしてロベルの肩を掴もうとするのを、彼女が言葉で制す。
「あの、少し二人とお話したいので、みなさんも休憩に向かってください。シェイシェイ、一人で大丈夫です」
「しかし……」
「お願いします」
有無を言わさぬ圧に負けたのか、男たちはロベルへ咎めるような目線を向けながらこの場を後にする。対するロベルがへらへら笑いながら集団に手を振っているのを見ると、やはりこいつはいただけないと思うのだった。




